「エンジニアが採れない」——採用担当者からこの言葉を聞かない日はありません。
しかし、「なぜ難しいのか」を市場データに基づいて構造的に理解している企業は多くありません。構造がわかれば、打ち手が変わります。「求人媒体を増やす」「スカウト文面を改善する」といった手法論の前に、まずこの市場がどれほど小さく、どれほど激しい競争環境にあるかを数字で把握するところから始めましょう。
本記事では、公開データの独自分析と1,164名のITエンジニアへの独自調査から、「なぜ難しいのか」「今エンジニアは何を見ているのか」「何をすべきか」を整理します。
この記事の要点(TL;DR)
- 市場規模: IT人材約125万人のうち、自社サービス開発エンジニアの年間転職者数は推定500〜1,000人。そもそも「採りたい層」が極めて少ない
- 2019→2026の構造変化: 生成AIの登場、リモートワーク普及、副業/フリーランス増加、SIer→自社開発への人材流動——7年間で採用競争の前提が変わった
- エンジニアが応募先を選ぶ基準が変わっている: 1,164名への独自調査で、約3割が「企業の生成AI活用状況」を応募判断に考慮。ただし職種によって感度に最大6倍の差がある
- エンジニアが見ているのは「AIを使っているか」ではなく「どう使っているか」: 品質担保の仕組み(19.8%)、効率化した時間の活用文化(19.4%)、ガバナンス体制(17.2%)が上位
- 打ち手: 市場の構造を理解した上で、自社の開発環境・文化を「エンジニアが知りたい情報」として言語化し、採用プロセスに組み込む
エンジニア採用市場の全体像——「採りたい層」は何人いるのか?
エンジニア採用が難しいと感じている方にまず知っていただきたいのは、そもそもの市場規模です。
IT人材の全体像——数字を分解する
「IT人材」と一口に言っても、その中身は多様です。
令和2年(2020年)国勢調査によると、日本の「情報処理・通信に携わる人材」は約125万人です(IPA「DX白書2023」集計)。2015年の約104万人から5年間で約20万人増加しました。このうち約74%がIT企業に、約26%がユーザー企業(IT企業以外の事業会社)に所属しています。
しかし、この「125万人」にはシステムコンサルタント・設計者、その他の情報処理・通信技術者なども含まれています。実際にアプリケーションを開発するエンジニアは、IT企業で52.7%・事業会社で32.6%を占め、全体では約半数程度です(DX白書2023 第4部 デジタル時代の人材)。
「IT人材125万人」という数字を見て、その全員がエンジニアだと思ってはいけません。
層 | 推定人数 | 出典・備考 |
IT人材全体 | 約125万人 | IPA DX白書2023(令和2年国勢調査) |
うちアプリケーション開発者 | 全体の約半数(約68万人) | DX白書2023 第4部 |
自立して開発可能な層 | 十数万人程度 | IPAの定義・推計に基づく参考値 |
自社サービス開発経験者 | 1〜2万人 | 国勢調査+e-Stat推定 |
年間転職者数 | 500〜1,000人 | 転職率約4.8%を適用した推計 |
自社サービス開発エンジニアは実際に何人いるのか
多くのスタートアップや事業会社が採りたいのは、「SIerで受託開発をしてきた人」ではなく「自社サービスの開発経験がある人」です。ここでいう「自社サービス開発エンジニア」とは、自社が運営するプロダクトやサービスの開発に直接携わるエンジニアを指し、SIerやSES(システムエンジニアリングサービス)での受託開発とは区別されます。
総務省の国勢調査とe-Statのデータを用いると、自社サービスを開発するエンジニアが多く所属する業種は「インターネット付随サービス業」と「ソフトウェア業」の一部(SaaS企業等)です。これらの業種でアプリケーション開発に直接従事する就業者は1〜2万人規模にとどまると推定されます(最新の令和2年国勢調査の同条件クロス集計は確認中のため参考値として示します)。
DX推進によるIT内製化でユーザー企業側の開発人材も増えていますが、SIerや事業会社の内製エンジニアを加味しても、「自社サービス開発経験を持つエンジニア」の総数は数万人規模と推定されます。
年間の転職者数はどのくらいか
総務省「労働力調査(詳細集計)」(2025年平均)によれば、転職者数は330万人(前年比-1万人、4年ぶりの減少)で、転職者比率は約4.8%です。
仮にこの転職率を自社サービス開発エンジニアの推定数(1〜2万人)に当てはめると、年間で実際に転職市場に出てくるのは500〜1,000人程度という計算になります。
実際、WantedlyやGreenといったプラットフォームには多くのエンジニアが登録しています。しかし、「登録している」ことと「実際に転職活動をしている」ことは大きく異なります。潜在層の中からアクティブに動く層を見ると、市場は想像以上に小さいのです。
需要側——スタートアップへの資金流入と採用競争の激化
一方、この小さな市場を奪い合う企業側はどうでしょうか。
スピーダ スタートアップ情報リサーチの「Japan Startup Finance 2025」によれば、2025年の国内スタートアップ資金調達総額は7,613億円、調達社数は2,700社です。2024年の2,869社から約6%減少しており、資金が「選別」される傾向が強まっています。とはいえ調達した資金の多くは採用やマーケティングに投じられます。採りたい企業は依然として多く存在する一方、採られる側のエンジニアの数はさほど変わっていない——これがエンジニア採用の構造的な難しさの正体です。
また、IPA「DX動向2025」によれば、DXを推進する人材が不足していると回答した日本企業は85.1%にのぼり、米国(23.8%)・ドイツ(44.6%)を大きく上回りました(国内1,535社対象)。転職市場の逼迫も顕著で、生成AI導入が進んだ現在にあっても、dodaの転職求人倍率ではエンジニア(IT・通信)は10倍を超える水準で推移しています(2025年)。さらに経済産業省の試算では、IT人材は2030年に最大約79万人不足するとされており(2019年公表)、需要が供給を上回る構造は一定程度維持されるようにも見えます。
特に、企業規模31〜100名程度のシリーズA〜Bのスタートアップでは人材不足感が最も強い傾向があります。メガベンチャーはブランド力と待遇で人材を集められますが、知名度がまだ高くない成長フェーズの企業ほど、採用競争で不利な立場に置かれます。
需給ギャップの結論
ここまでのデータを整理すると、エンジニア採用の難しさは手法の問題ではなく、市場構造の問題であることがわかります。
- 供給: 自社サービス開発エンジニアの年間転職者数は推定500〜1,000人
- 需要: 2,700社超のスタートアップに加え、DX推進中の事業会社がこの層を奪い合っている
この需給ギャップを理解した上で、「どうすればこの小さな市場の中から自社に合う人材にリーチできるか」を考える必要があります。求人広告を出して待つだけでは、構造的に成立しない市場なのです。
2026年で何が変わったか——4つの構造変化
エンジニア採用市場の需給ギャップは弊社が創業する2020年前後から常に存在していました。しかし、近年市場の前提そのものが大きく変わっています。
- 生成AIの登場 — 「コードを書ける」だけでは差別化できない時代に
- リモートワーク普及 — 採用競合が全国・グローバルに拡大
- 副業・フリーランス増加 — 正社員転職だけが選択肢ではなくなった
- SIer→自社開発への人材流動 — DX内製化が加速
1. 生成AIの登場——「必要なエンジニア像」が変わりつつある
2022年末のChatGPT登場以降、AIコーディングツールが急速に普及しました。GitHub Copilotの有料サブスクライバーは470万人(2026年1月時点、前年比75%増)に達し、Cursor(AIコードエディタ)のARRは20億ドルを突破しています(2026年3月時点)。もはや「一部の先進的なエンジニアが試している」段階ではなく、開発現場のインフラになりつつあります。
この変化は採用に2つの影響を与えています。
1つは、「コードを書ける」だけでは差別化できなくなりつつあるということです。定型的な実装はAIが支援できる時代において、企業がエンジニアに求めるのは設計力、問題定義力、AIの出力を評価・修正できる判断力へとシフトしています。
もう1つは、エンジニア側も「この会社はAIをどう活用しているか」を見ているということです。これについては後述の独自調査で詳しく触れます。生成AIが組織文化に与える影響については「生成AIは組織文化をどう変えるか?」で詳しく解説しています。
2. リモートワークの普及——採用競合が全国・グローバルに
コロナ禍を経て、エンジニア職のリモートワークは定着しました。フルリモートを掲げる企業が増えたことで、エンジニアは地理的制約なく就職先を選べるようになりました。逆に言えば、採用する企業側は全国——場合によっては海外の企業とも人材を奪い合う時代になっています。
「オフィス出社 or フルリモート」は、今やエンジニアが応募先を選ぶ際の最初のフィルターの一つです。
3. 副業・フリーランスの増加——「正社員転職」だけが選択肢ではなくなった
副業解禁の流れとフリーランスエージェントの台頭により、エンジニアの働き方の選択肢が広がりました。「本業を続けながら副業で別の会社に関わる」「フリーランスとして複数の案件を掛け持ちする」という選択も一般化しています。
これは採用側にとって、転職率だけでは市場の動きを測れなくなったことを意味します。正社員転職以外のエントリーポイント——副業やフリーランスからの関わりを含めた採用チャネル設計が必要です。
4. SIer→自社開発への人材流動——DX需要が加速させた構造変化
DX推進により、事業会社がIT組織を内製化する動きが加速しました。それに伴い、SIerで経験を積んだエンジニアが事業会社やスタートアップに転職するケースが増えています。
ただし、SIer出身者と自社サービス開発経験者では、求められるスキルセットや働き方が異なります。ウォーターフォール型の開発プロセスに慣れたエンジニアが、アジャイル型の自社開発チームにすぐフィットするとは限りません。受け入れ体制(オンボーディング)の設計も採用戦略の一部として考える必要があります。
エンジニアは企業の何を見ているか——独自調査の示唆
市場の構造と変化を見てきました。では、当のエンジニアたちは転職先をどのような基準で選んでいるのでしょうか。
調査概要
- 調査主体: 株式会社プロリク
- 調査時期: 2025年
- 対象・方法: ITエンジニア1,164名へのオンラインアンケート
- 対象職種: バックエンド・フロントエンド・モバイル・インフラ/クラウド・AI/ML・データエンジニア・マネジメント系等
約3割が「企業の生成AI活用状況」を応募判断に考慮
求人企業が生成AIを用いた開発プロセスを持っているかどうかが応募判断に影響するかを尋ねたところ、「影響がある」「強く影響がある」と回答したエンジニアは合わせて約3割にのぼりました。
一方で「どちらとも言えない」が約半数を占めており、生成AI活用の有無が応募基準として全エンジニアに定着しているわけではありません。ただし、この「約3割」という数字は無視できません。年間500〜1,000人しか動かない市場で、そのうちの3割が「AIの活用状況を見ている」ならば、自社のAI活用方針を発信しない企業は候補者プールをさらに狭めている可能性があります。
エンジニアが抱えるAI活用への懸念
同調査では、生成AI活用に対するエンジニアの懸念も浮き彫りになりました。全体で最も多かったのは「機密情報や個人データが外部に漏れるリスク」(16.2%)、次いで「生成物の品質・セキュリティが担保できない」(14.4%)です。
職種によっても懸念の内容は異なります。開発エンジニアは「品質・セキュリティの担保」(15.9%)と「企業や上司との間の認識ズレ」(13.8%)を懸念しています。データ活用系は「AIに依存してスキルが陳腐化する不安」(17.7%)が上位に入り、インフラ・クラウド系は「倫理的な問題」(11.3%)にも敏感です。マネジメント層は「社内ポリシーやガバナンスが整備されていない」(13.5%)を最も懸念しています。
これらの懸念に対して「うちはこう対処している」と具体的に示せる企業は、エンジニアにとって大きな安心材料になります。
職種によって感度に最大6倍の差がある
「影響がある」「強く影響がある」を合わせた割合が特に高かったのは、AI/MLエンジニア(約5割)、モバイルアプリエンジニア(約4.5割)、データエンジニア(約4割)といった職種です。
一方、SRE(約1.5割)や運用・保守系(約1.5割)の職種では、相対的に影響を受けにくい傾向が見られました。AI/MLエンジニアとSREの間には最大で約6倍の差があります。
「全エンジニアに同じ訴求をする」のではなく、採用したい職種に合わせてメッセージを変える必要があるということです。
エンジニアが見ているのは「ツール導入」ではなく「仕組みと文化」
では、生成AIの活用状況が応募判断に影響すると答えたエンジニアは、具体的に何を見ているのでしょうか。
同調査で最も多く選ばれた回答は、「AIが生成したコードや設計案に対する品質担保の仕組みが確立されていること」(約2割)でした。続いて「効率化された時間を創造的な業務や新技術の習得に充てることが推奨される文化があること」がほぼ同率で選ばれています。さらに「セキュリティ・倫理ガイドラインが明確であること」「AIツールの導入において現場エンジニアの意見が尊重されること」が上位に並びました。
そして職種によって重視するポイントが明確に異なることも判明しています。
職種カテゴリ | 最も重視するポイント | 割合 |
データ活用系(AI/ML、データエンジニア) | キャリアパス・成長機会 / 独自モデル・RAGの研究開発 | 26.5% / 24.5% |
開発エンジニア(バックエンド、フロントエンド) | 品質担保の仕組み(レビュー体制等) | 25.0% |
インフラ・クラウド系 | 経営層のリーダーシップ / ガバナンス体制 | 各18.6% |
マネジメント・管理系 | 学習支援制度 / 経営層のリーダーシップ | 22.5% / 20.0% |
エンジニアが見ているのは「最新のAIツールを導入しているかどうか」という表面的な事実ではなく、「品質担保の仕組み」「時間の使い方の文化」「ガバナンス体制」「現場の意見が通る風通し」という、もっと深い部分です。
「AIを使っています」は差別化になりません。どう使い、その結果エンジニアの働き方がどう変わるかを、職種ごとに「その人が知りたい粒度」で示せるかどうかが、候補者を惹きつけるかどうかの分かれ目です。
では何をすべきか——独自調査から導く2つの打ち手
市場の構造、7年間の変化、エンジニアの選好——ここまでの分析から導かれる打ち手は、突き詰めると2つです。
- 開発環境・文化の言語化 — エンジニアが知りたい情報を求人票・スカウト文面に反映する
- 職種別アプローチ — 採りたい職種に合わせてメッセージを出し分ける
この2つは、市場が極めて小さいという前提と、本記事の独自調査からしか導けない打ち手です。チャネル設計・選考体験・外部活用といった実行面は、それぞれ専用記事に譲り、最後に要点だけ示します。
打ち手1: 自社の開発環境・文化を「エンジニアが知りたい形」で言語化する
エンジニアが応募前に知りたい情報は「使用技術」だけではありません。以下のような情報を、求人票・採用ページ・スカウト文面に含めることを推奨します。
- 生成AIの活用方針と具体的な導入状況
- AIが生成したコードに対する品質担保の仕組み(コードレビュー体制等)
- 効率化した時間の活用方針(学習時間の確保、新技術の検証等)
- セキュリティ・倫理に関するガイドライン
- 技術選定やツール導入における意思決定プロセス(トップダウン or ボトムアップ)
- キャリアパスの具体像
これらを「書いている企業」と「書いていない企業」では、同じ待遇でもスカウトの返信率に差が出ます。スカウト文面の構造については「スカウト返信率を上げる文章構造」も参考にしてください。
打ち手2: 職種別にアプローチを変える
調査が示すように、職種によってAI活用への感度も、応募判断で重視するポイントも大きく異なります。
データ活用系(AI/ML、データエンジニア)を採りたいなら:
- キャリアパスと成長機会を具体的に示す(26.5%が最重視)
- 独自モデルやRAGの研究開発への関わりを訴求する(24.5%)
- 技術ブログで品質担保の工夫やデータパイプラインの設計思想を発信する
開発エンジニア(バックエンド・フロントエンド)を採りたいなら:
- AI生成コードに対するレビュー体制・品質担保の仕組みを具体的に示す(25.0%が最重視)
- 効率化した時間をどう使えるか(学習時間の確保、新技術検証等)の文化を伝える
- 面接で現場の具体的なルール・運用を語れるエンジニアを面接官に据える
インフラ・クラウド系を採りたいなら:
- 経営層のAI活用へのリーダーシップとガバナンス体制を前面に出す(各18.6%)
- CTOやCISOが「AI活用で想定するリスクと対策」をテーマに発信する
- インシデント発生時のエスカレーションフローなど、具体的な運用ルールを説明する
マネジメント・管理系を採りたいなら:
- 学習支援制度(研修予算、ツール導入予算)を具体的な金額で提示する(22.5%が最重視)
- 「AI推進のワーキンググループをリードしてほしい」等の組織的ミッションを提示する
言語化した強みを、実行に乗せる
ここまでの2つを実際の採用成果に変えるには、実行面で3つの押さえどころがあります。
- 採用チャネルは「待ち」から「攻め」へ — 年間500〜1,000人しか動かない市場で、求人広告を出して待つだけでは構造的に成立しません。潜在層にも届くダイレクトリクルーティングを軸に据え、副業・業務委託からの関わりも入口に含めると、アプローチ可能な層が広がります。
- 選考プロセス自体がエンジニア体験 — 書類選考から面接設定までのスピード、技術的に深い議論ができる面接官の質、応募ハードルを下げるカジュアル面談——この3点が志望度を左右します。
- 工数が回らないなら仕組みで解決 — 1名採用に数百通のスカウトが必要なことも珍しくなく、候補者のスキル評価には技術理解も要ります。オペレーションを専門チームに委ね、社内は戦略設計とクロージングに集中する分業も選択肢です。
📄 関連記事:RPO(採用代行)完全ガイド
まとめ
エンジニア採用の難しさは、スカウト文面や求人媒体の問題ではありません。年間500〜1,000人規模の転職市場を、2,700社超のスタートアップと事業会社が奪い合っているという構造的な問題です。
その構造を理解した上で、今この瞬間にエンジニアが「企業に何を求めているか」を把握し、自社の開発環境と文化を正しく言語化して届ける。市場が小さいからこそ、一つひとつのアプローチの質が結果を左右します。
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著者について
宮前 貴史(株式会社プロリク )
大学卒業後、個人事業主として約5年半にわたり、BtoC・BtoB領域で営業から企画・運営までを一気通貫で経験。その後、ベンチャー企業にて採用担当として制度設計に従事し、さらにRPOサービスの立ち上げ責任者として、スカウト業務の仕組み化から実践までを牽引。プロリク参画後は、その豊富な実務経験を活かし、ITエンジニアのスカウト業務を中心に複数クライアントの採用成功を支援している
よくある質問
Q. エンジニア採用にはどのくらいの期間がかかりますか?
一般的な目安は3〜6ヶ月です。経験者採用では候補者の転職活動ペースに左右されるため、短期間での採用は難易度が上がります。「来月までに1名」ではなく、「3ヶ月かけて良い人を見つける」という時間軸で計画することを推奨します。
Q. 自社サービス開発エンジニアの年間転職者数はどのくらいですか?
推定500〜1,000人です。IT人材約125万人のうち、自社サービス開発経験を持つエンジニアは1〜2万人規模と推定されます。ここに転職率約4.8%(総務省 労働力調査 2025年平均)を掛けると、年間で実際に転職市場に出てくるのはこの規模になります。
Q. エンジニアは転職先を選ぶ際に何を最も重視していますか?
1,164名への独自調査では、職種によって大きく異なることが判明しました。データ活用系(AI/ML、データエンジニア)はキャリアパスと成長機会(26.5%)、開発エンジニアは品質担保の仕組み(25.0%)、インフラ・クラウド系は経営層のリーダーシップとガバナンス体制(各18.6%)、マネジメント系は学習支援制度(22.5%)を最も重視しています。
Q. エンジニアは企業の生成AI活用をどの程度見ていますか?
約3割のエンジニアが「企業の生成AI活用状況」を応募判断に考慮すると回答しています。ただし職種間で最大6倍の差があり、AI/MLエンジニアでは約5割、SREや運用・保守系では約1.5割にとどまります。
Q. エンジニアが生成AIの業務活用で最も懸念していることは?
全体では「機密情報や個人データが外部に漏れるリスク」(16.2%)が最多で、次いで「生成物の品質・セキュリティが担保できない」(14.4%)です。職種により、開発エンジニアは品質・セキュリティ、データ活用系はスキル陳腐化、インフラ系は倫理的問題、マネジメント層はガバナンス未整備をそれぞれ強く懸念しています。
Q. AI/MLエンジニアとインフラエンジニアで採用アプローチはどう変えるべきですか?
AI/MLエンジニアにはキャリアパスと独自モデル・RAGの研究開発への関与を訴求すべきです(26.5%、24.5%が最重視)。インフラエンジニアには経営層のAI活用へのリーダーシップとガバナンス体制を前面に出す必要があります(各18.6%)。同じ「エンジニア」でも、職種によって応募判断の基準は大きく異なります。
Q. 未経験エンジニアの採用は選択肢になりますか?
なりえます。ただし、教育体制と時間の投資が前提です。即戦力が必要な場合は経験者採用が中心になりますが、中長期的な視点で育成コストを投資と捉えられる企業にとっては、ポテンシャル層へのアプローチを広げる有効な手段です。
Q. SIer出身者を自社開発チームに迎えるときの注意点は?
最も重要なのはオンボーディングの設計です。SIerと自社開発では、開発プロセス(ウォーターフォール vs アジャイル)、意思決定のスピード、ドキュメンテーション文化が異なります。最初の3ヶ月間のキャッチアップ期間を計画に組み込み、メンター制度の導入も検討してください。
Q. エンジニア向けの求人票で必ず書くべき項目は?
使用技術(言語・フレームワーク・インフラ)、開発チームの規模と構成、開発プロセス(スクラム等)、リモートワークの可否、技術選定への関与度合い、学習支援の有無は必須です。加えて、生成AIの活用方針やキャリアパスの具体像を記載することで、他社の求人票との差別化が図れます。
Q. エンジニア採用でスカウトの返信率を上げるには?
本記事の調査が示すように、「使用技術」だけでなく、AI活用の品質担保の仕組みや効率化した時間の活用文化を具体的に書くことが重要です。全候補者に同じ文面を送るのではなく、採りたい職種ごとに「その人が知りたい情報」を盛り込んでください。詳しくは「スカウト返信率を上げる文章構造」をご覧ください。
参考文献、資料
- IPA 独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」(IT人材総数 約125万人、令和2年国勢調査ベース): https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/index.html
- DX白書2023 第4部 デジタル時代の人材 : https://www.ipa.go.jp/publish/wp-dx/gmcbt8000000botk-att/000108046.pdf
- IPA 独立行政法人情報処理推進機構「DX動向2025」(日本企業の85.1%でDX人材不足、米国23.8%・ドイツ44.6%との比較、国内1,535社対象): https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/dx-trend-2025.html
- 総務省「労働力調査(詳細集計)2025年(令和7年)平均結果」(転職者数330万人・転職者比率4.8%): https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukei04_01000292.html
- スピーダ スタートアップ情報リサーチ「Japan Startup Finance 2025」(国内スタートアップ調達額7,613億円・調達社数2,700社): https://initial.inc/articles/japan-startup-finance-2025
- 経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2030年に最大約79万人不足の試算、2019年公表): https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/gaiyou.pdf
- doda「転職求人倍率レポート」(エンジニア職の求人倍率10倍超、2025年): https://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/data/