「採用代行にAIを入れれば、工数が減る」。そう聞いて導入したものの、AIが出したスカウト対象リストを人が全件見直しており、結局工数は変わらなかった。そういう話をよく聞きます。
AI RPOという言葉も世の中に出始めました。しかし中身を見ると、RPO業務に単に生成AIを使っているだけの会社もあれば、AIファーストで業務プロセスそのものを設計し直している会社まであります。現状ではかなりグラデーションがある状態だと言えます。
同じ「AI RPO」を名乗っていても、AIが担っているのがスカウト文面の下書きだけなのか、対象者の選定から改善提案までなのか、またその深さはどの程度あるのかによって、得られる結果はまったく違います。
本記事では、AI RPOの定義を整理したうえで、独自調査から見えた「人事担当者が本当に手放したい業務」と、そのうちAIが担える範囲・担えない範囲を切り分けます。
AHRとは?
AHR(AI and Human Resources)とは、企業の経営課題に向き合う組織能力を充足させるため、AI資源と人的資源を経営資源として設計・運用・再配分する、株式会社プロリクが2025年6月に提唱した実践フレームです。従来のHRが人的資源のみを扱ったのに対し、AHRはAIを人と並ぶ「経営のコア資源」と捉え、組織能力獲得を目指す考え方です。AHRは、株式会社プロリクの登録商標です。
📄 詳細記事: 【決定版】AHRとは?-人とAIの働き方をリデザインする
💡この記事の要点(TL;DR)
- AI RPOとは、採用代行の各工程に生成AIを組み込み、人が担う範囲とAIが担う範囲を設計し直した採用代行を指す
- 中途採用の採用担当が手放したい業務の同率1位は、辞退理由の分析とスカウト送信対象者の見極め(ともに10.37%)(独自調査、2024年11月)
- スカウト業務では、文面作成(6.67%)より対象者の見極め(10.37%)のほうが重い。 負担は「何を書くか」ではなく「誰に送るか」にある
- 手放したい業務と、AIに任せられる業務は一致しない。 一次面接の実施(8.89%)やグループディスカッションの設計(16.15%)は上位に挙がるが、AIには渡せない
- 経営者と現場では、手放したい業務が逆転する。 経営者の1位は採用コストの分析(22.73%)だが、現場が抱えるスカウト対象者の見極めは経営者では2.27%にとどまる
- AIが担えるのは、判断の材料を整える工程。判断そのものは人が担う
- ツールを導入しても採用は変わらない。業務プロセスの順序を変えるから成果が出る
AI採用とは
採用業務に生成AIを用いることは、一般的にAI採用と呼ばれています。ChatGPTの登場以降、生成AIは多くの採用プロセスに用いられることになりました。今では、書類選考、スカウト、面接、データ分析様々なシーンで活用されるようになっています。
そのようなAI採用を、第三者の立場で提供していく、AI採用代行が今回本記事で議論したい点となります。
📄 関連記事: AI採用完全ガイド——採用工程ごとのAI活用と成功の条件
AI RPO(AI採用代行)とは何か
AI RPO(AI採用代行)とは、採用代行(RPO)の各工程に生成AIを組み込み、人の手だけでは到達しえない効率を実現し、企業の採用を推進するサービスのことを指します。
そもそも、RPO(Recruitment Process Outsourcing: 採用代行)とは、企業の採用業務の一部または全部を外部の専門事業者に委託することです。スカウト送信、応募者対応、日程調整、母集団形成の設計など、多岐に渡る業務が対象になります。
AI RPOは、このRPOに生成AIをただ足したもの、ではないと考えています。従来のRPOで人が行っていた作業のうち、AIが精度を保って担えるものをAIに完全に移行し、人はAIが担えない判断と関係構築に集中する。そうすることで、人間が担っていたRPOという業務効率を、大きく高めることが出来ているサービスを、AI RPOと呼びます。
ここを誤解したまま「AIを使ったRPO」を導入すると、ほぼ効率化されていない、単価も下がっていない、人間のサービスとあまり大差がないサービスを導入してしまうことになります。
従来のRPOと何が違うのか
人間担うRPOの業務範囲
RPOがそもそも何を担っているか、まずは整理してみたいと思います。委託される業務は、大きく6つに分かれます。
RPOが担う業務 | 具体的な作業 |
スカウト | 要件定義、対象者の選定、文面作成、送信 |
パイプライン分析 | 選考内容の分析、移行率の把握 |
データ分析 | 採用データの取得と分析 |
エージェント管理 | エージェントの開拓、対応、推薦への対応 |
自然応募対応 | 応募書類の選考 |
日程調整 | 面接日程の調整 |
この6つのうち、現状で生成AIによる代替が最も進んでいるのはスカウトに関係する業務です。 要件定義から対象者の選定、文面作成までの一連の作業が、生成AIによって置き換わりつつあります。
RPOが担う業務 | 生成AIによる代替の現状 |
スカウト | ◎ 対象者の選定・文面作成の大半をAIが担える |
パイプライン分析 | ◎ 選考データの整理、分析をAIが担う |
データ分析 | ◎ チャネル別分析やROIなど多様なデータ分析をAIが実施可能 |
エージェント管理 | △ 推薦書類の一次確認は可能。関係構築は人。関係構築に関わる資料はAIが作成 |
自然応募対応 | ◎ 書類選考および初期対応をAIが自動対応可能 |
日程調整 | ○ ツールで自動化できる。複雑でない限りは、生成AIである必要すらない |
少し議論の観点を変えて比較してみたものが以下の表です。スカウト業務の中にあって、AI RPOは人間が行うRPOサービスとは根本的に違う構造になっていることが見てとれるかと思います。
観点 | 従来のRPO | AI RPO |
対応範囲 | 作業の代行が中心 | 作業はAI、人は判断と改善提案 |
工数の性質 | 送信数に比例して人手が要る | 送信数が増えても人手は比例しない |
品質のばらつき | 担当者の経験に依存し、ばらつきやすい | 判断基準を言語化するため、ばらつきが小さくなる |
費用構造 | 人月に連動する | 人月への連動が弱まる |
向いている企業 | 手が足りない企業、社内の仕組みが整っておらず、欲しい人の言語化が難しい状態の企業 | 手が足りず、かつ欲しい人や判断基準を言語化ができる企業 |
特に、AI RPOは、判断基準を言語化できない企業では機能しにくいことも特徴です。たとえば人材要件を考える時に、 「コミュニケーション能力が高い人」という抽象的で曖昧な要件をAIは扱えません。AIが明確に淀みなく理解できるように、「複数の関係者との折衝経験があり、提案から受注まで一貫して担当した経験がある」といったように明確に言語化をする必要があります。これによって、AIは職務経歴書から、求める要件を読み取ることができるのです。
AIに渡せ、かつその内容がレジュメに掲載されていると思われる(出現確率が見込める)記載方法で要件を書き出せること。ここが従来のRPOには存在しなかった工程です。
業務プロセス詳細で見た、AI RPOと従来型RPOの違い
スカウト関連業務において、採用業務の工程ごとに、従来のRPOとAI RPOを比べてみたいと思います。
工程 | 従来のRPO | AI RPO |
要件定義 | 発注企業が口頭で伝え、人間が分かる範囲で咀嚼する | 発注企業とRPOが、AIに渡せる粒度まで言語化する |
対象者の選定 | 担当者が1件ずつ職務経歴を読む | AIが一括して候補者をデータベースから照合し、候補を絞り込む |
スカウトテンプレート文面の作成 | 担当者が自社のノウハウをもとに、テンプレートから書く、担当者によって品質にかなり偏りがある | AIが過去の成功パターンを理解し、職種別ペルソナ別に文章を書き分ける |
スカウトの1to1文面の作成 | 担当者が候補者のレジュメを読み、候補者に向けたメッセージを1件1件書く、担当者によって品質にかなり偏りがある、専門的技術的なメッセージを書くことが困難である | AIが経歴を読み、一括でメッセージを作成する、品質に偏りはなく、技術的に踏み込んで書くことも可能 |
送信・進捗管理 | 担当者が手作業で送信していく | ツールで一括送信する、自動化する |
辞退・不採用理由の分析 | 時間がなく実施されない事が多い | AIが自由記述をカテゴリ分類し、自動集計を実施する |
面接 | 発注企業が実施する | 発注企業が実施する、またはAI面接を導入する |
改善提案 | 担当者の経験に依存し、担当者によって品質に偏りがある | AIスカウトは改善提案を行わない。AIにアドバイスを仰ぎながらの改善は出来るものの、通常のRPOと同様に、RPO担当者のノウハウに依存する |
要件定義では、要件の伝え方が変わります。従来は発注企業が口頭で伝え、担当者が分かる範囲で咀嚼していました。AI RPOでは、発注企業とRPOが、AIに渡せる粒度まで要件を言語化します。
対象者の選定では、職務経歴を読む主体が変わります。従来は担当者が1件ずつ読んでいました。AI RPOでは、AIが候補者データベースを一括で照合し、候補を絞り込みます。
スカウト文面の作成は、テンプレートと1to1の2つに分かれます。従来はどちらも担当者が書くため、品質に偏りが出ます。とくに1to1の文面は、候補者のレジュメを1件ずつ読んだうえで書く必要があり、専門的・技術的な内容に踏み込むことが困難でした。AI RPOでは、テンプレートは過去の成功パターンをもとに職種別・ペルソナ別に書き分け、1to1の文面は経歴を読んで一括で作成します。品質の偏りはなくなり、技術的に踏み込んだ文面も書けます。
送信・進捗管理は、担当者の手作業から、ツールによる一括送信と自動化に変わります。
辞退・不採用理由の分析は、従来は時間がなく実施されないことが多い工程でした。AI RPOでは、AIが自由記述をカテゴリ分類し、自動で集計します。
面接は発注企業が実施します。ここは従来と変わらず、AI面接を導入する選択肢が加わります。
改善提案も従来と変わりにくいことが特徴です。現状の多くのAIスカウトツールは、改善提案を行ってくれません。ChatGPTやGeminiのような汎用AIに助言を求めながら、文章改善を進めることはできますが、どの文章がどう刺さり、どう変えていくべきか、といったPDCAサイクルは、通常のRPOと同じく、RPO担当者のノウハウに依存していることに注意が必要です。
AI RPOをどういう観点で評価すればいいのか
ここまではAI RPOと従来型のRPOの違いや特徴などを見てきました。それでは、AI RPOを提供する各社について、どういう観点で評価をすればいいのでしょうか。冒頭では、現状のAI RPOにも各社でグラデーションがある、というをお伝えしました。おそらくAI RPOサービスを提供している以上、「生成AIを活用しています」という説明は、どの会社からも返ってくるかと思います。差が出るのは、その中身です。
ここではいくつかの観点を提示してみたいと思います。
観点 | 何を見るか |
AIが担う業務範囲 | 業務のうち、どこまでをAIが担っているか。文面の下書きだけなのか、対象者の選定やスカウト送信までなのか |
AIに付帯するプロセスが手作業かどうか | GPTsのような簡易な仕組みで手作業が中心となっているか、自社システムとして構築され手作業なく自動で進んでいくか |
自社AIを持っているか | 汎用の生成AIをそのまま使っているのか、採用業務のために設計した自社独自のAIを持っているか |
自社AIの学習データが深いか | AIの判定基準が、実績データや候補者インサイトにもとづいて作られているか、それとも勘と経験だけで作られているか |
AIに依存せず、プロフェッショナルが運用する体制か | ツールを渡して終わりではなく、運用しながら改善を続ける採用のプロフェッショナルがいるか、彼らがPDCAを伴走してくれるか |
1つ目は、AIが担う業務範囲です。 どの工程をAIが担っているのかは会社によって違う可能性があります。2つ目にも関連しますが、広い業務範囲を自動化するシステムを持っているかどうかは重要な観点です。狭い範囲だけを自動化するようなプロセスになっている場合は効率化の程度がどうしても下がってしまうため注意が必要です。
2つ目は、AIに付帯するプロセスが手作業かどうかです。 AIそのものではなく、その前後を見ます。GPTsのような簡易な仕組みでは、候補者の情報を人がAIに貼り付け、返ってきた文面を人が媒体に貼り戻します。AIが1件を処理する速度がどれだけ速くても、この往復は件数の分だけ発生します。自社システムとして構築されていれば、候補者データベースからの抽出、AIへの入力、結果の保存、送信までが手作業を挟まずにつながります。同じAIを使っていても、前後が手作業であれば、送信数を増やすほど人手が必要になります。
3つ目は、自社AIを持っているかどうかです。 汎用の生成AIにそのまま職務経歴書を読ませると、たとえば「テックリード」という職種名を額面通りに解釈するようなことが発生します。しかしテックリードの定義は企業によって異なります。メンバーのマネジメントを指す企業もあれば、技術的にチームを牽引する役割を指す企業もある。AIに職種の定義そのものを与えなければ、職種名に引きずられた判別しかできません。 これはあくまで一例ですが、汎用AIのみに依存するものであれば、精度がどうしても下がることは否めません。
4つ目は、その自社AIの学習データが深いかどうかです。 実績データと候補者インサイトを持っている会社は、実際に返信が来た文面と来なかった文面、選考に進んだ経歴と進まなかった経歴から判定基準を作るようなことが可能です。しかし、データを持っていない会社は、担当者の感覚と経験を書き起こす形になります。同じAIを使っても、学ばせたものが違えば出力は変わります。
5つ目は、AIに依存せず、プロフェッショナルが運用する体制かどうかです。前述の通り、AIスカウトツールそのものは、改善提案を行うような機能はついていないことが多いです。しかし、通常のスカウト業務というものは、返信率が上がらなければ、ペルソナを練り直し、訴求の軸を組み替え、何度もPDCAを繰り返すものです。ペルソナ作りや訴求軸出しなどはAIに聞けば出てくるものではありますが、どのような方針で進めるかを意思決定するのは人間です。採用のプロフェッショナルがいるか、その方々がPDCAを伴走してくれるかは重要な論点になります。
AI RPOに何を依頼するか、何をAI化するのか
ここまでは、AI RPOを提供する会社をどう評価するかを整理しました。発注する側には、もう一つ決めることがあります。何を依頼するのかです。
皆様はClaude Codeというツールを見聞きされたこともあるのではないでしょうか。今世の中は、Claude Codeによって、業務を自動化するハードルが大幅に下がりました。開発の専門家でなければ書けなかったプログラムを、いまはClaude Codeに指示して作れるようになったからです。
Claude Codeを用いて、非エンジニアが採用管理システムを組んだ例も、弊社メディアの別記事でご紹介をしています。
📄 関連記事: 【実践Claude Code】採用管理システム(ATS)を、Claude CodeでGoogle Workspaceの中に作ってみた
こういった変化によって、AI RPOに丸ごと委ねるのではなく、自社が考えるAI化をRPO事業者と共有しながら、一緒に効率化を進める。そうした組み方ができる時代になりました。
では、どの業務から自動化すればよいのか。他社の人事担当者が何を手放したいと考えているかが、ヒントになります。
2024年11月に、弊社が人事担当者を対象として実施した独自調査で、「今すぐにでも手放したい業務」を複数回答で聴取しました。採用を担当している方のセグメントに絞った結果が次の通りです。比較のため、人事のなかで採用を担当していない方の数値も併記します。
中途採用(採用担当)
順位 | 手放したい業務 | 採用担当 | 採用担当以外 |
1 | 不採用者や辞退者の理由分析 | 10.37% | 8.33% |
1 | ダイレクトスカウトの送信対象者リストアップ、見極め | 10.37% | 6.41% |
3 | 面接官との日程調整、やりとり | 9.63% | 8.01% |
3 | ハイパフォーマー、ローパフォーマーの分析 | 9.63% | 6.41% |
5 | 採用コストの分析と最適化 | 8.89% | 8.65% |
5 | 入社手続きのサポート | 8.89% | 8.01% |
5 | 一次面接の実施 | 8.89% | 4.17% |
新卒採用(採用担当)
順位 | 手放したい業務 | 採用担当 | 採用担当以外 |
1 | グループディスカッションの設計、実施 | 16.15% | 7.43% |
2 | 内定辞退理由の分析 | 15.38% | 11.90% |
2 | 書類選考 | 15.38% | 11.15% |
2 | 人材紹介会社の選定・契約管理 | 15.38% | 4.83% |
5 | 応募者、面接官の面接スケジュール調整 | 14.62% | 10.78% |
この結果から3点を指摘します。
第一に、中途採用のスカウト業務では、対象者の見極めだけが他の工程より高くなっています。 スカウトに関わる業務を並べると、送信対象者のリストアップ・見極めが10.37%であるのに対し、求人・スカウト文章作成は6.67%、1to1メッセージ作成は7.41%、スカウトの送信そのものは5.93%です。文面を書くことより、誰に送るかを決めることを手放したいと答えた方が多くなっています。 さらにこの項目は、採用担当(10.37%)と採用担当以外(6.41%)の差が大きく、実際にスカウトを担当している方に固有の負担であることが分かります。
📄 関連記事: スカウト返信率を上げる!エンジニア採用のスカウト文章構造
第二に、新卒と中途で手放したい業務がまったく違います。 中途はスカウトの対象者選定と分析、新卒は選考の実務です。新卒1位のグループディスカッションの設計・実施は、中途には存在しない業務です。日程調整は両方に共通しますが、新卒(14.62%)は中途(9.63%)を上回ります。同じ「採用代行」でも、新卒と中途では代行すべき対象が異なります。
第三に、分析業務が両方で上位に入っています。 中途の同率1位「不採用者や辞退者の理由分析」、新卒2位「内定辞退理由の分析」。これらは工数がかかるわりに後回しにされやすく、実施されないまま次の採用が始まります。前述の通り、AI RPOでは自由記述の分類と集計をAIが行います。
Claude Codeで自動化できそうな業務
先ほどのアンケートの中の順位が高いものの中で、例えば、ハイパフォーマー・ローパフォーマーの分析、採用コストの分析と最適化、入社手続きのサポート、内定辞退理由の分析などはClaude Codeとの相性が良く、かつ既存のツールが満たしにくいややニッチな業務であるため、追加自動化という観点から相性が良いものかもしれません。分析や判断にAIを使う必要があるものもあれば、システム開発のみで終わりそうなものもあります。
自社でClaude Codeを動かすもよし、AI RPOの中には、弊社のように、Claude Codeの実装支援をしているような会社もあるため、相談しながら採用業務を高度化していくことが可能だと思います。
なお、もしClaude Codeをまだお使いでない企業様がおられれば、以下からセットアップガイドを提供しています。よろしければダウンロードして、使ってみてください。
📄 関連ページ: Claude Codeセットアップガイド
企業規模によって、手放したい業務は変わる
同じ調査を企業規模で分けると、手放したい業務の性質が変わります(中途採用)。
手放したい業務 | 1〜100名 | 101〜1000名 | 1001名以上 |
ATS(採用管理システム)の選定・導入 | 4.13% | 5.07% | 13.76% |
採用データの分析(チャネル別効果分析) | 2.48% | 7.83% | 11.93% |
不採用者や辞退者の理由分析 | 5.79% | 8.29% | 13.76% |
ダイレクトスカウトの送信対象者リストアップ、見極め | 5.79% | 8.76% | 7.34% |
従業員1001名以上では、システムとデータの業務が上位に来ます。 一方、スカウトの対象者の見極めは、企業規模による差が小さく、どの規模でも一定の割合で選ばれています。
大企業では「データを整える」「システムを選ぶ」といった、採用の周辺にある業務の選択率が高くなります。中小企業では、スカウトの実務そのものの選択率が高くなります。同じAI RPOでも、規模によって着手すべき業務が変わるかと思いますので、よろしければご参考ください。
業界別に、AI RPOが担える範囲はどう変わるか
業界によって、AI RPOのどの工程に手間がかかるかが変わります。母集団の大きさ、資格要件の有無、候補者が転職を決める理由が違うためです。前述の工程(要件定義、対象者の選定、文面の作成、送信・進捗管理、辞退・不採用理由の分析、改善提案)のうち、業界ごとにどこへ影響が出るかを整理します。
IT業界
経歴の解釈が必要な業界です。「Python経験3年」という要件をAIに渡すと、「Pythonを使った保守業務1年」の経歴を条件に合うものとして拾うことがあります。人であればすんなり区別できる違いを、AIは拡大して解釈します。たとえば「テックリード」という職種名も、企業によって別の意味を持つため、企業独自の定義をAIに伝えなければ思った通りのアウトプットを出してくれません。
影響が出るのは、要件定義と対象者の選定です。要件定義には最も時間がかかります。そこで書いた要件の粒度が、そのまま対象者の選定の精度になります。
文面の作成にも影響します。候補者は技術的な内容を読んで返信するかを決めるため、1to1の文面が使う技術や課題に踏み込めているかで返信率が変わります。汎用の生成AIをそのまま使う事業者では、職種名に引きずられた判別と、踏み込みの浅い文面にとどまります。改善提案も、返信率が伸びない原因を技術要件まで遡って見直す必要があります。
前述の評価観点のうち「自社AIを持っているか」「自社AIの学習データが深いか」の差が、最も出る業界です。
金融業界
金融業界はセキュリティが厳しい業界でもあります。一定利用が進んできてはいるものの、企業によっては扱いが厳しく、個人情報をAIに投入することが出来ないといった事情もあるかもしれません。
そのような場合におけるAI RPOとの取り組みとしては、そもそもどう個人情報をAIに投入させないかにまず知恵を絞ることになるのではと考えられます。
たとえば、ネットに接続されていないローカル環境でどう機微な情報を扱い、処理していくかといった業務設計など、工夫が求められる業界だと思われます。
医療・介護・福祉業界
医療・介護・福祉といった業界は、比較的資格要件が明確な業界です。看護師、介護福祉士、社会福祉士、理学療法士といった国家資格を根拠に要件として言語化しやすく、要件の複雑性はIT企業ほどのものはありません。要件定義の工程は、ITと比べて短くなります。
対象者の選定では、資格や勤務条件などを求人の条件と突き合わせます。経歴の解釈を要しない分、判定の精度は出しやすくなります。
一方で、IT企業と違って、リモート業務ではなく、あくまで勤務場所が固定されていることが多いため、そもそもスカウト送信可能な候補者の母数が少ない傾向にあり、AI化による改善余地がやや少ないという特徴もあります。
まとめ
AI RPOとは、採用代行に生成AIを追加することではなく、出来る限り生成AIに採用業務を効率化、自動化させ、人間は足りないところの業務を実施する、というサービス形態です。
自社の事情にあったプロセスに踏み込んでAI RPOを実施する企業と協業できれば、自社の採用を大きく効率化させることが可能です。
AI採用にお悩みがあればお気軽にご相談ください
AI採用は、採用工程のどこかを自動化・効率化するための手段です。株式会社プロリクでは独自AIを用いたAI RPO(採用代行)を提供するとともに、Claude Codeを用いた採用業務自動化支援も行っております。お気軽にお問い合わせいただけると幸いです。
弊社お問い合わせ窓口
著者について
宮前 貴史(株式会社プロリク )
大学卒業後、個人事業主として約5年半にわたり、BtoC・BtoB領域で営業から企画・運営までを一気通貫で経験。その後、ベンチャー企業にて採用担当として制度設計に従事し、さらにRPOサービスの立ち上げ責任者として、スカウト業務の仕組み化から実践までを牽引。プロリク参画後は、その豊富な実務経験を活かし、ITエンジニアのスカウト業務を中心に複数クライアントの採用成功を支援している
よくある質問
Q1. AI RPOとは何ですか? A. AI RPOとは、採用代行(RPO: Recruitment Process Outsourcing)の各工程に生成AIを組み込み、人が担う範囲とAIが担う範囲を設計し直した採用代行を指します。従来のRPOにAIを足すのではなく、人とAIの分担を設計し直す点が違いです。作業はAIが担い、人は判断と改善提案に集中します。
Q2. 従来のRPOとの違いは何ですか? A. 人が何に時間を使うかが違います。従来のRPOは作業の代行が中心で、送信数に比例して人手が必要でした。AI RPOでは、作業をAIが担うため送信数が増えても人手が比例しません。また判断基準を言語化するため、担当者の経験による品質のばらつきが小さくなります。ただし判断基準を言語化できない企業では機能しません。
Q3. 人事担当者が最も手放したい採用業務は何ですか? A. 2024年11月に実施した独自調査(人事担当者対象、複数回答)では、中途採用の採用担当で最も高かったのは「不採用者や辞退者の理由分析」と「ダイレクトスカウトの送信対象者リストアップ、見極め」で、ともに10.37%でした。次いで「面接官との日程調整、やりとり」「ハイパフォーマー、ローパフォーマーの分析」がともに9.63%です。新卒採用では「グループディスカッションの設計、実施」が16.15%で最も高くなりました。
Q4. スカウト業務では、どの工程の負担が重いのですか? A. 対象者を選ぶ工程です。同調査では、ダイレクトスカウトの送信対象者リストアップ・見極めが10.37%であるのに対し、求人・スカウト文章作成は6.67%、1to1メッセージ作成は7.41%、スカウトの送信そのものは5.93%でした。文面を書くことより、誰に送るかを決めることを手放したいと答えた方が多くなっています。この項目は採用担当以外(6.41%)との差も大きく、実際にスカウトを担当している方に固有の負担です。
Q5. 新卒採用と中途採用で、手放したい業務は違いますか? A. まったく違います。中途はスカウトの対象者選定と分析業務に負担が集中する一方、新卒は「グループディスカッションの設計、実施」(16.15%)「書類選考」(15.38%)といった選考の実務が上位に来ます。日程調整は両方に共通しますが、新卒(14.62%)が中途(9.63%)を上回ります。同じ採用代行でも、新卒と中途では代行すべき対象が異なります。
Q6. 手放したい業務は、すべてAIに任せられますか? A. 任せられません。調査の上位には「一次面接の実施」(中途8.89%)「グループディスカッションの設計、実施」(新卒16.15%)が入っていますが、これらはAIに渡せない業務です。AIに任せると、その方が人と話す機会はなくなります。しかもこの2つは採用担当以外との差が最も大きい項目でもあり、実際に選考を担当している方ほど負担を感じています。AI RPOで行うのは、渡せる業務をAIに渡し、渡せない業務のための時間を作ることです。
Q7. 企業規模によって、AI RPOで最初に着手すべき工程は変わりますか? A. 変わります。同調査(中途採用)では、従業員1001名以上で「ATSの選定・導入」(13.76%)「採用データの分析」(11.93%)といったシステムとデータの業務が上位に来ました。1〜100名ではそれぞれ4.13%、2.48%です。一方「スカウト送信対象者の見極め」は規模による差が小さく(1〜100名5.79%、101〜1000名8.76%、1001名以上7.34%)、どの規模でも一定の負担として存在しています。大企業は採用の周辺業務、中小企業はスカウトの実務そのものが重くなります。
Q8. スカウト業務にAIを使うと、返信率はどのくらい変わりますか? A. 候補者のインサイトデータとAIを組み合わせた事例では、返信率が1.4%から7.0%へ改善しました(媒体平均2.0%に対して約3.5倍)。ただし汎用の生成AIをそのまま使うだけでは、この水準には届きません。職種と経歴に合わせた文章構造の設計が必要です。またターゲット選定の精度は、実務で80〜90%に達します。
Q9. 書類選考をAIに任せてもよいのですか? A. 確認の順序を整える工程までは任せられますが、見送りの判断は人が行うべきです。AIが読んでいるのは職務経歴書というテキストであって、その方の能力や人柄ではありません。AIが低く評価したことは「要件に合わない」ことを意味せず、「書類上、要件との重なりが読み取れなかった」だけです。
Q10. AI RPOを導入したのに工数が減りません。なぜですか? A. 既存のプロセスの上にAIを乗せているためです。採用フローを変えずにAIを追加すると、AIの出力を確認する工程が純粋に増えます。「人が対象リストを作ってからAIで文面を生成する」ではなく「AIが対象リストと文面を同時に用意し、人は送信前の確認と調整に集中する」というように、業務の順序そのものを変える必要があります。
Q11. どんな企業がAI RPOに向いていますか? A. 手が足りず、かつ判断基準を言語化できる企業です。「コミュニケーション能力が高い人」という要件をAIは扱えません。「複数の関係者との折衝経験があり、提案から受注まで一貫して担当した経験がある」であれば、職務経歴書から読み取れます。AIに渡せる形で要件を書き直せるかどうかが分かれ目です。
Q12. 業界によってAIが担える範囲は変わりますか? A. 変わります。医療・介護は国家資格が要件になるため要件の言語化がほぼ不要で、条件の突き合わせをAIが担えます。エンジニアは「テックリード」の定義が企業ごとに異なるなど解釈を要するため、プロンプト設計そのものが成果を左右します。営業職・バックオフィス職では対象者の絞り込みが機能する一方、実績数値の意味の解釈は人が担う領域として残ります。
参考文献、資料
- 株式会社プロリクの独自アンケート調査「人事向け生成AIプロダクトに関わる本調査」(2024年11月実施。人事担当者を対象としたインターネット調査。中途・新卒それぞれで「今すぐにでも手放したい業務」を複数回答で聴取。本文の数値は、人事のうち採用を担当している方のセグメントの選択率)