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生成AIは組織文化をどう変えるか?

生成AIは組織文化をどう変えるか?

公開日
2026/01/12
カテゴリ
HR
タグ
AI
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私たちプロリクは、AHR(AI and Human Resources)という概念を提唱し、「AIと人をどう組み合わせるか」を企業と一緒に考える仕事をしています。

その中で、

「以前より、部下が上司に相談しなくなった」 「良いのか悪いのか分からないが、何かが変わっている」

といったような声を最近見聞きするようになりました。

効率化や生産性向上の話はよく聞きますが、「組織の雰囲気」や「社員の働き方」が変わる、という話は、まだあまり語られていません。

そこで私たちは、海外の研究機関や調査会社が発表している最新のデータを集めて、分析してみることにしました。そこで見えてきたものは、AIが「ツール」以上の存在として、組織の「価値観」「行動」「信頼」という、文化の根幹を変えている、ということでした。この記事では、それらの調査から見えてきた「AIが組織文化に与える影響」を、できるだけ具体的に紹介していきます。

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AHRとは?

AHR(AI and Human Resources)とは、企業の経営課題に向き合う組織能力を充足させるため、AI資源と人的資源を経営資源として設計・運用・再配分する、株式会社プロリクが2025年6月に提唱した実践フレームです。従来のHRが人的資源のみを扱ったのに対し、AHRはAIを人と並ぶ「経営のコア資源」と捉え、組織能力獲得を目指す考え方です。

📄 詳細記事: 【決定版】AHRとは?-人とAIの働き方をリデザインする

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この記事の要点(TL;DR)

  • AIの影響: AIは「ツール」に留まらず、組織の「価値観」「行動」「信頼」という文化の根幹を変革する。
  • 価値観の変化: 「勘と経験」から「データとエビデンス」へ。「効率性」と「創造性」の同時追求が求められ、「失敗」は「学習の過程」へと再定義される。
  • 行動の変化: 「まずAIに相談する」が日常化。一方、「暗黙知の共有」が減少するリスクも持つ。
  • 信頼の再定義: AIへの無意識の依存と雇用不安が、「心理的安全性」と「倫理的責任」の再構築を組織に要求する。
  • AHRの役割: これらの変化を戦略的に管理し、望ましい文化を設計することがAHR(人事)の新しいミッションとなる。

データ駆動の文化が、業績を2倍にする

最初に紹介するのは、Deloitteが2021年に発表した調査です。Deloitteは世界最大級のコンサルティングファームで、毎年AI導入に関する大規模な調査を実施しています。この"State of AI in the Enterprise"という調査は、その第4版にあたり、グローバル企業2,620社の経営層とIT責任者を対象に、オンラインアンケートを実施したものです。2021年のため生成AIによる影響ということではありませんが、データやAIが与える影響という点で興味深いものであったため取り上げています。

この調査で最も注目すべき発見は、データ駆動の文化が強い企業は、業績目標を超える確率が約2倍高い、というものでした。ここで言う「データ駆動の文化」とは、意思決定の際に「勘や経験」よりも「データとエビデンス」を重視する組織風土のことを指しています。全社的にデータ分析のスキルを持つ人材が多く、データに基づく提案が役職に関係なく評価される、そういった企業です。

つまり、「ベテランの勘」よりも「AIが出したデータ」を信じる組織の方が、実際に成果を出している。これは、多くの日本企業にとって、大きな変化ではないでしょうか。「長年の経験」が持つ価値が相対的に下がりつつある一方で、「データを正しく読み解く力」が求められている。AIの導入は、こうした価値観の転換を、確実に後押ししています。

AI活用が成功することで文化に肯定的な影響を与える

次に紹介するのは、従業員エンゲージメント調査を専門とするPerceptyx社が2024年後半から2025年初頭にかけて実施した調査です。この調査は、2,800人以上の従業員を対象に、生成AIの導入が職場文化にどのような影響を与えているかを分析したものです。

この調査でAI導入の成否を分ける要因は、「リーダーシップ」であるとしており、明確なAI戦略を持ちリーダーが率先して推進している組織では、従業員の79%が「AIは職場文化に肯定的な影響を与えた」と回答ています。一方、明確な戦略がなく、現場任せになっている組織では、その割合はわずか10%に留まっていることが報告されています。

なお、ここで言う「リーダーシップ」とは、経営層自らが明確なビジョンを語ること、自らが実践者となること、そして、導入後も放置するのではなく、継続的に従業員と対話する場を設けることなどが挙げられます。また、「戦略を持つ」とは、どの業務プロセスから着手するか、何をもって成功とするか(工数削減率、精度向上率など)、人間とAIの役割分担をどう設計するか、といった具体性を持つことを意味します。

調査では、肯定的な影響の具体的内容までは明言されていませんが、「効率性の高いAI活用」を実現している組織では、従業員のエンゲージメントや心理的安全性にも好影響が見られたことが示唆されています。

AIによって変わる人間関係と文化の作り方

2025年6月、米国の求人情報サイトResume Nowが、968名の米国労働者を対象に実施した調査をご紹介します。

AIと上司の関連性について調査がされたものですが、97%の従業員が、「上司の代わりにAIに職場のアドバイスを求めた」経験があり、そのうち63%が定期的にAIに相談していると答えています。さらに、70%が「ChatGPTは上司よりも自分の仕事上の課題をよく理解している」と感じており、また72%が「ChatGPTの方が上司より良いアドバイスをくれる」と回答しています。

この調査は、上司と部下の関係性が変わるだろうことが示唆されるものだと感じています。上司の相談のすべてがAIに変わることはないでしょうし、AIの支援を受けつつ人間も含めたハイブリッドなマネジメントがされていくものだと思われるものの、これまでの人間関係の作り方が変わるのだと感じさせるものでした。また、心理的安全性を「議論や指摘を安全にできる場づくり」と定義するなら、その「場」がAIとの対話に一部移行しているとも言えます。これまでの「対人間」を前提とした組織として、どのような組織文化を形成すべきか?という問いの重さや捉え方が変わっていくことを感じさせます。

日本でも類似することが起きている──部下の9割が「AIの方が本音を言いやすい」

Resume Nowの例は米国の話ですが、日本ではどうでしょうか?日本でも類する調査結果が出ているものがあるのでご紹介します。

2025年9月16日、株式会社mentoが発表した「AI時代の上司と部下の本音調査」では、100名以上の企業で働く社員832名(一般社員416名・中間管理職416名)を対象に、AIが職場のコミュニケーションにどのような影響を与えているかを調査しました。

部下側とした回答した人のうち82.2%が1on1で「本音を上司に話せていない」と感じており、その影響として「転職を考えた」「キャリアに不安を持った」と回答しています。そして、AIを利用している部下の85.0%が「AIに本音を言いやすい」と回答し、80.2%が「AIからのフィードバックの方が受け止めやすい」と感じていることが分かりました。なお、部下の言う本音とは、「業務の不安や弱音」「仕事やチームへの改善提案」です。

また、部下の72.8%が「上司の役割はAIに完全に代替されるのではなく、上司とAIが役割を分担し合う」と考えており、部下の本音の受け皿がAIに一部移行し、文化の作り方や、マネジメントの在り方が変容していくことが示唆されます。

AIは「思考のパートナー」になりつつある──学習文化への影響

次に、「学ぶ文化」とAIとの関係について見ていきたいと思います。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズが2025年2月17日に発表した「生成AIと学びの環境に関する調査」(従業員100名以上の企業に勤務する20〜59歳の正社員722名が対象)では、AIが従業員の「学習方法」そのものを変えつつあることが明らかになりました。

この調査で最も注目すべきは、「継続的に学ぶ姿勢」を持つ従業員ほど、AIから得られる学習効果を強く実感している、という点です。

調査では、生成AI利用者を「継続的学び群」と「非継続的学び群」に分けて分析しています。「継続的学び群」とは、仕事またはプライベートで継続的に自分の知識やスキルを向上させるために取り組んでいる人を指します。

結果、すべての項目で「継続的学び群」の方が、AIの学びにおける効果を強く実感していました。特に「継続的学び群」では、以下のような効果が確認されています。

「欲しい答えに素早くたどり着けるようになった」(69.8%)、「気軽に学べるようになった」(67.4%)、「新しい知識や視点を知ることができるようになった」(66.3%)、「自分が必要とするタイミングで学べるようになった」(64.6%)。さらに、「学んだ内容を行動に生かせるようになった」(64.6%)、「学ぶ内容の理解度が上がった」(60.8%)といった回答も6割を超えています。AIは単に「学びやすさ」を助けるだけでなく、学びの成果そのものにも良い影響を与える可能性が示唆されています。

一方で、この結果は重要な示唆を含んでいます。継続的学び群のこれらの値は非継続的学び群と比較して突出して高い項目が多く、1.5倍程度の差がある項目が多く見られました。つまり、AIは「学ぶ人」をさらに加速させる一方で、「学ばない人」との差を広げる可能性があるということです。

従来、「学び続ける組織文化」は、採用活動においても非常に魅力的な訴求ポイントでした。しかし、AI時代においては、その文化を支える前提条件が変わりつつあることが示唆されます。AI利用のオープン性、透明性、AI活用のスキル格差、失敗を許容する文化といった要素が、今後「学ぶ組織、学ぶ文化」を語る際に不可欠になるかもしれません。

まとめ

今回の調査を通し、生成AIは組織の行動様式や価値観を変え、結果として組織文化に様々な観点で影響を与えるであろうことが示唆されました。AIはもはや単なるツールではなく、ともに働く同僚であり、相互に影響を与え合う存在として認識し、それを前提とした上で企業は文化や制度を考えていく必要があるのではないでしょうか。

もし貴社が人とAIにお悩みのことがあれば、まずはお気軽にお声がけください。

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株式会社プロリクは「人とAIの働き方をリデザインする」AHRカンパニーです。独自開発AIによるエンジニア採用支援で採用を成功に導き、生成AIソリューションで企業の業務自動化までを一気通貫で支援し、人とAIの協働を支援します。

www.prorec.jp

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著者について

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宮前 貴史(株式会社プロリク )

大学卒業後、個人事業主として約5年半にわたり、BtoC・BtoB領域で営業から企画・運営までを一気通貫で経験。その後、ベンチャー企業にて採用担当として制度設計に従事し、さらにRPOサービスの立ち上げ責任者として、スカウト業務の仕組み化から実践までを牽引。プロリク参画後は、その豊富な実務経験を活かし、ITエンジニアのスカウト業務を中心に複数クライアントの採用成功を支援している

AHRのよくある質問

Q1. リーダーシップが重要とのことですが、経営層がAIに詳しくない場合はどうすればいいですか?

経営層自身が技術の専門家である必要はありません。重要なのは「なぜAIを導入するのか」というビジョンを語り、自ら実践者として試行錯誤する姿勢を見せることだと考えています。例えば、週次の経営会議で「今週、私はこのタスクをAIで試してみた。うまくいかなかったが、こういう学びがあった」と共有する。そうした姿勢が、組織全体に「失敗しても大丈夫だ」という心理的安全性を生み出し、成果を上げる組織へとつながるのではないでしょうか。

Q2. 部下がAIに相談するようになり、上司との対話が減ることは問題ではないですか?

AIに出来ることを委ね、AIでは出来ないことを人が担当するというAHR(弊社が提供する概念)の考え方からすると、より積極的にAiに担ってもらう部分(本音を引き出し、フィードバックすること)を企業として強化し、AI上司のような形で推進する方がよいと考えています。その代わりに減った時間をよりAIで深堀りしきれなかった本音を対話したりであったり、本質的な対話に時間を使うことで関係性を深めていける可能性があるのではと考えています。

Q3. 「継続的に学ぶ人」と「学ばない人」の格差が広がるリスクに、組織はどう対処すべきですか?

AI利用のオープン性と透明性を高めることが第一歩です。例えば、「AI活用事例共有会」を定期開催し、誰がどのようにAIを使って成果を出しているかを全社で共有する。また、AI活用を評価制度に組み込み、「AIを仕事に利活用することの推奨」「学びへの挑戦」そのものを評価対象とすることで、学ぶ姿勢を組織文化として根付かせるような動き方が推奨されます。

参考文献、資料

  • 木下(2023)『ダイナミック・ケイパビリティのフレームワーク:資源ベース再構成の組織能力』
  • Deloitte (2021). "State of AI in the Enterprise, 4th Edition"
  • Perceptyx (2024-2025). "Workforce Panel survey"
  • Resume Now (2025年6月). "Workplace AI Survey"
  • 株式会社mento (2025年9月16日). "AI時代の上司と部下の本音調査"
  • 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ (2025年2月17日). "生成AIと学びの環境に関する調査"

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