「AI面接を導入している企業は、実際にどれくらいあるのか」「導入した企業では何が変わったのか」。AI面接の仕組みや料金を調べた後、多くの採用担当者が次に知りたくなるのがこの問いです。
国内外の公式情報や公開資料、具体的な企業事例をもとに、AI面接の導入がどこまで進んでいるのかを整理します。
💡この記事の要点(TL;DR)
- 海外では、UnileverがAI面接ベンダーHireVueとゲーム型アセスメントpymetricsを組み合わせ、新卒採用プログラムに導入した事例が広く紹介されています
- 国内の対話型AI面接サービス「SHaiN」は2026年3月に導入企業1,000社を突破し、同年7月には1,100社に達しました。業界別では情報通信業が最多(19.3%)だが、受検者数ベースでは金融業・保険業が最多(24.9%)。ただし企業規模による導入率の差は大きく、大企業の19%が書類選考・面接の両方でAIを活用する一方、中堅・中小企業は5%未満です
- 導入目的や導入背景は、工数削減、評価のばらつき改善、大量の応募を扱う採用環境など、企業によって異なります
- 導入後の変化としては、デジタルホールディングスの約120時間の業務削減、Unileverの採用期間75%短縮、レバレジーズ調査での満足度86.7%が報告されています
- AI面接は導入すれば必ず成功するわけではありません。HireVueが表情分析機能を評価モデルから外した事例など、見直しの実例もあります
- 自社に参考にする事例は、業務効率化を重視するか、選考体験の一貫性を重視するかで変わります
海外ではどんな企業がAI面接を導入しているのか
海外では、複数の企業がAI面接の導入事例を公表しています。
Unileverの事例は、AI面接導入のケーススタディとして広く紹介されています。Unilever全体では年間約180万件の応募を受け、約3万人を採用していたと報じられています。その中でも新卒採用プログラム「Future Leaders Programme」で、AI面接ベンダーHireVueとゲーム型アセスメントのpymetricsを組み合わせた選考が導入されました。
ホテルチェーンのHiltonは、2014年からHireVueを導入しています。従来は100問を超える適性検査に1時間以上を要していましたが、これを単一の動画面接に置き換えました。この事例はHireVue公式の事例として公開されており、Reservations & Customer Care部門のSVPであるMike Gathright氏、採用責任者のAmber Weaver氏の実名コメントが添えられています。
英国の小売企業Holland & Barrettは、Sapia.aiのAIチャット面接を導入しています。Sapia.ai公式の事例として、早期離職率の改善や採用期間の短縮が報告されています。
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国内ではどれくらい普及しているのか——業界・企業別の傾向
国内の対話型AI面接サービス「SHaiN」は、導入企業数を段階的に公表しています。2019年10月の100社から、2025年10月に900社、2026年3月に1,000社を突破し、同年7月には1,100社に達しました。
時期 | 導入企業数 |
2019年10月 | 100社 |
2025年6月 | 800社 |
2025年10月 | 900社 |
2026年3月 | 1,000社 |
2026年7月 | 1,100社 |
出典: SHaiN公式プレスリリース各号
ただし、これはSHaiNという1サービスの導入企業数であり、日本企業全体におけるAI面接の導入率を示す数字ではありません。
一方、企業規模によって導入の進み方には大きな差があります。HR総研の25卒採用に関する調査によると、大企業では「書類選考と面接の両方」でAIを活用する企業が19%、「書類のみ」が6%、「面接のみ」が2%でした。一方、中堅・中小企業でAIを既に活用している割合はいずれも5%未満で、大企業が先行しています。
なお、このHR総研調査は「AI面接」に限らず「AI採用選考」全体(書類選考を含む)を対象にした数値である点に注意してください。
公式に導入が公表されている企業を抜粋で一部記載します。
企業 | サービス | 利用場面 |
イトーヨーカ堂 | PeopleX AI面接 | 新卒一次選考 |
GMOインターネットグループ | PeopleX AI面接 | インターン選考 |
デジタルホールディングス | SHaiN | 採用選考 |
吉野家 | SHaiN | 採用選考 |
福井銀行 | SHaiN | 採用選考 |
SHaiN公式サイトの導入企業事例ページには、上記以外にも北國フィナンシャルホールディングス、ウシオ電機、松屋フーズホールディングス、一蘭など、業界を問わず実名の導入企業が公開されています。
業界別の内訳を見ると、導入企業数では情報通信業が19.3%で最多、次いでサービス業13.3%、卸売・小売業12.3%と続きます。一方、延べ受検者数で見ると、金融業・保険業が24.9%で最多となり、情報通信業15.2%、宿泊業・飲食サービス業14.2%が続きます。導入企業数では情報通信業が最多ですが、延べ受検者数では金融業・保険業が最多です。
出典: SHaiN公式プレスリリース(2025年7月16日、800社突破時点)
イトーヨーカ堂は新卒一次選考をAI面接に置き換えています。GMOインターネットグループは、グループ全体で生成AI活用率97.8%を公表しており、インターンシップ選考にもPeopleX AI面接を導入しています。
企業は何のためにAI面接を導入しているのか
同じAI面接でも、企業によって導入目的は異なります。
デジタルホールディングスとイトーヨーカ堂は、工数削減や評価品質の改善を目的にAI面接を導入しています。デジタルホールディングスはSHaiNを導入し、工数削減と評価のばらつき改善を図りました。イトーヨーカ堂はPeopleX AI面接を新卒一次選考に導入し、面接官による質問品質のばらつきの解消を目的としています。
GMOインターネットグループでは、インターンシップ選考の効率化と評価の標準化を目的に、PeopleX AI面接を導入しました。
Unileverは、大量の応募を扱う採用環境のなかで、新卒採用プログラム「Future Leaders Programme」に、AI面接とゲーム型アセスメントを組み合わせた選考を導入しています。
目的が違えば、選ぶべきサービスや運用設計も変わってきます(自社に近いケースの参考の仕方は、最後の章で扱います)。
実際、導入して何が変わったのか
導入目的に対して、実際にどんな変化が報告されているかを見ていきます。
デジタルホールディングスは、AIを「人事チームの一員」として業務分担する形で導入し、繁忙期に約120時間の業務時間削減、経験豊富な担当者1名分の業務をAIが代替する効果があったと公表しています。
Unileverの事例では、LinkedIn Talent Solutionsの2018年レポートで、この選考改革によって採用期間を75%短縮したと紹介されています。最終選考まで進んだ候補者へのオファー率は63%から80%に、オファー承諾率は64%から82%に改善したと報告されています。これらの数値はビジネスケース教材や複数の学術論文で繰り返し引用されているものですが、Unilever公式サイトやHireVue公式サイトへ直接遡れる一次プレスリリースは確認できていません。同社の講演・インタビューをもとに複数の二次資料で引用されている数値として扱うのが適切です。
導入企業全体の傾向としては、レバレジーズ社が2026年2〜3月に人事担当者1,625名を対象に実施した調査で、AI面接導入企業の満足度は86.7%でした。導入効果として最も多く挙げられたのは「埋もれた才能の発掘」(62.4%)で、次いで「選考時間・工数の削減」(52.8%)、「面接官の相性に左右されない公平な評価」(37.6%)と続きます。
うまくいかなかった例や注意点はあるのか
AI面接の事例としては、HireVueが評価モデルから顔の表情分析(visual analysis)を外したことが挙げられます。同社によると、この方針転換は2020年に行われ、2021年1月に公表されました。理由として同社が明確に挙げているのは、自然言語処理(NLP)技術の進歩によって言語分析だけで十分な予測力が得られるようになり、視覚データを加えても予測力がほとんど上がらなかったことです。表情分析の妥当性や透明性について外部から懸念が指摘されていたことも事実ですが、それとHireVue自身が説明する社内検証の結果は分けて捉える必要があります。
日本国内において、企業名を挙げてAI面接から撤退した一次報道は、今回確認した国内の公開情報では確認できませんでした。
自社が導入するなら、何を参考にすればいいのか
ここまでの事例を踏まえると、自社でどの事例を参考にすべきかは、AI面接によってどの課題を解決したいかによって変わります。
デジタルホールディングスやイトーヨーカ堂の事例では、工数削減や評価のばらつき改善が導入目的として挙げられています。自社でAI面接を検討する際も、まずは面接工数、評価のばらつき、選考人数など、解決したい課題を明確にすることが重要です。
Unileverは、AI面接だけを追加するのではなく、新卒採用プログラムの選考プロセス全体を組み直しています。この事例からは、AI面接をどの工程に組み込むかまで設計する必要があることがわかります。
HireVueは、社内検証を踏まえて表情分析を評価モデルから外しています。導入後も、どの評価項目を使うかを固定せず検証することが重要です。自社で導入する際も、組み込む工程と評価項目を継続的に検証する前提で設計することが参考になります。
今回の事例から考えると、一次面接の件数が多く工数負荷が大きい企業や、面接官による質問・評価のばらつきを抑えたい企業は、AI面接を検討しやすいと考えられます。新卒やインターンなど、一定数の候補者を共通の基準で選考したい場合にも候補になります。一方、面接そのものを候補者への魅力付けの場として重視する場合は、すべてをAIへ置き換えるのではなく、一次面接だけに使うなど導入範囲を検討する必要があります。
AI面接の仕組みや形式ごとの向き・不向き、費用の比較については、別記事で詳しく整理しています。
まとめ
国内では、SHaiN・PeopleXといった対話型AI面接サービスの導入企業が着実に増えており、業界を問わず実名での事例公開も進んでいます。一方で、導入の進み方には企業規模による大きな差があり、大企業の19%が書類選考・面接の両方でAIを活用しているのに対し、中堅・中小企業は5%未満というギャップが存在します。
海外のUnilever事例が示すように、AI面接には採用期間の短縮や選考プロセスの効率化という効果が期待されていますが、HireVueの事例が示すように、社内検証で追加効果が小さいと判断された評価項目が見直されることもあります。導入企業の事例は、成功の型だけでなく、見直しの経緯も含めて参照することが重要です。
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著者について
宮前 貴史(株式会社プロリク )
大学卒業後、個人事業主として約5年半にわたり、BtoC・BtoB領域で営業から企画・運営までを一気通貫で経験。その後、ベンチャー企業にて採用担当として制度設計に従事し、さらにRPOサービスの立ち上げ責任者として、スカウト業務の仕組み化から実践までを牽引。プロリク参画後は、その豊富な実務経験を活かし、ITエンジニアのスカウト業務を中心に複数クライアントの採用成功を支援している
よくある質問
Q. AI面接を導入している企業はどれくらいありますか?
国内の対話型AI面接サービス「SHaiN」は2026年3月時点で導入企業1,000社を突破しています。業界別では情報通信業が最多(19.3%)ですが、受検者数ベースでは金融業・保険業が最多(24.9%)です。
Q. 具体的にどんな企業がAI面接を導入していますか?
SHaiNの事例ではデジタルホールディングス、吉野家、福井銀行などが公開されています。PeopleXの事例ではイトーヨーカ堂、GMOインターネットグループなどが公開されています。海外ではUnileverがHireVueを導入した事例が広く紹介されています。
Q. 大企業と中小企業で導入状況に差はありますか?
大きな差があります。HR総研の25卒採用調査では、大企業の19%が「書類選考と面接の両方」でAIを活用している一方、中堅・中小企業でAIを既に活用している割合はいずれも5%未満にとどまっています。
Q. AI面接の導入で失敗した企業事例はありますか?
AI採用ツール全般では、Amazonの履歴書選考AIでのバイアス事例が有名です(これは「AI面接」ではなく履歴書選考ツールの事例です)。AI面接固有の事例としては、HireVueが2020年に顔の表情分析機能を評価モデルから外し、2021年1月にその方針を公表しています(理由はNLP技術の進歩による言語分析の予測力向上で、視覚データの追加効果が薄かったため)。日本国内での企業名を挙げた撤退事例は、今回確認した公開情報では確認できませんでした。
Q. AI面接導入企業の満足度はどうですか?
レバレジーズ社の調査では、導入企業の満足度は86.7%でした。導入効果としては「埋もれた才能の発掘」「選考時間・工数の削減」「面接官の相性に左右されない公平な評価」が上位に挙げられています。
参考文献、資料
- SHaiN公式「導入企業800社突破」(業界別内訳、2025年7月16日): https://shain-ai.jp/post-news/800companies/
- SHaiN公式「導入企業900社突破」(2025年10月29日): https://shain-ai.jp/post-news/900companies/
- SHaiN公式「日本HRチャレンジ大賞 奨励賞受賞」(導入企業1,000社超、2026年6月19日): https://shain-ai.jp/post-news/hr_challenge/
- SHaiN公式 導入事例ページ: https://shain-ai.jp/case-study/
- SHaiN公式「デジタルホールディングス導入事例」(2024年9月10日): https://shain-ai.jp/post-news/digital-holdings/
- JILPT(労働政策研究・研修機構)「AI面接研究レポート」ビジネス・レーバー・トレンド2026年1・2月号: https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2026/01_02/shuzai_01.html
- PeopleX公式「イトーヨーカ堂導入事例」(2025年11月7日): https://peoplex.jp/news/20251107/
- PeopleX公式プレスリリース「GMOインターネットグループ導入」(2026年5月18日): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000251.000139786.html
- HR総研「第155回【25卒採用動向】インターンシップを採用に活用する企業が急増。実施形式やAI活用の傾向とは」: https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=3842&page=3
- レバレジーズ「AI面接に関する調査」PR TIMES: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000881.000010591.000010591
- MIT Technology Review「Amazon ditched AI recruitment software because it was biased against women」(2018年10月10日): https://www.technologyreview.com/2018/10/10/139858/amazon-ditched-ai-recruitment-software-because-it-was-biased-against-women/
- SHRM「HireVue Discontinues Facial Analysis Screening」(2021年): https://www.shrm.org/topics-tools/news/talent-acquisition/hirevue-discontinues-facial-analysis-screening
- bestpractice.ai「Unilever AI-based recruitment case study」(HireVue事例の紹介記事): https://www.bestpractice.ai/ai-case-study-best-practice/unilever_saved_over_50,000_hours_in_candidate_interview_time_and_delivered_over_%C2%A31m_annual_savings_and_improved_candidate_diversity_with_machine_analysis_of_video-based_interviewing
- LinkedIn Talent Solutions「2018年レポート」(Unileverの採用期間75%短縮に関する紹介。直接URLは未確認、複数の二次資料で引用されている数値)