生成AIの登場をきっかけに、キャリアの再検討または転職活動を始めたITエンジニアは66.9%でした。Findyが2025年6月に605名へ行った調査の数字です。同じ調査で、転職先として「AI活用に積極的な企業」を希望すると答えた人は81.2%でした。
エンジニアが企業のAI活用を見ている、という話はこの2年でよく聞くようになりました。ただ、採用担当者が知りたいのはその次のことです。エンジニアは具体的に何を見ているのか。求人票のどこを直せばいいのか。選考で何を聞けばいいのか。
この記事では、2024年11月から2025年7月にかけて公表された6つの調査を並べて、エンジニアの転職動機がどう変わったかと、採用担当者が今できることを整理します。使ったのはすべて公開されている調査です。出典・実施時期・回答者数を各節に記載します。
なお、エンジニア採用市場の全体像(市場規模、求人数と転職者数の差、この7年間の変化)については、以下の記事で扱っています。
📄 関連記事:エンジニア採用はなぜ難しいのか?市場データと独自調査から見る打ち手【2026年版】
この記事の要点(TL;DR)
- 求めるスキルが変わった: 採用担当者の4割超が「生成AI出現前と比べて求めるスキルが変化した」と回答。重要度が上がったのはコミュニケーション48.3%・プロンプト38.5%、下がったのはプログラミング26.0%(レバテック・2024年11月・IT人材3,000名+企業1,000名)
- エンジニアはすでに転職を検討し始めている: 66.9%が生成AIをきっかけにキャリアの再検討または転職活動を開始、81.2%が転職先に「AI活用に積極的な企業」を希望(Findy・2025年6月・605名)
- 会社が費用を出さない場合、自費で払って使っている: 業務での生成AI利用は91.8%、個人課金は44.6%。課金している人の79.7%は月3,000円以上を払っている(Findy・2025年1〜2月・596名)
- 企業は導入したが、採用要件を変えていない: 98.4%がAIの導入・活用を実施しているのに、選考でAI活用経験を聞いているのは18.1%、採用要件を既に変更したのは11.7%(Findy・2025年2〜3月・188社)
- 信用の差は導入の進め方から生まれている: 企業がAIを従業員全体の利益になる形で使うと信用している労働者は27.7%。ただし導入時に話合いがある企業では55.0%、ない企業では22.7%と2.4倍の差がある(JILPT・2025年5月公表・2.2万人)
- 工数が減っても採用は減らない: コーディング時間の削減実感は50.7%、削減幅は平均で週約8時間。それでも78.3%が「新卒・ジュニア層の採用・育成が不可欠」と回答(paiza・2025年7月・629名/568名)
求めるスキルは、すでに変わっている
採用担当者の4割超が、生成AIの出現前と比べて「エンジニアに求めるスキルが変化した」と答えています。
レバテックが2024年11月22日〜29日に実施した「IT人材白書2025」(企業の採用担当者1,000名・IT人材3,000名、20〜59歳)の結果です。重要度が上がったスキルと下がったスキルは、次のように分かれました。
以前より重要になったスキル | 割合 | 以前ほど重要でなくなったスキル | 割合 |
コミュニケーションスキル | 48.3% | プログラミングスキル | 26.0% |
プロンプトスキル | 38.5% | 資料作成 | 24.6% |
ピープルマネジメント | 29.8% | 予算管理 | 21.6% |
プロンプトスキルとは、生成AIに指示を出して、意図した出力を得る技能のことです。この調査では、プログラミングスキルより高い割合で「重要になった」と答えられています。
企業が見ているのは「実装できるか」ではなく、「何を作るかを決められるか」「AIが出力したものを評価できるか」に変わりました。 コードを書く時間が短くなるほど、その前の工程(何を作るかを決める作業)と、後の工程(出てきたものを確認する作業)が、仕事全体の中で占める時間が長くなります。
ただしこの調査は2024年11月の実施です。生成AIの開発ツールはその後も普及しているため、現在の数字はこれより進んでいる可能性があります。
エンジニアは、生成AIを理由にすでに転職を検討し始めている
生成AIの登場をきっかけにキャリアの再検討または転職活動を始めたエンジニアは66.9%、転職先として「AI活用に積極的な企業」を希望する人は81.2%です。
Findyが2025年6月8日〜18日に、会員のIT/Webエンジニア605名へ行った調査の数字です。同じ調査で、業務で1つ以上のAIツールを使っている人は88.0%、ChatGPTの利用率は68.5%、個人で課金している人は47.1%(平均月5,776円)でした。
Findyが2025年1月28日〜2月7日に、別途596名へ行った調査では、業務での生成AI利用が91.8%、個人課金が44.6%で、課金している人の79.7%は月3,000円以上を払っています。
会社がツールを用意しない場合、エンジニアは自分で費用を払って使っています。2026年現在であれば状況が変わっている可能性もありますが、会社が費用を負担している場合、求人票に記載しておくことも一つですね。
なお、調査対象はいずれもFindy会員です。Findyに登録する属性や志向性そのものに偏りがあるという可能性は否定できませんので、その前提を置きながら結果を見ていただければと思います。
コーディング時間は、週およそ8時間減っている
生成AIでコーディング時間が減ったと実感しているエンジニアは50.7%、削減幅は平均で週約8時間(約0.2人月)です。
paizaが2025年7月3日〜19日に、登録エンジニアへ行った調査(設問により回答者数は629名と568名)の結果です。同じ調査で、実務経験5年未満の71.6%、5年以上の59.4%が「生成AIなしには戻れない」と答えました。経験が浅い人ほど、生成AIを使う度合いが高くなっています。
工数が減った分だけ採用人数を減らすべきなのか。この調査では、逆の回答が出ています。
3年後の採用人数の見通し | 割合 |
変わらない | 46.6% |
増える | 27.5% |
大幅に増える | 3.2% |
「増える」と「大幅に増える」を合わせると30.7%です。同じ調査で、**78.3%が「新卒・ジュニア層の採用・育成が不可欠」**と答えました。
エンジニアは、工数の削減と採用人数の削減を同じこととして見ていません。作業時間が週8時間減ることと、人を採らなくてよくなることは、この調査では別のこととして答えられています。
企業は生成AIを導入したが、採用要件には反映できていない
AIの導入・活用を実施している企業は98.4%あるのに、選考でAI活用経験を聞いている企業は18.1%しかありません。
Findyが2025年2月18日〜3月10日に、採用目的でFindyを利用中の188社へ行った企業調査の結果です。
項目 | 割合 |
AIモデルの開発やツールの導入・活用を実施 | 98.4% |
エンジニア業務の効率化・生産性向上に取り組み中 | 87.8% |
選考で「AI技術やツールの活用経験」を聞いている | 18.1% |
採用要件を既に変更した | 11.7% |
今後採用要件が変わると見込む(既に変更した企業を含む) | 7割超 |
導入は済んでいるのに、採用要件と選考はまだ変わっていません。5社に4社は、選考でAI活用経験を聞いていません。
採用要件を変えるのに必要なのは、求人票の記述と選考の質問を書き直す作業だけです。ツールを買う費用はかかりません。それでも、まだ多くの企業が着手していません。
なお、この調査の対象は、Findyを採用に使っている企業です。エンジニア採用に積極的な企業に偏っているので、日本企業全体では18.1%より低くなります。
候補者の信用を決めるのは「使っているか」ではなく「どう決めたか」
企業がAIを「従業員全体に利益が行き渡る方法で使用する」と信用している労働者は27.7%、信用していないは34.6%です。ただし、新技術の導入時に労働者や労働者代表との話合いがある場合は信用が55.0%、ない場合は22.7%で、2.4倍の差がつきます。
労働政策研究・研修機構(JILPT)が2025年5月に公表した調査シリーズNo.256「AIの職場導入による働き方への影響等に関する調査」(有効回答2.2万人)の結果です。
信用の差を生んでいるのは、AIを導入したかどうかではなく、導入をどう決めたかでした。
同じ調査には、不安についての数字もあります。
- AIを利用している人(1,854名)のうち、利用の前後で不安が「高まった・増加した」と答えた人は32.6%。約3人に1人です。なおこれはAI利用者の中での割合で、労働者2.2万人全体の数字ではありません
- 身近に失職や転職の事例を知っている人では、この割合は6割超まで上がります
- 求職活動に生成AIを使っている労働者は2.3%にとどまります。ただし使っている人(514名)に限れば、71.4%が準備の効率化を、70.0%がより良い仕事探しへの寄与を実感しています
採用広報で「生成AIを全社導入しました」と書いても、それだけでは信用されません。誰が決めたのか、現場の意見をどう聞いたのか、反対意見をどう扱ったのかまで書くと、候補者の受け取り方が変わります。生成AIが組織に与える影響については、以下の記事で扱っています。
📄 関連記事:生成AIは組織文化をどう変えるか?
求人票・スカウト・選考で、何を変えるか
ここまでの5つの調査から、採用担当者がすぐに変えられることは5つあります。
1. AIの使用範囲と、それを誰がどう決めたかを書く JILPTの調査では、導入時に話合いがある企業への信用が55.0%、ない企業が22.7%でした。「全社員にツールを配布」だけでなく、導入を決めた経緯、現場の意見を聞いた過程、使用範囲のルールを誰が定めたかまで書きます。
2. ツール費用の負担を明記する 業務で使う一方、44.6%が個人で課金し、その79.7%が月3,000円以上を払っています(Findy・596名)。会社が負担していても、書かなければ候補者には伝わりません。
3. 削減した時間の使い道を書く コーディング時間は平均で週約8時間減っています(paiza)。その8時間を何に充てられるのか(学習、設計、新技術の検証など)を書いている企業と、書いていない企業では、候補者が受け取る情報量が違います。
4. 選考でAI活用経験を聞く 聞いている企業は18.1%です。「どのツールを使ったか」ではなく「AIが出力したものをどう評価し、どこを直したか」を聞いてください。レバテックの調査でプロンプト38.5%・コミュニケーション48.3%の重要度が上がったことと、聞く内容が一致します。
5. 求めるスキルの記述を書き換える プログラミングスキルの重要度が下がり(26.0%)、コミュニケーション(48.3%)とピープルマネジメント(29.8%)が上がっています。求人票の必須要件が、言語とフレームワークの列挙だけで終わっているなら、そこを書き直します。
スカウト文面の組み立て方については、以下の記事で詳しく扱っています。
📄 関連記事:スカウト返信率を上げる!エンジニア採用のスカウト文章構造
書く内容が決まっても、候補者ごとに文面を変える作業は残ります。送る通数が増えるほど、手作業での書き分けは難しくなります。AIで文面を生成する仕組みと、各サービスの違いは以下の記事で扱っています。
📄 関連記事:AIスカウトとは?仕組み・費用・サービス比較|返信率で選ぶ【2026年版】
注意すべき3点
「生成AIを活用しています」だけでは、他社との違いになりません。 Findy調査の188社のうち98.4%が導入済みです。導入していること自体は、ほぼすべての企業が同じように書けます。
求人票と選考基準は同時に変えてください。 エンジニアの81.2%はAI活用に積極的な企業を希望しています。求人票が従来のままなら、その人たちからの応募は増えません。一方、求人票だけAI活用を強調して選考基準が従来のままだと、入社後に認識の食い違いが起きます。
ジュニアを採らない判断を急がないでください。 エンジニアの78.3%は「新卒・ジュニア層の採用・育成が不可欠」と答えています(paiza)。工数が減ったことを、そのまま採用人数の削減につなげる判断は、この調査結果とは逆になります。
まとめ
6つの調査を実施時期の順に並べると、変化は次の順序で起きています。
- 企業が求めるスキルが変わった(レバテック・2024年11月)
- エンジニアが生成AIを理由に転職を検討し始めた(Findy・2025年1〜6月)
- エンジニアの工数が実際に減った(paiza・2025年7月)
- しかし採用要件と選考は変わっていない(Findy企業調査・18.1%/11.7%)
- 候補者の信用を決めているのは、導入の進め方だった(JILPT・55.0%と22.7%)
4と5は、いま採用担当者がすぐに変えられることです。ツールの導入は各社ほぼ終わっています。まだ差がついているのは、導入した内容を候補者に伝わる形で書けているかどうかです。
ここまでは、生成AIによる変化だけを扱いました。エンジニア採用が難しい理由には、市場規模そのものの小ささや、リモートワークの普及による競合企業の広がりなど、生成AI以外の要因もあります。全体像は以下の記事で扱っています。
📄 関連記事:エンジニア採用はなぜ難しいのか?市場データと独自調査から見る打ち手【2026年版】
採用の各工程でAIをどう使うかについては、以下の記事で全体を扱っています。
📄 関連記事:【完全ガイド】AI採用とは?——採用工程ごとのAI活用と成功の条件
弊社お問い合わせ窓口
株式会社プロリクは、長年のIT人材向け採用代行支援事業及び、そのデータとノウハウをもとに独自AIスカウトプロダクトを開発している会社です。もし、貴社でエンジニア採用やAIを活用した採用業務の効率化についてお悩みがあれば、お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
著者について
宮前 貴史(株式会社プロリク )
大学卒業後、個人事業主として約5年半にわたり、BtoC・BtoB領域で営業から企画・運営までを一気通貫で経験。その後、ベンチャー企業にて採用担当として制度設計に従事し、さらにRPOサービスの立ち上げ責任者として、スカウト業務の仕組み化から実践までを牽引。プロリク参画後は、その豊富な実務経験を活かし、ITエンジニアのスカウト業務を中心に複数クライアントの採用成功を支援している
よくある質問(FAQ)
Q: エンジニアは、企業の生成AI活用をどの程度見ているのですか?
Findyが2025年6月に605名へ行った調査では、81.2%が転職先として「AI活用に積極的な企業」を希望すると答えました。同じ調査で66.9%が、生成AIの登場をきっかけにキャリアの再検討または転職活動を始めています。ただし対象はFindy会員で、転職意欲が相対的に高い人たちです。その点を考慮して読んでください。
Q: 求人票に生成AIのことを書くなら、何から書けばいいですか?
導入の有無より、使用範囲と決め方から書いてください。JILPTの2.2万人調査では、新技術の導入時に労働者や労働者代表との話合いがある企業への信用は55.0%、ない企業は22.7%で、2.4倍の差がありました。「導入しています」は、すでに98.4%の企業が書けることです。
Q: 生成AIで工数が減ったなら、採用人数も減らすべきですか?
エンジニアの回答は逆です。paizaが2025年7月に行った調査では、3年後の採用人数が「変わらない」46.6%、「増える・大幅に増える」が合わせて30.7%でした。同じ調査で78.3%が「新卒・ジュニア層の採用・育成が不可欠」と回答しています。コーディング時間は平均で週約8時間減っていますが、それが採用人数の削減につながるとは見られていません。
Q: 選考で生成AIの活用経験を聞いたほうがいいですか?
聞くことをおすすめします。2025年2〜3月にFindyが188社へ行った調査では、選考でAI技術やツールの活用経験を聞いている企業は18.1%にとどまりました。5社に4社は聞いていないため、聞くだけで候補者から得られる情報が増えます。質問は「どのツールを使ったか」より「AIが出力したものをどう評価し、どこを直したか」が有効です。
Q: エンジニアに求めるスキルは、具体的にどう変わったのですか?
レバテックが2024年11月に企業1,000名・IT人材3,000名へ行った調査では、以前より重要になったスキルはコミュニケーション48.3%、プロンプト38.5%、ピープルマネジメント29.8%でした。逆に以前ほど重要でなくなったとされたのは、プログラミング26.0%、資料作成24.6%、予算管理21.6%です。
Q: 生成AIのツール費用は会社が負担すべきですか?
負担しているなら、求人票に明記してください。Findyが2025年1〜2月に596名へ行った調査では、業務での生成AI利用が91.8%ある一方、個人で課金している人が44.6%おり、そのうち79.7%は月3,000円以上を自分で払っていました。会社の負担は、書かなければ候補者に伝わりません。
Q: エンジニアはAIに仕事を奪われる不安を持っていますか?
JILPTの調査では、AIを利用している人(1,854名)のうち32.6%が、利用の前後で不安が高まった・増加したと答えました。約3人に1人です。身近に失職や転職の事例を知っている人では、6割超まで上がります。なおこれはAI利用者の中での割合で、労働者2.2万人全体の数字ではありません。
Q: これらの調査データは、どの範囲まで一般化できますか?
6つの調査は対象がそれぞれ異なります。レバテックはIT人材3,000名と企業1,000名、Findyは自社サービスの会員と利用企業、paizaは自社登録エンジニア、JILPTは労働者2.2万人です。Findyとpaizaは転職サービスの登録者に偏っており、JILPTは職種を限定せず日本の労働者全体を対象にしています。数値を比べるときは、同じ対象を調べた数字かどうかを先に確認してください。
参考文献、資料
- レバテック「IT人材白書2025」(2024年11月22日〜29日実施・企業1,000名/IT人材3,000名): https://levtech.co.jp/research/2383985 / PDF: https://levtech.jp/files/doc/levtech_research_2025.pdf
- Findy「AI活用の状況や今後のエンジニア採用に与える影響」企業調査(2025年2月18日〜3月10日実施・188社): https://findy.co.jp/2703
- Findy エンジニア調査(2025年1月28日〜2月7日実施・596名): https://findy.co.jp/2679
- Findy エンジニア調査(2025年6月8日〜18日実施・605名): https://findy.co.jp/3038/
- paiza「生成AI時代のエンジニアのスキルアップに関する意識調査(2025年版)」(2025年7月3日〜19日実施・629名/568名): https://www.paiza.co.jp/news/20251105/251105_paiza_generative_ai_investigation_report_3/ / https://www.paiza.co.jp/news/20251117/251117_paiza_generative_ai_investigation_report_5/
- 労働政策研究・研修機構(JILPT)調査シリーズNo.256「AIの職場導入による働き方への影響等に関する調査(労働者Webアンケート)結果」(2025年5月公表・有効回答2.2万人): https://www.jil.go.jp/institute/research/2025/documents/0256_01.pdf