「ジョブメドレーとハローワークと人材紹介の応募者を、同じ一覧で確認したい」「複数の媒体からくる応募をExcelで管理しているが、追いつかなくなってきた」——医療・介護・福祉・保育施設の採用担当者からよく聞く声です。医療・介護施設への採用支援の現場で日々架電していても、この2つは最初に出てくる困りごとです。
ATSの比較情報には、一般企業やIT業界の採用を想定したものも多く、医療・介護・福祉・保育施設の採用実務にそのまま当てはめにくい場合があります。本記事では「保育」を独立した採用領域として扱い、4領域それぞれの採用環境に合わせて、ATSの基本・選び方・主な選択肢を整理します。
ATSそのものの定義や業界を横断した比較は「ATSとは?業界別比較ガイド2026」で解説しています。本記事はそのうち、医療・介護・福祉・保育に特化した選び方に絞ります。人事の全体像から整理したい場合は「HR(人事)とは?」も参照してください。
💡この記事の要点(TL;DR)
- 医療・介護・福祉・保育の採用では、使う媒体・資格管理の複雑さ・継続的な採用ニーズがIT業界と異なる
- ATSは採用業務を整理・効率化するツールであり、応募数の不足や採用条件そのものを直接改善するものではない
- 管理手段の選択肢は「媒体のみ」「Excel/スプレッドシート」「汎用ATS」「業界特化ATS」の4つ
- 「汎用か業界特化か」より、自施設の応募経路・権限管理・資格管理・拠点構成に合うかで判断する
- 選定では①主力媒体と取り込み方法、②資格・勤務条件の管理要件、③利用人数・拠点数、④個人情報管理、⑤費用の5点を確認する
- ジョブメドレーを主力媒体にしている施設には「ジョブメドレーATS」が有力候補(条件を満たす場合、2026年12月31日まで無料)
ATSとは?——採用管理システムの基本
ATS(Applicant Tracking System)とは、求人への応募受付から選考、内定までの採用プロセスを中心に管理するシステムです。日本語では「採用管理システム」と呼ばれます。製品によっては、入社手続きや採用後の情報連携にも対応しています。
複数の媒体から来た応募者情報をひとつの画面に集約し、選考の進捗状況・面接の日程・合否の記録を管理します。「あの方の選考は今どの段階だったか」「この媒体からの応募はどこに記録したか」という状態の解消が、ATSを導入する直接の動機になります。
機能カテゴリ | 具体的な内容 |
応募者管理 | 複数媒体からの応募情報を一カ所に集約 |
選考進捗管理 | 書類選考・面接・内定のステータスを一覧で管理 |
面接調整 | 日程調整・リマインドメールの自動送信 |
評価・コメント管理 | 面接官の評価・コメントを記録し、候補者を比較 |
媒体連携 | 複数媒体への求人掲載・応募者情報の取り込み |
資格・情報管理 | 候補者の保有資格・経験年数・希望条件の管理 |
データ分析 | 媒体別の応募数・通過率・採用コストの可視化 |
ATSには、エンジニア採用や一般企業の採用フローを想定した製品も多数あります。医療・介護・福祉・保育業界では使う採用経路も必要な資格情報も異なるため、選定前に自施設の採用実務に合うかを確認することが重要です。
医療・介護・福祉・保育業界特有の採用事情
4業種それぞれの採用環境
医療(病院・クリニック・在宅医療)
医療職の採用では、ナースではたらこ・マイナビ看護師・看護roo!・コメディカルドットコム・ジョブメドレーなどの専門サービスに加え、Indeed、ハローワーク、自社採用サイト、人材紹介会社など複数の採用経路が利用されています。
管理する資格の種類が多いことも特徴です。看護師・准看護師・医師・薬剤師・理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)・放射線技師・臨床検査技師——職種によって必要な免許・資格が異なるほか、実務経験年数や研修修了状況など、選考時に確認すべき情報も異なります。資格の種別に加え、常勤・非常勤・夜勤専従などの雇用形態、夜勤・オンコールへの対応可否、配属可能な診療科・通勤距離なども採用判断に関わります。
クリニックや中小規模の医療機関では、採用担当者が事務スタッフ兼務のケースが多く、そもそもATSを利用せずに媒体だけで管理するようなケースも多く見られます。
介護(特別養護老人ホーム・老人保健施設・訪問介護・グループホーム等)
介護職採用で主に使われる媒体は、ジョブメドレー・カイゴジョブ・レバウェル介護求人(旧きらケア)・介護求人ナビ・ハローワーク・Indeedなどです。ジョブメドレーは介護領域で広く使われており、ジョブメドレーとの連携がATSの実用性を大きく左右します。
介護業界では、近年離職率そのものは低下傾向にある一方、高齢化の進行による採用需要の増加と人材供給の不足から、継続的な採用活動が必要な事業所が多くあります(公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」)。採用担当者が施設長や主任を兼務するケースも多く、「使いやすさ」は特に重視したい選定項目の一つです。
管理する資格は、介護福祉士・ケアマネージャー(介護支援専門員)・初任者研修修了者・実務者研修修了者などです。資格の種別だけでなく、訪問業務の経験・夜勤やオンコールへの対応可否・配属可能な拠点と通勤距離なども、採用判断に直結する条件です。こうした情報を正確に把握することは、選考判断や採用後の配属検討にも影響します。なお、入社後の日常的な資格更新管理やシフト配置は人事労務システムの領域になる場合が多く、ATSだけで対応できるかは事前に確認が必要です。
福祉・障害(障害者支援施設・グループホーム・就労支援事業所等)
障害福祉領域では、社会福祉士・精神保健福祉士などの資格に加え、児童発達支援管理責任者(児発管)・サービス管理責任者(サビ管)の配置要件となる実務経験や研修修了状況の確認が必要になります。これらには一定の実務経験年数と研修修了を要件とするものが多く、更新研修の受講状況まで把握が必要なケースがあります。
汎用ATSでは、標準項目だけでは実務経験年数や研修修了状況まで管理しきれず、カスタム項目の設定や担当者による個別確認が必要になる場合があります。
保育(保育所・幼稚園・認定こども園・学童保育等)
保育士の採用では保育士バンク・ほいく is・マイナビ保育士などが主力媒体です。保育士資格の有無・幼稚園教諭免許状の有無・保育経験の年数・施設形態(認可・認証・企業内保育等)の経験が主な管理項目です。
勤務形態(常勤・パート・産休育休代替)や配属可能な施設の距離など、勤務条件の確認が採用判断に大きく関わります。こうした条件の記録・管理が必要な場合、汎用ATSの標準項目では項目設計が必要になります。
ATSで実現できる主なこと
ATSの主な効果は、複数媒体の応募集約・重複応募の検知・選考状況の共有・面接評価やコメントの記録・データ蓄積・応募者対応の均質化の6つです。 ただし、以下の機能の有無や自動化の範囲は製品によって異なります。特に媒体からの応募者取り込みは、ATSと媒体の連携状況によって自動取り込み・CSV取り込み・手動登録のいずれになるかが変わります。導入前に、利用予定の媒体や運用方法に対応しているか確認が必要です。
複数媒体の応募者情報を同じ画面で管理できる
ATSの一番の効果は、複数媒体の応募を1つの画面に集めることです。これまで媒体ごとの管理画面やExcelに転記していた情報が、1か所にまとまります。
ただし情報の集約方法は媒体によって変わります。ジョブメドレーのようにAPI連携できる媒体は自動で入り、連携のない媒体はCSV取り込みや手動登録になります。「一元管理できる(1画面で見られる)」ことと「何もしなくても全部集まる」ことは別で、どの媒体がどの方式かは後述の「①応募者の取り込み方法」で確認します。
重複応募の可能性を確認できる
重複応募の検知機能を備えたATSでは、同一人物が複数の経路から応募した場合に重複の可能性を確認できます。気づかずに別の担当者が対応してしまうミスを減らせます。
選考状況をチーム全体で権限設定した上で、共有できる
施設長・看護師長・事務担当など複数人が採用に関わる場合、それぞれが最新の選考状況をリアルタイムで確認できます。役職や担当に応じて閲覧・編集できる範囲を分けられるため、履歴書などの個人情報を必要な人だけに絞って共有できます。電話や口頭での状況確認が減ります。
面接官の評価やコメントを記録し、比較できる
複数の面接官が同じ候補者を評価する場合、ATS上に評価とコメントを残せます。評価軸(スキル・カルチャーフィット等)をあらかじめ揃えておけば、面接官ごとの判断のばらつきを抑え、候補者同士を比較しやすくなります。口頭やメールでのやり取りと違い、評価の根拠が記録として残るため、「なぜ通したか・見送ったか」を後から振り返れます。医療・介護では、資格・経験に加えて夜勤やオンコールへの対応可否など施設固有の判断軸も評価項目に入れておくと、選考の目線を揃えやすくなります。
採用データが蓄積され、改善の根拠になる
媒体別の応募数・面接設定率・採用率を記録することで、「どの媒体からの採用コストが最も低いか」「どの職種で選考離脱が多いか」が定量的に把握できます。具体的に把握できる指標の例として、応募から初回連絡までの時間、面接実施率、内定承諾率、職種・施設別の採用率、媒体別の採用単価、選考途中で辞退が多い段階などがあります。ATSをデータ蓄積の基盤として活用することで、採用改善の根拠が生まれます。
応募者対応のばらつきを減らす
ATSは採用担当者の管理負担を減らすだけでなく、応募者への連絡漏れや対応の遅れを減らし、選考結果を速やかに案内しやすくなります。応募者体験の改善は、内定承諾や施設に対する印象にも影響する可能性があります。
ATSで解決できないこと
ATSを導入しても、次の問題は直接解決しません。
- 応募者が集まらない — 求人への露出不足や給与・勤務条件に課題がある場合、ATSを導入するだけで応募数が増えるとは限らない
- 求人原稿の魅力が弱い — 原稿作成を支援するATSもあるが、給与・勤務条件や訴求内容そのものは別途見直す必要がある
- 面接官の判断や社内承認が遅い — ATSでリマインドや進捗の可視化はできるが、意思決定のルールや社内運用自体の見直しが必要
- 内定辞退が多い — ATSで辞退が発生しやすい段階の把握や連絡の迅速化はできるが、給与・勤務条件や面接体験など、辞退原因そのものは別途改善が必要
- 現場と採用担当の要件認識のズレ — 「どんな人を採りたいか」が揃っていなければ、管理ツールを整えても採用の質は変わらない
「採用がうまくいかない」問題がどこにあるかを先に特定してから、ツール選定に入ることを推奨します。採用そのものを外部に任せる選択肢を検討する場合は「RPO(採用代行)とは?」も参考になります。
ATS選定の5つの確認ポイント
① 応募者の取り込み方法を確認する
ATSを選ぶ際に最初に確認すべきは、「主力媒体からの応募者をどのように取り込めるか」です。
取り込み方式 | 内容 | 担当者の工数 |
API自動連携 | 応募情報がATSへ自動で反映される。選考ステータスの双方向同期が可能な製品もある | 最小 |
メール自動取り込み | 媒体からの応募通知メールを解析してATSへ登録する | 小〜中 |
CSV取り込み | 媒体から応募者データをエクスポートし、ATSへ一括登録する | 中 |
手動登録 | 担当者が媒体の管理画面を見ながらATSに個別入力する | 大きい |
ジョブメドレーATSは、ジョブメドレーからの応募者情報を自動で取り込めます。また、一部を除き、ATS上で更新した選考ステータスがジョブメドレー側にも反映されます。汎用ATSでは、医療・介護・福祉・保育の専門媒体との自動連携に対応していない場合があります。
API自動連携があると伝えられている場合も、以下の点を確認することを推奨します。
- 連携は一方向か、双方向か(選考ステータス変更が媒体側にも反映されるか)
- 応募者の添付履歴書・職務経歴書も取り込めるか
- 連携エラー時に通知が来るか
- 過去の応募者データも取り込めるか
各媒体からの具体的な取り込み方法は、ATS事業者のWebサイトに詳細が書かれていないことも多いため、導入前のデモや担当者への確認が有効です。
② 資格・勤務条件の管理要件を確認する
医療・介護・福祉・保育の採用では、職種ごとに異なる資格の種別・取得年月・更新研修の受講状況を管理することに加え、常勤・非常勤・夜勤専従などの雇用形態、夜勤・オンコール・送迎への対応可否、配属可能な施設・通勤距離なども採用判断に関わります。これらをまとめて管理できるかが、ATSの適合性を左右します。
汎用ATSでは、製品によって医療・介護・福祉・保育向けの資格項目が標準で用意されていない場合があり、カスタム項目の設計が必要になることがあります。業界特化ATSの中には、業界固有の資格項目や業務フローがあらかじめ用意されている製品もあり、導入の初期設定コストを抑えやすい場合があります。
自施設が管理すべき資格・勤務条件の種別と粒度を整理した上で、必要な項目を設定できるかをデモ環境で確認することを推奨します。
③ 選考に関わる人数・拠点数を確認する
担当者1名・施設1拠点であれば、シンプルなシステムが向いています。担当者が複数名・拠点が複数の場合は、閲覧・編集権限の設定と拠点をまたいだデータの一元集約が必要です。
ATSへの切り替えを検討するサインとして、次のような状態が続いているかを確認してください。
- 応募への初回連絡が翌日以降になることがある
- 選考状況を口頭やチャットで確認している
- 同じ応募者に複数人が連絡したことがある
- 面接予定や結果の記録漏れが起きている
- 媒体別の採用実績を集計できていない
- 拠点ごとに別々の表で管理している
同じ応募数でも、採用専任者の有無や選考に関わる人数によって、管理負担は大きく異なります。応募数だけでなく、対応漏れや集計工数が実際に発生しているかで判断することを推奨します。
④ 個人情報・セキュリティ要件を確認する
採用管理では、履歴書・職務経歴書・面接の音声や文字起こしなどの個人情報を扱います。内容によっては、健康情報などの要配慮個人情報が含まれる可能性もあります。選定前に以下を確認してください。
- 保存データの暗号化とアクセス権限の設定方法
- 個人情報の保存期間と削除手順
- AI機能を使う場合(面接文字起こしなど)、入力データの学習利用有無
- ISO 27001取得やPマーク等のセキュリティ認証の有無
生成AIを利用した面接文字起こしでは、音声や文字データが外部サービスやクラウド環境で処理される場合があります。利用規約やプライバシーポリシーに加え、面接参加者への案内・同意取得、録音データの保存期間、社内のアクセス権限も確認したうえで利用することが重要です。
⑤ 費用(無料期間後を含む)と移行コストを確認する
初期費用・月額費用だけでなく、次の点も確認してください。
- 無料期間後の料金体系(未公表の場合は変更リスクを想定する)
- 解約条件と応募者データの出力・移行方法
- 別のATSへ移行する際の工数(応募者情報・選考履歴の引き継ぎ)
- 導入・初期設定にかかる時間
「無料だからとりあえず入れる」という判断は、後から別ツールへ移行する際のコストと天秤にかける必要があります。
施設タイプ別の選び方
「汎用ATS vs 業界特化ATS」という二分法よりも、自施設の運営体制・応募経路・管理の複雑さに応じて判断する方が実情に合います。
施設の状況 | 有力な管理方法 |
1施設・使う媒体が1〜2つ・担当者1名 | 各媒体の管理画面またはスプレッドシートで対応できる可能性が高い |
ジョブメドレーを主力媒体として利用中・複数担当者 | ジョブメドレーATSを候補に。無料条件・連携範囲を確認する |
複数拠点・複数職種・人材紹介会社を複数利用 | エージェント管理・権限管理に対応した汎用ATSが選択肢になる場合がある |
ジョブメドレー以外の専門媒体(ナースではたらこ・カイゴジョブ等)を主力で利用 | 各媒体との取り込み方式を個別に確認してからATSを選ぶ必要がある |
複数の施設形態(介護・訪問看護・保育等)を一法人で運営 | 職種・施設形態をまたいで管理できるATSか確認する |
この表はあくまで目安です。実際には複数の条件が重なることが多く、デモや担当者との相談を経て判断することを推奨します。
主な管理手段の比較
管理手段 | 費用 | 専門媒体との連携 | 資格・条件管理 | 複数担当者・複数拠点 |
媒体管理画面のみ | 管理画面は追加費用なし(媒体の利用料・採用費は別) | ◎(その媒体のみ) | △ | △ |
Excel/スプレッドシート | 無料 | ×(手動) | △ | △(クラウド型なら同時編集可) |
汎用ATS | 製品・利用人数・採用規模による | △(製品による) | ○(要初期設定) | ◎ |
業界特化ATS(ジョブメドレーATS) | 条件付き無料 | ◎(ジョブメドレーのみ) | ○ | ○ |
凡例: ◎ 標準機能として対応 ○ 設定または追加運用により対応 △ 一部対応または手動作業が必要 × 原則として対応なし
媒体管理画面のみ
使う媒体が1つで月間応募が比較的少ない場合は、各媒体の管理画面内でも対応できます。ジョブメドレー・カイゴジョブ・保育士バンクなど主要な専門媒体は、それぞれ選考管理機能を備えています。
複数の媒体を使い始めた、または同じ方が複数媒体から応募してくる事態が発生し始めた段階が、次の手段への移行を検討するサインです。
Excel・スプレッドシート
担当者が1名で媒体数が少ない場合は、ExcelやGoogleスプレッドシートでも管理できます。
ローカル保存したExcelでは最新版の管理や複数人での同時編集に課題が生じやすいです。Google スプレッドシートやExcel Onlineなどクラウド型であれば同時編集は可能ですが、媒体からの応募者情報の取り込みや重複判定は別途手作業が必要です。
汎用ATS
HRMOS採用・Jobcan採用管理・Talentioなどの汎用ATSは、機能が豊富で複数拠点・複数職種の管理に対応しています。エージェント管理機能を備えた製品もあり、紹介会社を複数利用する法人では選択肢の一つになります。
医療・介護・福祉・保育の採用に汎用ATSが合いにくい主な理由は「機能がない」からではなく、「初期設定のコストが高い」からです。ジョブメドレー・ナースではたらこ・カイゴジョブなど専門媒体とのAPI連携に対応していない場合があり手動登録やCSV取り込みが必要になること、資格・勤務条件の管理項目を一から設計する必要があること、の2点が主な理由です。
一方で、医療関連職だけでなく、ビズリーチやWantedlyでビジネス職・ITエンジニア職を採用しているクリニックもあります。こうした施設では、IT人材採用に強い汎用ATSの方が相性が良い場合があります。
業界特化ATS(ジョブメドレーATS)
2026年4月リリースのジョブメドレーATSが、現時点での業界特化ATSの代表例です。医療・介護・福祉の現場での利用を想定して設計されている点と、ジョブメドレーとの自動連携が特徴です。保育施設での利用範囲については、申し込み前に確認が必要です。詳細は後述します。
既製品以外の補足的な選択肢——Claude Codeを使った自社開発
ここまで紹介した4つの管理手段とは別に、IT担当者や開発体制を持つ法人では、Claude Codeなどを活用して独自の採用管理ツールを構築する選択肢もあります。
最近の生成AIの中でも特に話題になっているのが、このClaude Codeですが、Claude Codeを用いれば非エンジニアでも思い通りにATSを自分で開発をすることが可能です。「有料ATSは規模に見合わない、でもスプレッドシートは煩雑」という段階の法人では、Claude Codeを使って自社用の採用管理ツールを作るという選択肢もあると考えています。たとえば、Google Apps Script(GAS)とスプレッドシートを組み合わせれば、データは社内のGoogle Workspaceに収まったまま、入力・一覧・書類選考の下書きをAIに任せる仕組みを構築できます。エンジニアに頼らず人事担当者が自分で作った事例も出ており、既製品ではカバーしにくい自施設固有の採用フローに対応しやすい点がメリットです。
一方で、セキュリティ設定・保守・法改正対応など継続的な運用コストは自社持ちになります。また、開発にあたっては、いきなり実装に入らず、要件・基本設計・ロードマップを先に固めてからコードに入る進め方が品質に直結します。
実際の構築手順と注意点については「採用管理システム(ATS)をClaude Codeで自作してみた」で詳しく解説しています。
ジョブメドレーATS——業界特化ATSの詳細
ジョブメドレーATSは、条件を満たす場合に2026年12月31日まで無料で利用できる業界特化型の採用管理システムです。ただし、利用条件・連携範囲・無料期間後の料金を正確に把握した上で判断することが重要です。
基本情報と無料キャンペーンの条件
2026年4月2日、株式会社メドレーが提供を開始した採用管理システムです。
無料キャンペーンの主な条件は次のとおりです。
- ジョブメドレーを利用中であること
- キャンペーン期間中(2026年12月31日まで)に新規申し込みが必要
- 運営事務局の審査あり
- ジョブメドレーの利用停止・解約後は利用できない
- キャンペーン内容は予告なく変更される可能性がある
2026年12月31日以降の料金体系は現時点では公表されていません。
ジョブメドレーの採用費用との関係
ジョブメドレーは、初期費用・月額費用・求人掲載料が無料で、採用が決定した場合に成功報酬が発生するサービスです。ジョブメドレーATSはこれとは独立したシステムです。ジョブメドレーの採用時に発生する費用と、ジョブメドレーATSの利用料は別の費用項目です。具体的な料金条件については、申し込み前に確認してください。
主な機能
- ジョブメドレー・自社HP・人材紹介など複数経路からの応募を一括管理
- 重複応募の自動判定
- 生成AIによる面接内容の自動文字起こし
- 履歴書・職務経歴書の自動取り込み
- 候補者へのメッセージ文案作成(生成AI活用)
- ジョブメドレーとの自動連携(選考ステータスの同期)
注意点と、他製品も比較したいケース
ジョブメドレー以外の専門媒体(ナースではたらこ・カイゴジョブ等)との連携方法について、公開リリース時点では詳細が明示されていません。各媒体からの取り込みがAPI連携なのか、CSV取り込みなのか、手動登録が必要なのかは、申し込み前にメドレー社に確認することを推奨します。
次のいずれかに当てはまる場合は、ジョブメドレーATSだけでなく、他のATSも含めて比較することを推奨します。
- ジョブメドレーをほとんど使っていない、または使う予定がない
- 複数の人材紹介会社を中心に採用している
- 複数拠点で職種ごとに細かく権限管理したい
- ジョブメドレー以外の専門媒体との自動連携が必要
生成AIによる面接文字起こし機能については、入力した音声・テキストデータの学習利用有無を利用規約で確認してください。AIを採用プロセスに組み込むと何がどう変わるかは「AI RPO(AI採用代行)とは?」で整理しています。
その他の選択肢
Airワーク採用管理(リクルート)
無料で利用でき、求人作成や応募者管理などの基本機能を備えています。有料オプションを利用することでIndeed PLUSへ求人を出稿でき、求人内容などに応じて連携求人サイトに掲載される可能性があります。
ジョブメドレー・ナースではたらこ・カイゴジョブなど医療介護専門媒体との自動連携については公式情報で確認できないため、取り込み方法は導入前にリクルート社に確認することを推奨します。ハローワーク経由の応募者の取り込み方法についても同様です。
HRMOS採用(ビズリーチ)
HRMOS採用は、応募者管理やエージェント管理などの機能を備えています。複数の人材紹介会社を利用する法人では候補の一つになります。ジョブメドレー・カイゴジョブなどからの応募者情報の自動取り込みに対応しますが(一部は有料オプション・要確認)、医療・介護・福祉・保育の専門サービスとの連携範囲は導入前に確認が必要です。
本記事で取り上げたATSの比較表
2026年7月15日時点の公式公開情報に基づく比較です。「連携」には、求人情報の掲載、応募者情報の取り込み、選考ステータスの同期など複数の意味があります。本表では、公開情報で確認できた連携範囲を具体的に記載しています。契約プランや提供条件が変更される可能性があるため、導入時には各社への確認が必要です。
ツール | 費用 | ジョブメドレー連携 | その他専門媒体 | 人材紹介対応 |
ジョブメドレーATS | 通常料金は公式公開ページで確認できません。ジョブメドレーを利用中で、2026年3月25日〜12月31日に新規申込をした事業所は、審査等の条件付きでATS利用料が2026年12月31日まで無料です。 | 双方向に近い自動連携。ジョブメドレー経由の応募者情報が自動登録され、ATS上の選考ステータスもジョブメドレー側へ自動反映されます。ただし「採用の報告」は自動連携の対象外です。 | 自社採用サイトや他の求人サイトからの応募情報・選考進捗を一括管理でき、情報の転記・集約や重複応募の確認を自動化するとしています。ただし、具体的な対応媒体名や取込方式は公開されていません。 | 人材紹介経由の候補者も一括管理可能。異なる経路からの重複応募の自動検知にも対応します。紹介会社向けアカウント、推薦画面、実績管理などの詳細仕様は公開情報では確認できません。 |
Airワーク 採用管理 | 基本機能は0円。Indeed PLUSは有料オプションで、公式料金ページでは3,000円から利用できるクリック課金型とされています。 | ジョブメドレーとの直接・自動連携は公式機能一覧では確認できません。他メディアからの応募者情報を手動登録する機能はあります。 | Indeed PLUSを利用すると、Indeedが選定した連携求人サイトへ求人が自動掲載され、そこからの応募者を一元管理できます。それ以外の媒体からの応募者は手動登録できますが、複数の外部求人媒体から応募者を自動取り込みする機能は公式には案内されていません。 | 外部経路の応募者を手動登録して管理できます。ただし、紹介会社への求人一括共有、紹介会社による候補者推薦、紹介会社別実績管理などの人材紹介専用機能は公開機能一覧では確認できません。 |
HRMOS採用 | 初期費用は0円。Lite・Standard・Enterpriseの3プランがあり、契約期間は12カ月です。年間利用料金はWeb上に金額が掲載されておらず、料金表の請求または見積もりが必要です。 | 公式発表上、ジョブメドレーから応募者情報を自動取り込み可能です。2022年の発表では有料オプションとされています。現行の公式FAQには追加前の古い媒体一覧も残っているため、現在の提供条件・料金は契約前に再確認が必要です。 | 2023年の公式発表では、カイゴジョブ・Forkwell・paiza転職・バイトル・YOUTRUSTなどからの応募者情報自動取り込みに対応しています。一部媒体は有料オプションです。現在の対応媒体一覧と料金条件は要確認です。 | エージェント向け管理画面とエージェント管理機能があります。複数エージェントへの求人一括紹介、エージェント別実績の閲覧、ラベル管理、メール履歴管理に加え、エージェント側からの候補者推薦にも対応します。 |
導入後に失敗しない運用ルール
ATSが定着しない要因には、製品の機能だけでなく、導入後の運用設計もあります。導入前に次の点を決めておくことが重要です。
選考ステータスの定義を統一する
「書類選考中」「面接調整中」「内定」などのステータスを、担当者間で言葉の定義を揃えておかないと、入力がバラバラになります。ATSを入れる前に、自施設の選考ステップを一度書き出すことを推奨します。複数施設がある場合は、施設間で統一するか分けるかも決めておく必要があります。
更新責任者と更新タイミングを決める
誰がいつ応募者情報を更新するかが決まっていないと、ATSとExcelの二重管理が続きます。「応募があった当日中にATSに登録する」「面接後24時間以内に結果を入力する」など、更新のルールを運用開始前に明確にしてください。
閲覧・編集権限を適切に設定する
権限を広く設定しすぎると個人情報の管理に問題が生じます。施設長・採用担当者・現場スタッフそれぞれで閲覧できる範囲を区分することを推奨します。
応募者データの削除ルールを設ける
採用に至らなかった応募者のデータを何年間保持するかを決め、定期的に削除する手順を決めておいてください。個人情報の最小化という観点から重要です。
ATSとExcelの二重管理を終わらせる
導入初期は「念のためExcelにも記録しておこう」という動きが起きがちです。これを続けると、どちらが正のデータか分からなくなります。ATS稼働後にExcelへの記録を止めるタイミングを明確に決めてください。
現場スタッフへの操作説明を実施する
ATSを実際に使うのが施設長や現場主任であれば、管理者だけでなく現場スタッフへの操作説明が必要です。初期設定が終わった後も、使い方が分からないまま放置されるケースがあります。
株式会社プロリクでは医療、介護、福祉企業様向け採用代行をご支援
現在の採用フローや利用媒体の整理から、ATSが必要かどうかの判断まで、採用担当者の方からのご相談をお受けしています。ATSベンダーへの問い合わせ前の情報整理や、既存ツールの運用改善で対応できるかの検討も含めてご相談いただけます。
弊社お問い合わせ窓口
著者について
宮前 貴史(株式会社プロリク )
大学卒業後、個人事業主として約5年半にわたり、BtoC・BtoB領域で営業から企画・運営までを一気通貫で経験。その後、ベンチャー企業にて採用担当として制度設計に従事し、さらにRPOサービスの立ち上げ責任者として、スカウト業務の仕組み化から実践までを牽引。プロリク参画後は、その豊富な実務経験を活かし、ITエンジニアのスカウト業務を中心に複数クライアントの採用成功を支援している
よくある質問
Q. ハローワーク経由の応募者は自動でATSに入りますか?
ハローワーク応募の取り込み方法はATSによって異なります。公開情報で確認できない場合は、自動取り込み・CSV取り込み・手動登録のどれに対応しているかを導入前にベンダーへ確認してください。ジョブメドレーATSとハローワークの連携についても、申し込み前にメドレー社に確認することを推奨します。
Q. 人材紹介会社にもATSを使ってもらえますか?
ATSによっては、人材紹介会社向けのエージェントポータルを提供しているものがあります(HRMOS採用など)。紹介会社がATSに直接候補者情報を登録したり、選考ステータスを確認したりできる機能です。複数の紹介会社を利用している場合は、このポータル機能の有無を選定基準に加えることを推奨します。ジョブメドレーATSのエージェントポータル機能については、導入前に確認が必要です。
Q. 解約時にデータを取り出せますか?
ATS選定時に必ず確認すべき事項です。解約時のデータ出力形式(CSV・Excel等)、出力できるデータの範囲、解約後のデータ保持期間を事前に確認してください。後から別のシステムへ移行する際に、データを引き継げないと過去の選考履歴が失われます。
Q. 既存のExcelデータをATSに移行できますか?
CSV形式での一括インポートに対応するATSもあります。ただし、ExcelとATSでは管理項目が異なるため、移行時にデータの整形が必要になります。データ量や項目数によっては、移行作業に一定の時間がかかることがあります。導入前にサポートの有無と移行手順を確認してください。
Q. スマートフォンだけで運用できますか?
製品によってモバイル対応状況が異なります。施設長が外出中でも応募者情報を確認したいというニーズがある場合は、スマートフォン対応の有無とスマートフォンでできる操作の範囲を確認してください。
Q. 面接録音や文字起こしに応募者の同意は必要ですか?
面接の録音・文字起こしを行う場合は、事前に利用目的や保存期間を説明し、応募者の同意を得る運用が望ましいです。外部AIサービスへの送信や第三者提供に該当する可能性がある場合は、利用規約や個人情報保護法上の取り扱いを個別に確認してください。
Q. ジョブメドレーATSとジョブメドレーは別サービスですか?
別のサービスです。ジョブメドレーは初期費用・月額費用・求人掲載料が無料で、採用決定時に成功報酬が発生する求人媒体です。ジョブメドレーATSはこれとは独立した採用管理システムで、条件を満たす事業所を対象に2026年12月31日まで無料で提供されています。ジョブメドレーの採用時に発生する費用と、ジョブメドレーATSの利用料は別の費用項目です。
Q. 採用代行(RPO)とATSは何が違いますか?
ATSは採用管理を行うシステムツールです。RPO(採用代行)は採用業務の一部または全部を外部事業者に委託するサービスです。情報管理・転記作業・進捗把握が課題ならATSが適しています。候補者対応やスカウト運用を担う人員そのものが不足している場合は、RPOが選択肢になります。両者を組み合わせて使う施設もあります。
参考文献・資料
- 公益財団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査」: https://www.kaigo-center.or.jp/report/2023_chousa_01.html
- 株式会社メドレー「ジョブメドレーATS」リリース情報: https://www.medley.jp/release/ats.html