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なぜ、あなたの会社のAI活用は「ツール思考」で終わるのか?──プロリクが提唱する、人とAIの新しい関係性『AHR』

なぜ、あなたの会社のAI活用は「ツール思考」で終わるのか?──プロリクが提唱する、人とAIの新しい関係性『AHR』

公開日
2026/01/01
カテゴリ
AHR
タグ
AI
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生成AIブームから2年。多くの企業が「とりあえず導入」のフェーズを終え、いま直面しているのは「期待したほどの成果が出ない」という厳しい現実だ。この停滞感の正体は何なのか。2025年6月、株式会社プロリクは、この根深い問いに対する一つの答えとして、新時代の人事戦略『AHR(AI and Human Resources)』を提唱し始めた。同社代表取締役の橋崎良哉は、「多くの企業が陥る失敗の原因は、AIを“ツール”として部分最適で捉える、従来の考え方そのものにある」と指摘する。企業の競争力を左右するAI活用の成否は、どこで分かれるのか。そして、人とAIの働き方をリデザインする新視点『AHR』とは、具体的にどのような考え方なのか。データに基づいた採用支援で企業の成長に伴走してきた同氏に、詳しく話を聞いた。

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AHRとは?

AHR(AI and Human Resources)とは、企業の経営課題に向き合う組織能力を充足させるため、AI資源と人的資源を経営資源として設計・運用・再配分する、株式会社プロリクが2025年6月に提唱した実践フレームです。従来のHRが人的資源のみを扱ったのに対し、AHRはAIを人と並ぶ「経営のコア資源」と捉え、組織能力獲得を目指す考え方です。

📄 詳細記事: 【決定版】AHRとは?-人とAIの働き方をリデザインする

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橋崎良哉

学部在学中にWebサイト制作事業で起業。その後取締役として当時経営不振だった家業の鉄鋼加工業に携わり、業績回復および約2倍の売上規模までの成長を牽引。グローバルのデジタルマーケティング支援を行うベンチャー企業にてデジタルマーケティング企画、アクセスログデータやアンケートデータの多変量解析に携わった後、2012年よりAIスタートアップのエッジテクノロジー株式会社にて、取締役COOとして社員0名から70名までの事業成長を実現し、2018年から現職。前職でAIビジネス活用に6年、現職で人と組織に7年関わった経験を活かしAHRを提唱。人とAIの両面で組織を支援している。

ブームの後の停滞感。なぜ日本のAI活用は「成果」に繋がらないのか。

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——多くの日本企業でAI導入が進んでいますが、その現状をどのように見ていますか?

2023年頃から生成AIの導入は急速に進みましたが、現状は“導入”に留まり、具体的な成果を伴う“普及”には至っていないと感じています。この感覚は、PwC Japanグループが2025年春に実施した5カ国比較調査の結果によっても裏付けられています。

調査によれば、生成AIの活用効果が『期待を上回る』と回答した日本企業の割合は、アメリカやイギリスの約4分の1、ドイツや中国の半分に留まるという結果でした。

つまり、多くの企業で『ChatGPTを導入したものの、現場では使い方が分からない』『便利だが業務の中心にはならない』といった声が聞かれ、具体的な成果に結びついていないのが実情なのです。

——なぜ、多くの企業がその段階で止まってしまうのでしょうか。

その根本的な原因は、AIとの向き合い方にあると考えています。これは個人も企業も同様で、多くの方がAIを『Google検索の高度なもの』という程度でAIを捉えてしまっているように感じます。つまり、答えが欲しい人間が、自分の頭で考えた範囲の内容を投げかけ、指示・依頼・質問し、AIからの回答を待つ、という一方通行の関係です。この使い方では、アウトプットが人間の発想の範囲を超えることはありませんし、価値が非常に狭い範囲に限定されてしまいます。その指示自体が、指示を出す人間自身の思考の“壁”や専門領域の“偏り”から逃れられないからです。

例えば、採用の専門家が作るスカウト文章作成の指示は、採用の観点では完璧かもしれません。しかし、そこにはマーケティングや事業戦略の視点が抜け落ちているかもしれない。本来採用は経営やマーケティングの観点も含んだ総合格闘技のような性質がありますが、そういった観点をすべて網羅している人は非常に少ないのが実情です。事業戦略やマーケティングの観点が入らないスカウト文章は採用のHOWに依存した非常に表面的な文章になりがちです。しかし、事業戦略やマーケティングを知らない採用担当はそのことに気づけません。

この例に示すように、ビジネスはどうしても人によってスキル差・経験差があります。思考の習熟度の差があります。その差自体は人間が経験を積み成長していく過程であるため、良い悪いを議論しているわけではありませんが、実際として存在するその差を踏まえると、人間が思考する指示を起点にした場合のAIのアウトプットは、どうしても指示者の得意領域に最適化されていきます。MECEでなく、必要十分でもなく、当人の範囲を超えることはないわけです。

本来、AIは単なる検索エンジン的なものではなく、思考の『パートナー』として活用すべきものです。先の例のように人間は知識差が大きいという性質を持ちますが、AIはそうではありません。様々な分野でミドル~シニアレベルの知識を保有し、広い範囲で思考することが可能です。今は『AIに何を指示すべきか』『AIにどのような質問したら良いか』という観点をが気にされがちですが、これまで述べてきたような点を踏まえると、むしろよりAIに“依存”し、『自分は何を考えるべきか』という思考の起点から相談するような付き合い方が適切だと感じています。『どうすればいいか分からないから、1から全て教えてほしい』というスタンスを持つことによって、自分の思考の壁、専門性を超えた回答が得られるようになります。フォーカスすべきは、『何を指示すべきか』ではなく『どのようにして良い回答を引き出すか』です。

しかし、現状はAIに『指示する』というスタンスから抜け出せていません。そのことを最も象徴しているのが、AI研修ビジネスの活況です。考えてみれば、これは非常に示唆に富んだ現象かもしれません。なぜなら、本来『AIの効果的な使い方』を学ぶ最も効率的な方法は、AI自身に聞くことだからです。『今私は◯◯という業務に取り組んでいて◯◯という課題を抱えている。これを解決するための効果的なプロンプトの書き方を教えて。最新の研究を根拠に網羅的に今使えるベストプラクティスを洗い出して』とAIにディープリサーチを依頼すれば、今AI研修会社が教えている多くの内容をAIはレポートしてくれるはずです。にもかかわらず、人間が主催するセミナーに参加してその方法を学ぼうとする。その行為自体が、AIを対話のできる『パートナー』としてではなく、正解は人間が知っていて、その入力方法を実行するための『ツール』としてAIを捉えていることを示唆するような現象であるように私には見えます。

つまり、AIの使い方を学ぶためにAIを使わない、という矛盾に多くの人が気づいていない。それが、日本企業におけるAI活用の現在地なのかもしれません。

「指示を出す側」の限界。なぜ“ツール思考”が企業の成長を止めるのか。

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——海外の先進企業と日本の企業とでは、AIの活用に差があるという話も聞きます。

はい、その差はデータにも明確に表れています。PwC Japanグループが2025年春に実施した5カ国比較調査では、生成AIの活用効果が『期待を上回る』企業と『期待未満』に終わる企業とで、取り組みに決定的な違いがあることが示されています。

特に注目すべきは、AI活用の『目的意識』や『推進体制』です。例えば、AIを『業界構造改革のチャンス』と捉える割合は、成功企業(期待を上回る層)が55%に達するのに対し、非成功企業(期待未満の層)ではわずか15%。また、推進体制が『社長直轄』である割合も、成功企業が61%であるのに対し、非成功企業は8%に留まります。

このデータが示すのは、成功企業がAI活用をトップダウンの経営戦略として位置づけ、事業のあり方を根本から変えようとしているのに対し、非成功企業ではその意識が希薄であるという事実です。

そして、この傾向を最も象徴しているのが、日本の非成功企業に見られる特徴的なデータです。彼らは、前述のような戦略的な項目への意識が低い一方で、『AIエージェント導入』という具体的なツール導入への回答は26%と、他の項目(例:業務の完全な置き換え1%、業務組み込み14%)に比べて相対的に高くなっています。これはまさに、AIを事業変革のための“戦略”としてではなく、あくまで既存業務を効率化するための便利な“ツール”として捉えている、日本企業に根強い『ツール思考』の証左と言えるでしょう。

——まさに「ツール思考」が成果を妨げているわけですね。

その通りです。また別の調査でも参考になるものがあります。マッキンゼー・アンド・カンパニーが2025年5月に発表した「The state of AI」というレポートで、AIの成果(EBIT=利益への影響)に最も相関が高い要素は何かを分析したものです。

そこで最大の効果を持つと判明したのが「ワークフローの根本的な再設計」でした。

——ワークフローの再設計、ですか。

はい。つまり、「人間が築いてきた人間のための既存の業務プロセスは変えずに、便利なAIツールを使ってそのプロセスを効率化する」という部分最適(=ツール思考)の考え方ではなく、「AIが共に働くことを前提に、業務プロセス自体をAIにあわせて再定義する」という全体最適のアプローチです。しかし、マッキンゼーの調査によれば、この最も重要な「ワークフローの再設計」を実施している組織は21%であるということも報告されています。ツールとしてAIを用いる企業の多さ、ワークフローを再設計するに至るまでAIへの投資を意思決定しきれない現状が見て取れる結果です。

2つの調査から言えることは、成功企業はAIを事業プロセスを根幹から変えるための“戦略的資源”として捉えている。この思想の差が、結果としてAIによる成果に大きな違いを生んでいると考えています。

——その「差」を放置し続けることには、どのようなリスクがあるのでしょうか。

端的に言えば、企業競争力を失うリスクです。AIによる生産性向上は、まさに『複利』のように機能します。一つの改善が次の改善を生み、その効果が掛け算式に積み上がっていくのです。

例えば、採用業務一つをとっても、これまで数日かかっていた採用広報記事のドラフトが数分で完成し、候補者一人ひとりに最適化されたスカウト文章が生成され、膨大な書類選考もAIが一瞬で完了させる。このように、一つ一つの業務が数倍から数十倍のスピードで処理されていきます。

そして、この変化は人事領域に留まりません。先進的な日本のスタートアップの開発現場では、複数の開発AIエージェントが並列でコーディングやテストを回し開発生産性が大きく向上している、という世界が当たり前になっています。

一度得られた生産性は後戻りすることはありません。こうした日々の業務効率の大きな差があらゆる業務領域で積み重ねられた結果、企業の競争力は決して埋められないほどの大きな差を生むことになると思います。逆に言うと、AIを使いこなせない企業の淘汰が進んでいくと考えています。

“人的資源”の定義を書き換える。経営課題から逆算する『AHR』の思考法。

——AIを資源として捉える思想を言語化したのが『AHR』という概念なのですね。私たちが知る従来のHR(人事)とは、何がどう違うのでしょうか。

まずご理解いただきたいのは、企業には中長期の経営課題があり、その達成に必要な組織能力を定義し、その能力を充足させるための設計・実行に責任を負う、というミッションは従来のHRと何ら変わりません。異なるのは、そのための手段、つまり『資源』の捉え方です。

少し具体例を挙げてご説明します。例えば、ある企業が『3年後に北米市場へ進出する』という経営目標を立てたとします。この目標達成に必要な組織能力の一つは、『高度なビジネス英語での交渉能力』となります。 この組織能力を獲得するため、従来のHRは『英語が堪能な人材を採用する』『社員を海外研修に派遣する』といった、資源を『人』に限定した施策を立案していました。

それに対してAHR(AI and Human Resources)は、同じ状況でも思考の起点が異なります。『その英語能力は、まずAIでどこまで代替・補強できるか?』から考え始めるのです。 『リアルタイム翻訳AIを使えば、交渉は既存の日本人担当者でも可能ではないか?』『そういえば最近はPCやスマートフォン上で直接動作する、高性能な小型言語モデル(SLM)が登場しているな。これならクラウドを介さず通信の遅延なくリアルタイムで翻訳できるな』『資料作成も、8割は生成AIに任せらるのではないか?』と、まずAIという選択肢をテーブルに載せる。AIで実現できる範囲が見えてくると、『英語が堪能な人材を採用する』『社員を海外研修に派遣する』といった選択肢の重要度が低くなり、『AIの致命的な英語の誤りに気づけるレベルの人材で良いのでは。発音は不要なので喋れなくても問題ないだろう。』といった形で要件も調整がされていくことになります。人材レベルを下げることでその分コストも下がるでしょう。その上で、AIでは補いきれない“人”ならではの価値(例えば、現地の文化を踏まえた関係構築)についても考慮しつつ、必要な人材だけを教育・配置・採用することを考えていくことになります。

このように、AHRは人とAIという資源を人的資源と対等に思考し、組織の計画に織り込んでい“AIファースト”で最適なリソース配分を考える。この思想を取り入れることで、初めて、従来の発想ではあり得なかったコスト構造の変革や、事業計画そのものの見直しが可能になるのです。

壮大な理想を追う前に、まず「土台」を築く。AHR実現への現実的なロードマップ。

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——AHRの重要性は理解できましたが、自社で実践するとなると、何から手をつければ良いのでしょうか。

前段で「プロセスを再設計せよ」といった上段の大きな話をしてはいるものの、実行の段ではAHRは壮大な理想から始めるべきではない、ということをまずはお伝えしたいです。特にAIに慣れていない人・企業が、理想を追い求めて全社の業務プロセスを突然変えようと動くと、おそらくほぼ確実に失敗します。たとえば、「営業シーンで、顧客に個別最適化された最高の1to1の提案書を完全自動で作る。それによって営業を自動化する」というものに初手から取り組むようなことが、まさに典型的な失敗パターンであり、最も避けるべきものです。

AIに慣れていない経営者や社員が、外部のコンサルだけに任せて突然そのような高品質のものを作れるほどAIの技術、精度はまだ成熟していません。AIで出来ること出来ないこと、また精度を上げるためにどの程度の工程と工数があるのかを明示的に理解し、理想ではなく、現実的に地に足つけて歩みを進められる土台を作ることがまず第一歩であると思います。

では何から始めるべきか。私は、まず『旗振り役』となるヒーローを見つけることだと考えています。社内には必ず、新しい技術や考え方に対してアンテナが高い人物がいるはずです。その方に、最初の推進を任せるイメージです。これは企業によってはCEOであるケースもあるでしょうし、AIネイティブな若手社員になるかもしれません。

そして、そのヒーローに任せるべき最初のミッションが、「クイックウィン」と呼ばれるような『小さく、しかし誰もが目に見える成功体験』を作ることです。ここで重要なのは、先ほどお話しした“理想”を追わないこと。投資が少なく、納期が短く、効果が分かりやすく、かつ再現性の高いプロジェクトを選ぶべきです。

例えば、多くの企業で課題となっている営業部門のナレッジ共有。AIを使って全営業担当者の商談音声を文字起こしし、ヒアリングの漏れがないか、どういう悩みを抱えていそうか、どういう提案方向性があるか、を示唆だしさせるようなもの。あるいは、採用部門で、膨大な数のスカウトメール文面を候補者一人ひとりに最適化させる。こうした施策は、まさに最初のプロジェクトに最適です。

この小さな成功体験が、『AIはこれくらいの精度で、ここまで自動化できるのか』という共通認識と、『うちの会社でもできるじゃないか』という自信を組織内に醸成します。その成功事例をテコにして、少しずつ適用範囲を広げていく。

一定程度社内に知見がたまり、理解が得られるようになってから、本格的に理想を掲げ、組織能力獲得のために業務プロセスを再設計し自動化に向けて推進していく、こういった地道なプロセスがAHRとしての動き方になると思います。

「部門の壁」が溶け、人の役割が変わる。AHRが拓く、未来の組織像。

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——AHRのアプローチが組織に浸透すると、企業経営はどのように変わっていくのでしょうか。

まず、コスト構造が根本から変わります。 これまで100%人間が担っていた組織能力の一部がAIに置き換わることで、同じ事業価値をより少ない人的資本で生み出せるようになる。アメリカでは社員1人で1000億円の価値を生み出す極めて生産性の高い組織が出てくる、とよく言われていますが、価値とコストの発想としてはそのような発想になると思います。

そして、その変化は組織のあり方そのものに及びます。そもそも、なぜ『人事部』『営業部』といった部門が存在するのか。本質的に考えると、それは人間が処理すべき業務領域が広すぎるため、専門特化し役割分担することで、その領域の業務精度を上げていかざるを得なかったからです。しかし、AIが専門業務の多くを担うようになれば、その前提が崩れる。部門という“壁”が溶けて、よりプロジェクトベースで流動的な組織形態に変わっていくと考えています。

そうなると、人間の役割も大きく変わります。 AIには出来ない、よりフィジカルな業務が人間には残りやすいのだと理解しています。しかし、どのような業務が人間に残るのか?AIがどこまでできるようになるか?については今回の本論ではありません。もちろん私としての考えはあるものの、私はそのような予測ができるようなAIエンジニアリングの専門家でもありません。一方、この点は非常に多くの先進的な研究者が議論している論点です。ぜひこれまでの内容を踏まえて、皆様AIに依存して「AIと人間の役割分担はどうあるべきか。どこから考えていくべきか」を相談してみてください笑

——最後に、AIという大きな変化の中で未来を模索している経営者、人事の皆様へメッセージをお願いします。

今提唱しているAHRという考え方は、いずれAI自身が担うようになる“過渡期”のものかもしれません。しかし、今はまだ、人間がその変化を主導し、組織のあり方を設計しなければならない重要な時期です。大切なのは、目の前のツール導入に一喜一憂するのではなく、自社の『人とAIのリソース配分はどうあるべきか』という、より本質的な問いに向き合うこと。その第一歩として、社内の小さな成功体験を一つ、具体的に計画し、実行してみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、企業の姿を大きく変えるきっかけになると思います。