本記事は、世界の生成AI×採用活用のシリーズ記事です。今回は適性検査について記事にしたいと思います。
日本の新卒採用では、適性検査や筆記試験が広く使われています(リクルート就職みらい研究所「就職白書2024」、2024年卒採用実施企業 n=1,444では、適性検査か筆記試験のいずれかを実施した企業が87.5%)。その適性検査に、2026年に入って生成AIが入り始めました。ただし「生成AIの適性検査」と呼ばれているものは、実際には一つの製品ではありません。検査の設計をAIが作るもの、受検中の場面をAIが演じるもの、自由に書いた回答をAIが読んで採点するもの、結果の説明だけをAIがするもの、そして候補者にAIを使わせてその使い方を測るものなど多様なAI適性検査が存在します。
この記事では、2026年8月14日時点で公開されている情報をもとに、世界の生成AIが適性検査のどの部分に入っているのかを整理しつつ、動向について記事にしたいと思います。
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💡この記事の要点(TL;DR)
- 生成AIが従来の適性検査を丸ごと置き換えた例は、2026年8月14日時点で確認できない。入っているのは検査の一部の作業
- 生成AIが担う作業は5つに分かれる。①検査を設計する ②AIとのやり取り自体を試験にする ③候補者の回答を読んで評価する ④結果を文章で説明する ⑤AIを使う力を測る。生成AIが候補者を直接評価するのは主に③
- ③の代表はオーストラリアのSapia.ai。候補者全員がテキスト形式の構造化面接を受け、LLMが職種ごとに定められた評価基準に沿って点数とその理由を出す
- 日本の事例はPitA。15〜20分のシナリオ型テストで、Big Fiveをもとにした30項目への回答を生成AIが分析し、人物像を文章で示す(2026年6月正式提供)
- Codilityの「AI for Business」は、候補者にAIを使わせる一方、採点にはAIを使わない。同じ成果物なら必ず同じ点数になる方法で採点し、AIがわざと出す誤情報を見抜けるかも試験にしている
- 最も大きい変化は採点の自動化ではなく、試験の形。用意された問題に答える検査から、AIが演じる顧客や上司と仕事を進める検査へ広がっている。WorkSim AIは候補者に複数のAIエージェントを指揮させ、8項目で評価する
- 企業が得られる情報が、点数から仕事の進め方の記録に変わる。その結果、適性検査のデータは採用の合否だけでなく、配置、育成、社内異動、次世代リーダーの選定にも使われ始めている(Plum「Talent Maps」、Korn Ferry Assess)
- アセスメントを使う企業の51%が「検査の実施または採点にAIが関わっている」と回答している(Clevry、人事・採用担当者382人)。ただし機械学習などを含むAI全般の数字で、生成AIだけの割合は分からない
生成AIは適性検査の一部に入ってきている
2026年8月時点で公開されている製品を確認すると、適性検査のすべてを大規模言語モデル(大量の文章を学習し、文章の生成や分析ができる生成AI。以下LLM)に任せるのではなく、検査を作る、受検者とやり取りする、回答を評価する、結果を説明するといった一部の作業に生成AIを使う製品が増えています。
利用率を調べた調査も出始めています。Clevryが人事・採用担当者382人を対象に行った2026年調査では、94%が何らかの人材アセスメントを利用し、そのうち51%が「検査の実施または採点にAIが関わっている」と回答しています。また、英国ISEの2025年調査でも、心理・能力検査や行動・価値観検査についてAI利用の有無を調べています。ただし、これらは機械学習などを含む「AI」全般の数字で、生成AIだけを使っている企業の割合は分かりません。
生成AIが使われている5つの作業
現在のプロダクト群で、生成AIが適性検査のどの部分に入ってきているか?を以下に整理しました。
次の5つに分かれます。
生成AIがする作業 | 代表例 | 生成AIが候補者を直接評価するか |
検査を設計する | PsyMetrics AI Test Architect、Plum Role Model | しない。検証済みの項目を組み合わせる |
AIとのやり取り自体を試験にする | Sova Immerse、Symulate、WorkSim AI | 製品による。AIとの会話や共同作業から行動を測る |
候補者の回答を読んで評価する | Sapia.ai、PitA | する |
結果を文章で説明する | Plum Ask Violet、PitA | しない。すでに出ている評価結果を説明する |
AIを使う力を測る | Codility AI for Business | しない。AIは受検者が使うツールで、採点には使わない |
出典: 各社の公式発表(2026年8月14日時点で確認できたもの)
以下、それぞれを見ていきます。
1. 職務に合った検査を設計する。
生成AIを、受検者の評価ではなく、「この職種では何を測るべきか」を決める作業に使う製品があります。
米国の人材アセスメント会社PsyMetricsが2026年7月に発表した「AI Test Architect」は、仕事内容や応募条件を書いた職務記述書を読み、その仕事で必要となる能力や行動特性をAIが抽出します。そのうえで、PsyMetricsが過去30年にわたって蓄積してきた性格・認知能力・スキルなどの検査項目から、職種に合ったものを選び、検査の構成案を作ります。AIが自由に新しい設問を作るのではなく、すでに検証されている検査を職種に合わせて組み合わせる仕組みで、最後は人が内容を確認・修正してから使用します。
カナダの人材アセスメント会社Plumにも、同じように検査の設計を支援する「Role Model」があります。求人票や職務記述書をLLMで読み、その仕事に近い標準的な職種を探し、そこで必要とされる行動特性や問題解決力などの基準を呼び出します。この基準と候補者のPlumでの検査結果を比較することで、職務との適合度を判断します。つまり、ここで生成AIが行っているのは候補者の採点ではなく、「その仕事では何を重視して評価するか」を決める作業です。
2. AIとのやり取り自体を試験にする。
従来の適性検査は、用意された問題を読んで選択肢を選ぶ形式が中心でした。これに対して、AIが上司や顧客、同僚などを演じ、受検者がその相手と仕事を進める様子そのものを評価する製品が登場しています。
人材アセスメント会社Sovaが2026年に発表した「Immerse」は、その代表例です。受検者はAIが演じる上司や顧客などと会話しながら、実際の仕事に近い課題に取り組みます。たとえば顧客対応の職種なら、AIの顧客から相談を受け、状況を確認しながら対応を進めます。所要時間は15〜30分で、Sovaはこれを「AI面接」ではなく、実際の仕事に近い状況で能力を見る職務シミュレーション型のアセスメントとして提供しています。
生成AIは、ここでは主に受検者と会話する人物や仕事上の状況を作るために使われます。一方、評価は職種ごとに定められたコンピテンシーに基づいて自動で行われ、100点満点の「Sova Score」も算出されます。Sovaは、この採点基準は産業・組織心理学の専門家が検証していると説明しています。つまり、生成AIとの会話を試験に使いながら、採点にはあらかじめ定めた評価基準を使う設計です。
英国のSymulateも、AIが顧客や上司などを演じる仕事のシミュレーションを提供しています。面接、ロールプレイ、ケース問題などをAIとのやり取りとして実施し、その過程での候補者の行動を記録します。AIは評価や採点を支援しますが、最終的には人が結果を確認して判断することを明示しています。
WorkSim AIは、さらにAI時代のエンジニアの仕事に近い試験です。候補者自身が複数のAIエージェントの役割を決め、60〜90分かけて仕事を指示します。候補者が自分で作業するのではなく、AIの出力を確認し、間違いを指摘し、修正させながら仕事を完成させます。その過程を、技術的な正確さ、推論、コミュニケーション、AIへの指示、AIの誤りを見抜く力など8項目で評価します。採点には客観的な評価、LLMによる評価、別のAIによる再確認という3つの仕組みを使っています。
3. 候補者の回答をAIが評価する。
ここでは生成AIが、試験を実施するだけでなく、候補者が書いた文章を読み、「どの程度その能力を持っているか」を判断するところまで担当します。 生成AIが適性検査の「採点」に最も直接入っている使い方です。
オーストラリアのSapia.aiは、履歴書による書類選考の代わりに、候補者全員にテキスト形式の構造化面接を受けてもらうAI採用サービスです。候補者は仕事上の経験や行動について同じ質問に文章で回答し、その回答をAIが分析して、職務に必要なコンピテンシーを評価します。現在の「SAIGE」という採点機能では、LLMが候補者の回答を読み、あらかじめ職種ごとに定められた評価基準に沿って点数とその理由を出します。
Sapia.aiは以前から、文章からHEXACOと呼ばれる性格特性を推定する研究も行ってきましたが、現在の主要な仕組みは、職務ごとに必要なコンピテンシーを決め、その基準に対して候補者の回答を評価する方法へ広がっています。生成AIは単に回答を要約するのではなく、候補者の評価そのものに使われています。
日本では、Scale Technologyが2026年6月に正式提供を始めた「PitA」があります。15〜20分程度のシナリオ型テストで、心理学で広く使われているBig Fiveという性格モデルをもとに、30項目への回答を生成AIが分析します。性格だけでなく、普段どのような行動を取りやすいか、どのような環境で問題が起こりやすいかなども分析し、結果を文章でレポートします。決まった点数だけを返す従来型の性格検査とは異なり、回答の組み合わせを生成AIが読み取り、人物像を文章として示すことを特徴としています。
4. 結果を対話的に説明する。
生成AIは、受検者を評価するだけでなく、適性検査の結果を分かりやすく伝えるためにも使われ始めています。 適性検査では、性格や考え方、仕事で発揮しやすい強みなどを測り、その結果をスコアやレポートで示します。ただ、結果を見ただけでは、「自分の仕事にどう関係するのか」「今後どこを伸ばせばよいのか」まで理解しにくいことがあります。
カナダの人材アセスメントサービスPlumの「Ask Violet」は、こうした結果についてAIと会話できる機能です。Plumでは「Discovery Survey」で性格、問題解決力、対人面の特性などを測定し、その結果から本人の強みや行動傾向をまとめた「Talent Profile」を作ります。Ask Violetでは、このプロフィールについて「自分の強みを仕事でどう生かせるか」といった質問をすると、生成AIがプロフィールの内容をもとに回答します。評価そのものを生成AIが行うのではなく、すでに出た結果を本人が理解するために生成AIを使っています。
また、米国発のグローバルな組織・人材コンサルティング会社が提供する「Korn Ferry Assess」という人材アセスメントサービスの中で、受検結果をAIとの対話を通じて理解できる「Dynamic Feedback」を提供しています。受検者は、自分の強みや改善すべき点、今後どのような行動を取ればよいかをAIに質問しながら確認できます。従来はレポートを読んで理解していた適性検査の結果を、AIと会話しながら理解できる形に変えているのが特徴です。
5. AIを使う力を計測する。
生成AIが普及したことで、適性検査で「AIを使わずに仕事ができるか」ではなく、「AIを使って仕事をきちんと完成させられるか」を計測する動きも出てきました。
英国に本社を置く人材評価サービスCodilityが2026年8月に発表した「AI for Business」は、営業、マーケティング、財務、カスタマーサポートなど、エンジニア以外の職種でもAIを使う力を測るアセスメントです。候補者にはAIアシスタントが与えられ、資料の分析や文章作成など、実際の仕事に近い課題に取り組みます。60以上の課題が用意され、AIとのやり取りもすべて記録されます。
特徴的なのは、AIを使わせる一方で、AIには採点させないことです。完成した成果物を、専門家があらかじめ決めた正解や評価基準と照らし合わせ、同じ成果物なら必ず同じ点数になる方法で採点します。課題によってはAIがわざと誤った情報を出し、候補者がそれを見抜けるかも確認します。そのため測られるのは、AIへの指示の上手さだけではありません。AIの回答を鵜呑みにせず、元の資料と照らし合わせ、誤りを修正して、最終的な仕事の品質を担保できるかまでが評価対象になります。
製品だけでなく、適性検査の問題そのものをLLMに作らせる研究も進んでいます。2025年11月に『BMC Psychology』に掲載された北京師範大学などの研究では、中国のLLM「ERNIE 4.0」に、職場などで起こり得る状況を示して「あなたならどう対応するか」を問う状況判断テストを作らせました。生成した問題は専門家が確認し、心理学専攻の大学院生93人と一般参加者184人に実際に回答してもらって、従来の検査と同じように信頼性や妥当性を検証しています。
2026年7月に『Behavior Research Methods』に掲載された「AI-GENIE」では、GPT-4o、GPT-3.5、Gemma 2、Llama 3、Mixtralの5種類のLLMにBig Fiveの性格検査の設問を作らせています。その後、似すぎた設問や測定に適さない設問を統計的に取り除き、米国の計4,964人に実際に回答してもらって検証しました。どちらの研究でも共通しているのは、LLMが作った問題をそのまま適性検査として使うのではなく、人による確認や従来の心理学・統計学の方法を使って、検査として成立するかを改めて確かめていることです。
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適性検査は生成AIによってどう変わるのか
ここまで見てきた製品を並べると、生成AIによる変化は「採点を自動化した」という話だけではないことが分かります。では一体どういった変化が起きているのか、そのあたりをここでは解像度をあげて記載していきたいと思います。
「問題に答える検査」から、仕事を再現する検査へ
従来の適性検査では、あらかじめ用意された問題や質問に答えてもらい、その結果から能力や性格を推定する方法が中心でした。
もちろん、実際の仕事に近い課題をやってもらう「ワークサンプルテスト」や、ロールプレイを使ったアセスメント自体は以前からあります。米国政府の人事管理機関OPMも、文章作成や顧客対応など、実務に近い仕事を候補者に行わせる方法を長年採用手法の一つとして紹介しています。
生成AIによって変わるのは、こうした試験を作り、実施する手間です。
Sovaの「Immerse」では、候補者がAIの上司や同僚、顧客と会話しながら一つの仕事を進めます。顧客対応の試験であれば、性格について質問に答えるのではなく、難しい顧客から実際に相談を受け、話を聞き、状況に応じて対応を変え、問題を解決します。AI側も候補者の回答に合わせて会話を変えるため、全員が同じ試験ではありません。
WorkSim AIでは、候補者は自分で複数のAIエージェントの役割を決め、仕事を割り振ります。AIが出した成果物を確認し、間違っていれば差し戻し、修正させ、最終的に使える状態まで持っていく。候補者自身がすべての作業をするのではなく、AIに仕事をさせながら、その仕事を管理する能力を見ています。
これらは、生成AI以前には大量採用で実施しにくかった試験です。人間の面接官やロールプレイ役を何百人分も用意しなくても、候補者ごとの反応に応じて会話が変わるという、仕事の場面を再現できるからです。
点数だけでなく、「どう仕事を進めたか」が見える
先ほどは計測方法の変化について述べてきました。そして計測方法が変われば、企業が得られる情報も変わるという話をここではします。
たとえば、従来の適性検査で「問題解決力が高い」という結果が出たとしても、その人が実際にどのように問題を解くのかまでは分かりません。
仕事のシミュレーションなら、もう一段細かく見ることができます。
顧客からクレームを受けたとき、まず何を確認するのか。相手が最初に話した内容だけで判断するのか、それとも追加の質問をするのか。複数の問題が同時に起きたとき、何から手を付けるのか。一度決めた対応がうまくいかなかったとき、途中でやり方を変えられるのか。
SovaのImmerseでは、候補者が顧客や同僚とのやり取りを通じて、どのようにコミュニケーションを取り、判断し、状況に対応したかを評価します。最後には候補者自身に判断理由を説明してもらう場面もあり、行動だけでなく、その判断に至った考え方も評価材料にしています。
AIを使う仕事では、さらに別の情報が取れます。
WorkSim AIは、AIへの指示の出し方だけでなく、技術的な正確さ、判断の筋道、コミュニケーション、AIの監督、関係者への対応などを評価します。AIが事実と異なる回答をしたときに、それを発見し、指摘し、直せるかも評価項目です。
Codilityの「AI for Business」も同様の機能が存在します。AIアシスタントを使わせながら実務課題を解かせ、途中のやり取りまで記録します。AIが意図的に誤った情報を出す課題もあり、候補者がその誤りに気づけるかを見ます。完成した答えだけではなく、AIから出てきた情報をどう扱ったかまで試験になります。
ここで計測しているものの多くは、新しく発見された能力ではありません。判断力、問題解決力、適応力、コミュニケーション力などは、以前から採用で重視されてきました。しかし、ここまで述べてきたようなプロダクト群によって、そうした能力が、自己申告や選択式の回答から推測するだけではなく、実際の行動に近いデータを大量に取れるようになったことです。これは試験を課す企業にとって、得られる情報が変わったということです。
適性検査のデータを、採用以外でも使う
ここまで細かな情報を取れるようになると、使い道も採用時の合否判定だけではなくなります。
一つは配置です。
たとえば営業職として採用した社員が、新規開拓では成果が出ていなくても、顧客の話を聞く力や問題を整理する力が高ければ、既存顧客を担当する営業やカスタマーサクセスで力を発揮するかもしれません。
Plumでは、社員が受けたアセスメント結果を社内の別の職種と照らし合わせる「Talent Maps」を提供しています。社内異動だけでなく、組織再編、人員配置、プロジェクトチームの編成、メンタリングなどにも利用するとしています。
育成にも使えます。
「交渉力が低い」という点数だけでは、本人も上司も何を直せばよいか分かりません。一方、実際のやり取りを見ることができれば、「相手の要求は聞けているが、なぜそれを求めているのかを確認していない」「反対意見が出ると、自分の提案を引っ込めてしまう」といったところまで分かる可能性があります。
また、研修内容も変えられます。全員に同じ交渉研修を受けさせるのではなく、その人が苦手としている行動を絞って練習することができます。
Korn Ferry Assessは、個人の能力や将来性を測るだけでなく、その結果を社員の育成や社内異動、次世代リーダーの選定にも使っています。個人ごとの評価結果をLearning Labの学習内容につなげる仕組みも提供しています。
さらに社員全体のデータを集めれば、人事だけではなく経営にも使えます。
たとえば会社が3年後にAIを前提とした業務へ移行するとします。そのとき必要なのは「生成AI研修を何人が受けたか」という数字ではありません。AIに仕事を任せられる人は何人いるのか。出力の誤りを見つけられる人はどの部署に多いのか。顧客対応までAIを使える人材は足りているのか。管理職にはどの能力が不足しているのかといったことが適性検査によって判別が出来ているということを意味します。
※参考として、株式会社プロリクは、AHRという概念を提唱していますが、AIを経営資源と捉え、AIを前提とした組織について議論しています。詳しくは、【決定版】AHRとは?-人とAIの働き方をリデザインする をご覧ください。
まとめ 適性検査は「人を測るテスト」から、仕事ぶりを計測するものへと変化している
2026年時点では、従来の適性検査が生成AIに丸ごと置き換わったわけではありません。
一方で、適性検査の周辺ではかなり大きな変化が始まっています。
求人票から何を測るべきかをAIが考える。AIの顧客や上司と仕事をさせる。自由記述の回答を読み取る。AIを使って仕事をさせ、その使い方を評価する。検査結果について本人がAIに質問できるようにする。
その中でも、今後の適性検査に大きく影響しそうなのが、仕事のシミュレーションです。
これまでは、短時間で大量の候補者を評価しようとすると、どうしても選択式の問題や定型的な質問が中心になりました。生成AIを使えば、候補者によって展開が変わる顧客対応や、複数の関係者との調整、AIに仕事を任せて成果物を作る過程まで試験にできます。その結果、「何点だったか」だけではなく、「どう仕事をしたか」を採用データとして残せるようになります。そして、そのデータを採用後の実績と結び付ければ、採用だけで終わりません。配置、育成、社内異動、次世代リーダーの発掘、人員計画にも使えます。
適性検査は長い間、限られた時間の中で人の能力や性格を推測するための仕組みでした。生成AIによって始まっているのは、その検査をAIに置き換えることではありません。実際の仕事に近い場面を作り、その人がそこでどう考え、どう行動するのかを見る。AIと協働する時代の新たな計測ツールへと変化を遂げつつあります。
AIを前提とした組織にお悩みがあればお気軽にご相談ください
株式会社プロリクは、AHRという概念の元、AI実装やAIを前提とした組織構築・採用支援を行っております。お気軽にお問い合わせいただけると幸いです。
弊社お問い合わせ窓口
著者について
宮前 貴史(株式会社プロリク )
大学卒業後、個人事業主として約5年半にわたり、BtoC・BtoB領域で営業から企画・運営までを一気通貫で経験。その後、ベンチャー企業にて採用担当として制度設計に従事し、さらにRPOサービスの立ち上げ責任者として、スカウト業務の仕組み化から実践までを牽引。プロリク参画後は、その豊富な実務経験を活かし、ITエンジニアのスカウト業務を中心に複数クライアントの採用成功を支援している
よくある質問
Q. 生成AIの適性検査とは、具体的に何を指しますか?
一つの製品群ではありません。2026年8月14日時点で確認できる範囲では、生成AIは①検査を設計する ②AIとのやり取り自体を試験にする ③候補者の回答を読んで評価する ④結果を文章で説明する ⑤AIを使う力を測る、の5つの作業に分かれて入っています。このうち、生成AIが候補者を直接評価するのは主に③です。同じ「AI適性検査」という表示でも、やっていることが違います。
Q. 適性検査にAIを使っている企業はどのくらいですか?
Clevryが人事・採用担当者382人を対象に行った2026年調査では、94%が何らかの人材アセスメントを利用し、そのうち51%が「検査の実施または採点にAIが関わっている」と回答しています。ただしこれは機械学習などを含むAI全般の数字で、生成AIだけを使っている企業の割合は分かりません。英国ISEの2025年調査も、心理・能力検査や行動・価値観検査についてAI利用の有無を調べていますが、同じく生成AIに限った数字ではありません。
Q. 生成AIが候補者の回答を採点している製品はありますか?
あります。オーストラリアのSapia.aiと、日本のPitAです。Sapia.aiは候補者が文章で答えた内容をLLMが読み、職種ごとに定められた評価基準に沿って点数とその理由を出します。PitAはBig Fiveをもとにした30項目への回答を生成AIが分析し、人物像を文章で示します。5つの作業のうち、生成AIが採点に最も直接入っているのがこの使い方です。
Q. Sapia.aiは何をどう評価していますか?
履歴書による書類選考の代わりに、候補者全員がテキスト形式の構造化面接を受けます。仕事上の経験や行動について同じ質問に文章で答え、その回答を「SAIGE」という採点機能が読み、職務に必要なコンピテンシーを評価します。あらかじめ職種ごとに定められた評価基準に沿って、点数とその理由を出す仕組みです。同社は以前から文章からHEXACOと呼ばれる性格特性を推定する研究も行ってきましたが、現在の主要な仕組みはコンピテンシーの評価へ広がっています。
Q. 日本の適性検査はどこまで生成AI化していますか?
Scale Technologyが2026年6月に正式提供を始めた「PitA」が事例です。15〜20分程度のシナリオ型テストで、Big Fiveをもとにした30項目への回答を生成AIが分析し、性格だけでなく、取りやすい行動や問題が起こりやすい環境まで文章でレポートします。決まった点数だけを返す従来型の性格検査とは異なり、回答の組み合わせを生成AIが読み取って人物像を文章で示す点が特徴です。
Q. 候補者にAIを使わせる適性検査とは何ですか?
Codilityが2026年8月に発表した「AI for Business」がこれにあたります。営業、マーケティング、財務、カスタマーサポートなどの職種で、候補者にAIアシスタントを与え、60以上の実務課題に取り組ませます。特徴は、AIを使わせる一方でAIには採点させないことです。専門家があらかじめ決めた評価基準と照らし合わせ、同じ成果物なら必ず同じ点数になる方法で採点します。課題によってはAIがわざと誤った情報を出し、候補者がそれを見抜けるかも試験になります。
Q. 生成AIで適性検査の形はどう変わりますか?
用意された問題に答える形から、仕事を再現する形へ広がっています。Sovaの「Immerse」では、AIが演じる上司や顧客と会話しながら、15〜30分で実際の仕事に近い課題を進めます。WorkSim AIでは、候補者が複数のAIエージェントの役割を決めて60〜90分かけて仕事を指示し、技術的な正確さ、推論、コミュニケーション、AIへの指示、AIの誤りを見抜く力など8項目で評価されます。人間の面接官やロールプレイ役を何百人分も用意しなくても、候補者ごとに展開が変わる場面を再現できるようになりました。
Q. 適性検査の結果は採用以外にも使えますか?
使えます。Plumは社員のアセスメント結果を社内の別の職種と照らし合わせる「Talent Maps」を提供し、社内異動、組織再編、人員配置、プロジェクトチームの編成、メンタリングに使うとしています。Korn Ferry Assessは、個人の能力や将来性を測るだけでなく、その結果を社員の育成、社内異動、次世代リーダーの選定にも使い、個人ごとの評価結果をLearning Labの学習内容につなげる仕組みも提供しています。
参考文献、資料
調査・統計
- リクルート 就職みらい研究所「就職白書2024」(2023年12月1日〜2024年1月10日実施、2024年2月20日公表、2024年卒採用実施企業 n=1,444): https://shushokumirai.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2024/02/hakusho2024_data.pdf
- Clevry 人材アセスメント調査(2026年、人事・採用担当者 n=382)
- ISE(英国 Institute of Student Employers)2025年 採用選考手法調査
研究論文
- Jiang, Luo & Tian (2025) “AI as a partner in assessment: generating situational judgment tests with LLMs.” BMC Psychology、2025年11月28日: https://link.springer.com/article/10.1186/s40359-025-03613-z
- “Generative psychometrics via AI-GENIE.” Behavior Research Methods、2026年7月(米国 計4,964人): https://link.springer.com/article/10.3758/s13428-026-03082-1
製品・ベンダー公式発表
- Sapia.ai 公式: https://sapia.ai/
- Sapia.ai ホワイトペーパー「Explainable Personality Prediction Using Answers to Open-Ended Interview Questions」: https://sapia.ai/resources/whitepaper/explainable-personality-prediction-using-answers-to-open-ended-interview-questions/
- PitA(Scale Technology)PoC結果公表(2026年6月29日): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000174246.html
- PsyMetrics「AI Test Architect」正式発表(2026年7月13日)
- Sova「Immerse」公式説明(2026年)
- Codility「AI for Business」発表(2026年8月13日)
- Plum「Role Model」「Ask Violet」「Talent Maps」公式説明
- Korn Ferry「Korn Ferry Assess」「Dynamic Feedback」「Learning Lab」公式説明
- Symulate 公式説明/WorkSim AI 公式説明(2026年時点でベータ)
- 米国人事管理局(OPM)ワークサンプルテストの説明: https://www.opm.gov/policy-data-oversight/assessment-and-selection/other-assessment-methods/work-samples-and-simulations/