候補者が生成AIに「A社とB社を比べて」と質問したとき、両社の採用サイトに具体的な仕事内容や待遇が書かれていれば、比較するための材料になります。一方、「風通しが良い」「成長できる環境」といった表現だけでは、どの会社にも当てはまり、違いが分かりにくくなります。
株式会社GIGが2026年7〜8月に行った調査では、AIで企業情報を調べた中途候補者の55.6%が、回答を確かめるために公式サイトや採用サイトを調べていました。候補者が生成AIを使って企業を調べる場合でも、企業が公開する採用情報は重要な確認先になります。
では、企業は採用広報で何を伝えればよいのでしょうか。
この記事では、採用広報の意味と求人広告・採用ブランディングとの違いを整理したうえで、候補者が比較しやすい採用コンテンツの作り方を解説します。記事テーマの決め方、現場からの情報収集、公開後の更新・確認方法まで紹介します。
💡この記事の要点(TL;DR)
- 採用広報は、候補者が応募先や入社先を判断できるよう、自社の情報を継続的に発信する活動です。 求人広告が募集中の職種や条件を知らせるのに対し、採用広報は事業・仕事内容・働き方・社員の情報などを伝えます。
- 生成AIによる企業研究も、候補者の情報収集手段の一つになっています。 Iteraの2026年8月の調査では、過去1年以内に転職活動をした880名の26.02%が、生成AIに質問して企業情報を集めていました。
- 候補者が応募の判断材料に挙げる上位は、働き方の実態とチームの様子です。 GIGの2026年の調査(35歳以下の中途118名)では、働き方の実態(残業・休日・リモートなど)が46.6%、一緒に働く人・チームの様子が43.2%でした。信頼できると感じる情報には、定着率・残業時間などの実際の数字(36.4%)が挙がっています。
- 採用コンテンツを作る際には4つのポイントがあります。 具体的な事実を書く、文字で読めるようにする、情報を探しやすくまとめる、公開先によって内容を揃えることです。
- 記事のテーマは、候補者が知りたいことから考えます。 面接、仕事内容、働き方、評価制度、給与など、応募・入社の判断に必要な情報を整理し、足りない内容から制作します。
- 採用広報は、記事を公開して終わりではありません。 現場と事実を確認して制作し、制度・待遇・組織の変更に応じて更新します。生成AIが自社をどう紹介しているかも定期的に確かめます。
採用広報とは、候補者が応募・入社を判断するための情報を発信する活動
採用広報とは、候補者に向けて自社の事業・仕事内容・働き方・社員などの情報を継続的に発信し、応募や入社の判断に役立ててもらう活動です。
主な発信先には、採用サイト、社員インタビュー、技術ブログ、採用ピッチ資料、SNSなどがあります。
求人広告や採用ブランディングと似ていますが、それぞれ目的と役割が異なります。
活動 | 何をするか | 取り組む期間 | 主な手段 |
求人広告 | 募集中の職種や応募条件を求職者に知らせる | 募集期間を中心に実施 | 求人媒体、求人広告 |
採用広報 | 自社の事業・仕事内容・働き方・社員の情報を継続的に発信する | 募集の有無にかかわらず継続 | 採用サイト、社員インタビュー、採用ピッチ資料、SNS |
採用ブランディング | 自社で働く魅力や他社との違いを明確にし、候補者に一貫したイメージを形成する | 中長期的に取り組む | 採用広報、採用サイト、選考体験、社員の発信など |
採用広報は、採用ブランディングを実現する手段の一つです。自社で働く魅力や特徴を整理し、仕事内容や社員の声などの具体的な情報として伝えます。
求人広告は募集期間を中心に掲載されることが多い一方、採用広報の記事は募集が終わっても公開し続けられます。継続して情報を蓄積できる点も、採用広報の特徴です。
変化する採用広報。2026年現在における採用広報とは
2026年、転職候補者は、転職活動に生成AIを使うことが決して珍しくない状況
候補者が企業について調べる手段は、求人媒体や口コミサイトだけではなくなっています。
株式会社Iteraが2026年8月に行った調査では、過去1年以内に転職活動をした880名のうち、26.02%が生成AIに質問して企業情報を集めていました。企業の公式サイトを確認した人は34.32%、口コミサイトを利用した人は12.50%でした。
同じ調査で、生成AIまたはGoogle検索上部のAI要約を使って企業情報を調べた314名に質問したところ、「事業内容・評判」が59.24%、「年収・待遇の相場」が53.82%でした。評判と相場を除くと、こうした項目は、企業が採用サイトや記事で直接説明できる情報です。
また、マイナビの「転職動向調査2026年版」(2025年に転職した正社員1,446名)では、応募先企業の選定で生成AIの提案が「影響した」と答えた人が26.8%、入社先企業の決定では33.6%でした。応募先の選定で生成AIを「使っていない」人は38.5%です。
「影響した」と答えた人の割合は、性別・年代と職種によって違います。
回答者 | n | 応募先企業の選定 | 入社先企業の決定 |
全体 | 1,446 | 26.8% | 33.6% |
男性20代 | 254 | 34.6% | 50.4% |
男性30代 | 323 | 30.7% | 40.6% |
男性40代 | 275 | 30.5% | 30.2% |
男性50代 | 141 | 17.0% | 17.7% |
女性20代 | 191 | 18.3% | 29.8% |
女性30代 | 102 | 25.5% | 28.4% |
女性40代 | 117 | 20.5% | 23.1% |
女性50代 | 43 | 18.6% | 14.0% |
営業 | 203 | 30.5% | 41.9% |
クリエイター・エンジニア | 218 | 33.5% | 43.1% |
企画・経営・管理・事務 | 369 | 26.6% | 35.5% |
サービス職 | 368 | 23.9% | 25.5% |
技能工・建築・土木 | 166 | 22.9% | 28.3% |
コンサルタント・専門職 | 85 | 25.9% | 34.1% |
※「影響した」は「とても影響した」と「まあ影響した」の合計です。分母は、生成AIを使っていない人を含む各層の回答者数です。職種は回答時点の職種です。出典:マイナビ「転職動向調査2026年版(2025年実績)」Q19
入社先企業の決定で「影響した」と答えた人は、男性20代で50.4%、男性50代で17.7%でした。職種では、クリエイター・エンジニアが43.1%、営業が41.9%で、全体の33.6%を上回っています。
転職候補者の変化については、以下の記事で詳しく記載しています。よろしければご覧ください。
📄 関連記事:転職者の何割が生成AIで企業を調べているか|採用広報のAI対応、日本と海外の調査と支援サービス
転職候補者の実態を踏まえた採用広報を考える
採用には、候補者体験(CX:Candidate Experience)という言葉があります。企業を知ってから応募・選考・入社に至るまで、候補者が企業との接点で得る体験を指しますね。
これまで見てきたように、候補者は企業と直接話す前に、生成AIへ質問し、複数社を比較することがあります。このような候補者の実態を踏まえると、CXの一部に生成AIが加わっていると言い換えることが出来ます。生成AIを使って企業情報を集め、比較し、応募先や入社先を判断するまでの体験に着目して、「候補者AI体験(CAX:Candidate AI Experience)」と表現できるかもしれません。
2026年の採用広報は、この「候補者AI体験(CAX:Candidate AI Experience)」を意識した作りにする必要があるのではないか、というのが本記事の主張です。
これまでの採用広報と、候補者AI体験を意識した採用広報の違いは次のとおりです。
項目 | これまでの採用広報 | 候補者AI体験を意識した採用広報 |
誰に向けたものか | 人間 | 候補者本人(人間)のみならず、候補者が企業を調べるときに使う生成AI |
書き方 | 「風通しが良い」「成長できる環境」など、魅力を伝える言葉 | 残業時間、チームの人数、どこまで本人が決められるかなど、訴求したいことを抽象的な言葉だけでなく、客観的に他社と比較できるようにするための情報を記載 |
情報の形式 | 画像の採用資料、動画だけの説明 | 本文の文字、動画の文字起こし(AIが読みにくいコンテンツは避ける) |
情報の置き場所 | 採用サイト、記事、SNSに散らばっている | 仕事内容・働き方・評価制度などの項目ごとに、一覧ページにまとめる |
記述の揃え方 | 求人票と採用サイトを別々に作る | 求人票・採用サイト・面談資料で給与や残業時間を揃え、集計時点を書く |
テーマの決め方 | 企業が伝えたいことから決める | 候補者が転職の段階ごとに重視する情報(給与・待遇、働き方など)と、生成AIに聞く質問(面接の準備70%、働く実態54%など)などを参考にして決める |
公開後の運用 | 掲載して終わり | 生成AIが自社をどう紹介しているかを定期的に記録し、誤りを直す |
これまでの採用広報は、候補者が採用サイトや求人票を自分で読むことを前提に作られてきました。候補者AI体験を意識した採用広報では、候補者が生成AIに「A社とB社の残業時間を比べて」と聞いたときに、生成AIが自社のページから答えを読み取れるように作ります。残業時間や人数を文字で書いた情報は、候補者本人が読んでも他社と比べやすくなります。
生成AIが参照・比較しやすい採用コンテンツの4つのポイント
それではどのような採用コンテンツを作るべきなのか、より具体的な議論を進めていきたいと思います。
採用コンテンツを作る際は、候補者にとって分かりやすいことを第一に考えます。そのうえで、生成AIを使った情報収集でも内容を確認しやすくするため、次の4つを意識します。
ポイント | 比較に使いにくい書き方 | 比較に使いやすい書き方 |
1. 具体的な事実を書く | 「風通しが良い」「裁量が大きい」 | 「1チーム5〜7名。週1回、チームで次の四半期の優先順位を決める」 |
2. 文字として確認できる | 画像だけの採用資料、動画だけの説明 | 本文で説明したWebページ、動画の文字起こし |
3. 情報を探しやすくまとめる | 社員インタビューや制度の説明が複数の場所に散らばっている | 採用記事の一覧と各記事の概要をまとめたページ |
4. 公開先で記述を揃える | 求人票と採用サイトで待遇や残業時間の説明が違う | 給与、勤務地、残業時間、評価制度などの情報を統一する |
※表中のチーム人数や会議頻度は、説明のための架空の例です。
ポイント1:抽象的な魅力ではなく、具体的な事実を書く
「風通しが良い職場」「成長できる環境」といった表現は、会社の魅力を伝えるためによく使われます。しかし、それだけでは候補者が他社と比較できません。
例えば「裁量が大きい」と伝えるなら、どのような仕事を本人が決められるのか、どの段階で上司の承認が必要なのかまで説明します。
「働きやすい」と伝えるなら、残業時間、出社・リモート勤務の割合、休暇制度の利用実態などを示します。
株式会社GIGの調査では、中途候補者が応募の判断材料として挙げた情報の上位は、働き方の実態(残業・休日・リモートなど)46.6%、一緒に働く人・チームの様子43.2%でした。
また、信頼できると感じる情報として、社員インタビューに登場する社員の写真43.2%、定着率や残業時間などの実数36.4%が挙げられています。
これらの情報も、単に数字や写真を載せればよいという意味ではありません。仕事内容や職場の状況を、候補者が具体的に理解できるように伝えることが重要です。
ポイント2:画像だけでなく、文字でも説明する
画像やPDFで伝えている情報は、同じ内容を本文にも文字で掲載します。
例えば、採用ピッチ資料の中に組織図や評価制度の説明がある場合、画像だけで公開するのではなく、Webページにも主要な情報を文章で掲載します。
動画で社員の仕事を紹介する場合は、概要や文字起こしを用意する方法があります。
文字が画像として埋め込まれた資料や、ログインしないと読めないページは、生成AIの検索機能が内容を取得できない場合があります。
技術面では、サイトのrobots.txtの設定も確認対象です。robots.txtは、検索エンジンなどのクローラーに対して、どのページへのアクセスを許可・制限するかを伝えるためのファイルです。
AIモデルの学習に使うクローラーと、生成AIの検索に使うクローラーは別のものです。
OpenAIでは、GPTBotは主にモデルの学習に関わるクローラー、OAI-SearchBotはChatGPTの検索機能に関わるクローラーです。Google-ExtendedはGoogleの一部AI製品でのモデル学習や、検索情報を利用したグラウンディングなどに関する制御であり、通常のGoogle検索への掲載を直接制御するものではありません。
OpenAIの公式ページによると、OAI-SearchBotをrobots.txtでブロックしたサイトは、ChatGPTの検索の回答に表示されません。GPTBotとOAI-SearchBotは別々に設定できます。採用ページをChatGPTの検索で読ませたい場合は、OAI-SearchBotをブロックしないでください。学習に使われたくない場合は、GPTBotだけをブロックできます。
ポイント3:採用情報を探しやすい場所にまとめる
採用サイト、社員インタビュー、技術ブログ、SNSなど、情報を発信する場所が増えるほど、候補者が必要な情報を見つけにくくなる場合があります。
例えば、リモート勤務について知りたい候補者が、過去の記事を何本も読まないと制度を理解できない状態では、情報を発信していても十分に伝わりません。
採用サイト内に、仕事内容、働き方、評価制度、社員紹介などの項目を整理し、それぞれの記事へ移動できる一覧を用意します。
各記事の内容を短く紹介する概要もあると、候補者は自分が知りたい情報を探しやすくなります。
生成AIに企業情報を調べさせる際も、関連ページを確認するための入口として利用できます。
ポイント4:求人票と採用サイトで記述を揃える
候補者が複数の媒体で同じ会社を調べたとき、給与や勤務条件の説明が食い違っていれば、どちらが正しいのか分かりません。
例えば、求人票に平均残業時間が月20時間と書かれている一方、採用サイトに「残業はほとんどありません」と記載されていれば、候補者は判断に迷います。
生成AIによる企業比較でも、こうした情報の違いが回答に反映される可能性があります。
求人票、採用サイト、求人媒体、カジュアル面談の説明資料などで、給与レンジ、勤務地、勤務形態、評価制度などの記述を確認します。
また、制度や数字は変更されることがあります。最新の情報に揃えるだけでなく、「2026年10月時点」など、集計時点や適用条件も明記しておくと判断しやすくなります。
採用広報の記事テーマは、データを参考に策定する
AIに向けた採用広報で何を書くか迷ったときは、調査データを参考にするのも良いかもしれません。 たとえば、候補者が転職の段階ごとに重視する情報と、候補者が生成AIに聞いている内容の2つの調査を例示します。
まず1つ目は弊社株式会社プロリクが2024年11月にWebエンジニア562名に行った独自調査では、スカウトを受け取ったとき、カジュアル面談の後、内定を受け取ったときの3つの段階で、重視する情報を聞きました。上位の項目は次のとおりです。
段階 | 回答者 | 上位の項目 |
スカウトを受け取ったとき | 496名 | 給与・待遇10.5%、一緒に働く開発メンバーの経歴や価値観9.3%、評価制度9.3%、働き方(フルリモート、残業時間、勤務時間など)8.7% |
カジュアル面談の後 | 478名 | 給与・待遇9.2%、開発での決め方(自分の意見が取り入れられるかなど)8.6%、新しい技術への取り組み8.4%、働き方7.9% |
内定を受け取ったとき | 469名 | 働き方9.4%、給与・待遇8.3%、開発での決め方7.5%、企業の財務基盤・安定性7.5%、上司の経歴や価値観7.0% |
※複数選択可の設問ですが、1項目だけを選んだ人が最も多く(562名中268名)、各項目の割合は高くても10%台です。項目どうし・段階どうしの順位を比べて読みます。回答者は、各段階の設問で1つ以上を選んだ人の数です。
どの段階でも、給与・待遇と働き方が上位に入っていますが、フェーズによって候補者は欲しいと思っている情報に差異があることが分かります。
また、別の調査では、PerceptionX社が2026年5月に行った、日本を含む7か国の求職者調査では、AIにどのような質問をしたかを回答した157名について、次の結果が示されています。
候補者がAIに聞く内容 | 割合 | 対応する採用コンテンツの例 |
面接の準備 | 70% | 選考の流れ、面接の目的、所要時間 |
働く会社としての評判 | 54% | 定着率、評価制度、社員の声 |
働く実態 | 54% | 仕事内容、チーム構成、勤務形態 |
従業員数などの事実 | 45% | 会社概要、組織体制、部署ごとの人数 |
よい企業を探す | 40% | 職種ごとの仕事の特徴、働く環境 |
企業を比較する | 38% | 給与レンジ、勤務地、勤務条件、評価制度 |
この調査は日本の求職者だけを対象にしたものではありません。また、PerceptionX社は企業の評判管理サービスを提供しています。結果は、候補者が確認する情報を考えるための参考として扱う必要があります。
こういった調査の結果を参考にすると、採用広報で扱うテーマには、次のようなものが考えられます。
候補者の疑問 | 記事のテーマ例 | 独自調査(Webエンジニア)で該当する項目 | PerceptionXで該当する質問 |
実際にはどんな仕事をするのか | 職種ごとの仕事内容、1日の業務、入社後に任せる仕事 | 入社した際に任される技術的課題(カジュアル面談の後7.5%) | 働く実態54% |
一緒に働くのはどんな人か | チーム紹介、社員インタビュー、上司との関わり方 | 一緒に働く開発メンバーの経歴や価値観(スカウト9.3%)、上司の経歴や価値観(内定7.0%) | 働く実態54% |
働き方は自分に合うか | 出社・リモート勤務、残業、休日、柔軟な働き方 | 働き方(内定9.4%で1位) | 働く実態54% |
どう評価されるのか | 評価制度、目標設定、昇給・昇格の仕組み | 評価制度(スカウト9.3%) | 働く会社としての評判54% |
選考では何を確認されるのか | 選考フロー、面接の目的、準備しておくこと | 面談者の雰囲気・進め方(カジュアル面談の後7.5%) | 面接の準備70% |
他社との違いは何か | 仕事の進め方、裁量の範囲、組織や制度の特徴 | 給与・待遇(3つの段階すべてで1位か2位) | 企業を比較する38% |
すべての記事を一度に作る必要はありません。現在の採用サイトや求人票を見直し、候補者の疑問に答えられていない項目から優先して制作します。
採用サイトや求人票を見直し、候補者の疑問に答えられていない項目から優先して制作します。
職種によって重視される情報も異なります。ITエンジニアが転職先を選ぶ際の判断材料については、以下の記事で紹介しています。
📄 関連記事:生成AI時代、ITエンジニアは何を見て転職先を選ぶのか|6つの公開調査で見る転職動機と採用要件の変化【2026年版】
採用コンテンツを作る4つの手順
記事のテーマを決めたら、必要な情報を集め、公開できる内容に整理します。
仕事内容や働き方の実態は、採用担当者だけでは把握しきれないことがあります。現場の責任者や社員と協力して、事実確認から公開後の更新まで進めます。
手順 | 行うこと | 確認するポイント |
1. 情報を集める | 現場責任者や社員に仕事内容・働き方・組織の状況を確認する | 実際の業務や制度と一致しているか |
2. 情報を整理する | 候補者が知りたい項目ごとに数字と具体例をまとめる | 抽象的な説明だけになっていないか |
3. 公開前に確認する | 現場や関係部署に内容を確認してもらう | 数字の集計時点、社外公開の可否、求人票との整合性 |
4. 公開後に更新する | 制度・待遇・組織の変更を反映する | 古い情報が残っていないか |
例えば、社員インタビューを制作する場合、本人の経験を聞くだけでなく、記載するチーム人数や勤務制度が現在の状況と一致しているかを確認します。
給与や評価制度などの情報は、公開できる範囲を人事や関係部署と調整します。
生成AIで文章の下書きを作ることもできますが、仕事内容、数字、社員の発言などの事実は、社内の一次情報に基づいて確認する必要があります。
応募前だけでなく、選考中に伝える情報も整理する
採用広報の中心は、候補者が企業を知り、応募を検討するための情報発信です。採用サイトや記事で伝えた内容と、選考中に説明する内容が異なれば、候補者の理解にずれが生じます。
そのため、公開する採用情報と、選考中に候補者へ渡す説明資料を揃えておくことも重要です。
段階 | 候補者が確認したいこと | 企業が用意できる情報 | 独自調査(Webエンジニア)で上位の項目 |
応募前 | 事業内容、仕事内容、働き方 | 採用サイト、採用記事、採用ピッチ資料 | スカウトを受け取ったとき:給与・待遇、一緒に働く開発メンバー、評価制度 |
面接後 | 面接で説明された仕事内容や条件 | 候補者向けに整理した業務・条件の説明 | カジュアル面談の後:給与・待遇、開発での決め方、新しい技術への取り組み |
最終面接の前後 | 評価制度、給与制度 | 評価や待遇の仕組みを説明する資料 | (この段階は調査していない) |
内定後 | 給与、賞与、配属先、入社後の仕事 | オファー内容や入社後の業務を確認できる文書 | 内定を受け取ったとき:働き方、給与・待遇、開発での決め方、財務基盤・安定性、上司 |
独自調査では、内定を受け取ったときに、企業の財務基盤・安定性(7.5%)と上司の経歴や価値観(7.0%)が上位に入ります。どちらもスカウトを受け取ったときには上位10項目に入っていない情報なので、内定後の説明資料や面談で伝えます。
口頭での説明だけでは、候補者が複数社を比較するときに情報が抜けたり、記憶違いが起きたりすることがあります。企業が説明内容を文書でも共有すれば、候補者が正確に確認しやすくなります。
面接官の評価、社内メモ、個人情報などを含む面接記録は、そのまま候補者に渡しません。共有する情報は、社外に出してよい内容に限定します。録音やAI議事録を利用する場合も、事前の説明、個人情報の取扱い、利用するサービスの条件、必要な同意の取得などを確認します。
なお、選考段階ごとの情報提供は採用広報だけで完結するものではなく、候補者体験や採用業務の運用とも関わります。
営業職の採用を例に、候補者への情報提供を考える際のポイントは、以下の記事で扱っています。
📄 関連記事:営業の人手不足はなぜ解消しないのか|採用が難しい理由と、入社先を生成AIで決める候補者への対応【2026年版】
公開後は、生成AIが自社をどう紹介しているか確認する
採用コンテンツを公開・更新した後は、候補者が生成AIで自社を調べた際に、どのような回答が表示されるかも確認できます。
支援サービスや監視ツールもありますが、最初は手作業でも記録できます。
- ChatGPT・Gemini・Perplexityなどに「〇〇社はどのような会社か」「〇〇社の働き方はどうか」「〇〇社と△△社の違いは何か」などの質問を入力する
- 確認日、利用したAI、質問文、回答内容を記録する
- 回答に参照元が表示されている場合は、そのページを確認する
- 自社サイトに古い情報や誤りがあれば修正する。外部サイトの誤情報については、修正を依頼できるか確認する
- 同じ質問文を使い、定期的に回答の変化を確かめる
生成AIの回答は、質問文、利用するサービス、確認時期などによって変わります。
したがって、回答が変わったかどうかだけを成果とするのではなく、まずは候補者が正しい情報を確認できる状態を保つことが重要です。
まとめ
採用広報は、募集中の職種や条件を知らせる求人広告とは異なり、候補者が応募先や入社先を判断できるよう、事業・仕事内容・働き方・社員の情報を継続的に発信する活動です。生成AIで企業を調べる候補者もいる現在、こうした情報は、候補者本人が読むほか、生成AIが企業を要約・比較するときの材料にもなります。この記事では、2026年の採用広報は、候補者が生成AIで企業情報を集め、比べ、応募先や入社先を決めるまでの体験(候補者AI体験、CAX)を意識して作る必要があると考えています。
採用広報×AIについて、お悩みがあればお気軽にご相談ください
株式会社プロリクは、AIを活用した採用支援や採用業務の効率化を支援しています。
採用活動における候補者への情報発信やコミュニケーションの設計、AIを活用した採用業務の改善など、採用に関する課題をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。
著者について
宮前 貴史(株式会社プロリク )
大学卒業後、個人事業主として約5年半にわたり、BtoC・BtoB領域で営業から企画・運営までを一気通貫で経験。その後、ベンチャー企業にて採用担当として制度設計に従事し、さらにRPOサービスの立ち上げ責任者として、スカウト業務の仕組み化から実践までを牽引。プロリク参画後は、その豊富な実務経験を活かし、ITエンジニアのスカウト業務を中心に複数クライアントの採用成功を支援している
よくある質問
Q. 採用広報とは何ですか?
採用広報とは、候補者が応募先や入社先を判断できるよう、自社の事業・仕事内容・働き方・社員などの情報を継続的に発信する活動です。採用サイト、社員インタビュー、技術ブログ、採用ピッチ資料、SNSなどで行います。
Q. 採用広報と求人広告、採用ブランディングの違いは何ですか?
求人広告は、募集中の職種や応募条件を知らせるものです。採用広報は、募集の有無にかかわらず事業・仕事内容・働き方などを発信します。採用ブランディングは、自社で働く魅力や他社との違いを明確にし、候補者に一貫したイメージを形成する取り組みです。採用広報は、その手段の一つです。
Q. 採用広報で生成AIへの対応が必要なのはなぜですか?
候補者が生成AIで企業情報を調べることがあるためです。Iteraの2026年8月の調査では、過去1年以内に転職活動をした880名の26.02%が、生成AIに質問して企業情報を集めていました。公開情報が生成AIの回答に使われる場合もあるため、事実を正確かつ具体的に掲載しておくことが重要です。
Q. 候補者AI体験(CAX)とは何ですか?
候補者が生成AIを使って企業情報を集め、比較し、応募先や入社先を判断するまでの体験を指します。この記事では、従来の候補者体験(CX)のうち、生成AIを介した情報収集に着目した呼び方として使っています。一般に定着した用語ではありません。
Q. 生成AIが参照・比較しやすい採用コンテンツのポイントは何ですか?
具体的な事実を書く、文字でも説明する、情報を探しやすくまとめる、公開先で記述を揃える、という4つです。目的は、候補者が他社と比較しやすい情報を整えることです。
Q. 採用広報ではどんな記事を書けばいいですか?
候補者が応募先や入社先を選ぶ際に知りたいことから考えます。仕事内容、働き方、チーム構成、評価制度、選考の流れなどがテーマの例です。現在の採用サイトや求人票を確認し、十分に説明できていない項目から制作します。
Q. 候補者が信頼できると感じる採用コンテンツは何ですか?
GIGの2026年7〜8月の調査では、中途候補者が信頼できると感じる情報として、社員インタビューに登場する社員の写真43.2%、定着率や残業時間などの実数36.4%が挙げられています。数字や社員の具体的な経験を交え、働く実態を伝えることが大切です。
Q. 採用ピッチ資料はPDFのまま公開してもいいですか?
PDFのまま公開することもできます。画像だけで説明した資料は、生成AIが内容を正しく読み取れないことがあるので、仕事内容、組織、評価制度、勤務条件などの主要な情報は、Webページにも文字で掲載します。
Q. 生成AIが自社をどう紹介しているかは、どう確認すればいいですか?
ChatGPT・Gemini・Perplexityなどに、自社の仕事内容や働き方、競合との違いについて同じ質問を入力し、日付・質問文・回答内容を記録します。参照元が表示されている場合は、そのページも確認します。同じ条件で定期的に記録すると、回答の変化を比較しやすくなります。
Q. 生成AIの回答に誤りがあったら、どうすればいいですか?
まず、回答の内容と、表示されている参照元を確認します。自社サイトに古い情報や誤りがあれば修正します。外部サイトに誤情報がある場合は、修正を依頼できるか確認するとともに、自社サイトにも正しい情報を掲載します。
参考文献、資料
- 株式会社GIG「AI時代の採用コミュニケーション実態調査2026」(2026年7〜8月実施・インターネット調査・直近半年以内に就職・転職活動をした236名〈新卒118名・35歳以下の中途118名〉): https://goworkship.com/magazine/ai-recruiting-communication-survey-2026/
- 株式会社Itera「転職活動における企業情報の収集方法に関する調査」(2026年8月26日実施・インターネットリサーチ・全国の22〜65歳の会社員5,000名のうち過去1年以内に転職活動をした880名): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000039.000177930.html
- 株式会社プロリク 独自調査(2024年11月実施・インターネット調査・Webエンジニア562名)。同じ3段階の設問で、PM・PMO・ITコンサルタント595名、AI・MLエンジニア541名にも2024年11月に実施
- PerceptionX「How Job Seekers Use AI to Research Employers」(2026年5月・Prolificで集めた7か国306名〈うちAI利用者295名〉。AIへの質問の種類の設問は157名。そのほかの設問の回答者数は公表されていない): https://www.perceptionx.ai/research/ai-candidate-usage
- 株式会社マイナビ「転職動向調査2026年版(2025年実績)」(2025年12月18〜25日実施・インターネット調査・正社員として働く20〜50代のうち2025年に転職した1,446名・2026年3月23日公表): https://career-research.mynavi.jp/reserch/20260323_108572/ 生成AIの影響はPDFのQ19(p.49〜50): https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2026/03/tenshoku_report_20261021.pdf
- OpenAI「Overview of OpenAI Crawlers」(GPTBot・OAI-SearchBot・ChatGPT-User の用途): https://developers.openai.com/api/docs/bots
- Google 検索セントラル「Google の一般的なクローラ」(Google-Extended の説明): https://developers.google.com/search/docs/crawling-indexing/google-common-crawlers