クリニックの採用には、病院にはない事情があります。専任の人事担当者を置けるクリニックはほとんどなく、院長や事務スタッフが診療・運営と並行して求人を出し、応募に対応しているのが実情です。医療機関を対象とした調査でも、スタッフ採用の課題のトップは「応募者が少ないこと」で42.2%を占めました。応募を待つだけでは母集団が集まらず、かといって人材紹介に頼めば看護師1人で数十万円の手数料がかかります。
この状況で、採用業務そのものを外部に委ねる選択肢が採用代行(RPO:Recruitment Process Outsourcing)です。
この記事では、クリニックが採用代行を使うときの費用・任せられる範囲・選び方を、具体的なデータとともに解説します。特定の会社を並べて比べたい場合は、【許可番号つき】医療・介護の採用代行(RPO)11社比較|職種別の選び方【2026年版】もあわせてご覧ください。本記事は、そのうち「クリニックという小規模施設ならではの採用」に絞って扱います。
💡この記事の要点(TL;DR)
- クリニックの採用代行(RPO)とは: 求人媒体の運用・スカウト送信・応募者対応・面接調整といったクリニックの採用実務を、外部の専門事業者に代行してもらう仕組み。
- 向いているクリニック: 院長やスタッフが採用を兼任していて手が回らない/求人を出しても応募が来ない/人材紹介の高い手数料を抑えたい、という診療所。
- 選ぶときの3点: ①医療・複数職種(医療事務・看護師・受付など)に対応できるか ②有料職業紹介の許可があるか ③費用は月額固定か成果報酬か。
クリニックの採用代行(RPO)とは?
クリニックの採用代行(RPO)とは、求人媒体の運用・スカウト送信・応募者対応・面接日程の調整といった採用業務を、外部の専門事業者に委託することです。 採用の決定権は常にクリニック側にあり、実務だけを外部に任せます。
人材紹介と混同されがちですが、仕組みが違います。人材紹介は、紹介会社が候補者を紹介し、採用が決まったときに成功報酬を払う仕組みで、手数料は理論年収の20〜35%が相場です。採用代行は、採用業務そのものを月額固定または成果報酬で代行するもので、1人あたりの費用を数万円〜数十万円に抑えやすいのが特徴です。
クリニックの採用はなぜ難しいのか
クリニックの採用が難しいのは、専任の採用担当者がいないまま、応募が集まりにくい医療職を、限られた費用で採らなければならないためです。 病院とは違う、小規模施設ならではの事情があります。
応募が来ない
医療機関を対象とした調査では、スタッフ採用の課題として「応募者が少ないこと」が42.2%でトップでした。求人を出して応募を待つだけでは母集団が集まりにくく、こちらから候補者に働きかける運用(スカウト)が必要になっています。
採用に手が回る人がいない
クリニックには専任の人事担当者がいないことが多く、院長や事務長が診療・運営と兼任で採用を進めます。応募者への連絡が遅れると、他院に流れてしまいます。採用のスピードそのものが、採れるかどうかを左右します。
複数の職種を少人数で採る
クリニックは、医療事務・受付・看護師・(歯科なら)歯科衛生士など、複数の職種を少人数ずつ採用します。職種ごとに使う求人媒体も訴求も違うため、片手間での運用では成果が出にくくなります。
費用がシビア
看護師の人材紹介手数料は平均76万円(全日本病院協会、2020年)にのぼります。売上規模の限られるクリニックにとって、1人採るたびの高額な手数料は負担が大きく、月額数万円〜の採用代行や、成果報酬の低い媒体運用への切り替えが検討されます。
クリニックの採用手段と費用の違い
クリニックの採用には、大きく4つの手段があります。それぞれ費用のかかり方が違うため、組み合わせて使うのが現実的です。
手段 | 費用の形式 | 費用の目安 | 向いているケース |
自院で採用 | 媒体費+院内の人件費 | 媒体掲載料など | 採用ノウハウと時間がある |
求人媒体(成果報酬型) | 採用決定時に課金 | 1名あたり数万円〜 | 応募母集団はある程度見込める |
人材紹介 | 成功報酬(採用時) | 看護師平均76万円 | すぐに人が欲しい・費用は決定時だけにしたい |
採用代行(RPO) | 月額固定 または 成果報酬 | 1名あたり数万〜数十万円 | 応募が来ない・採用に手が回らない |
採用代行は、この中で「媒体を使いたいが運用する人がいない」「人材紹介の手数料を抑えたい」という2つの課題に同時に効く手段です。費用の詳しい相場は、RPO(採用代行)とは?費用相場・メリット・選び方で解説しています。
採用代行で任せられること
採用代行に任せられるのは、面接の実施を除く採用実務のほぼ全体です。 クリニックの場合、次のような範囲を委託できます。
- 求人媒体の選定と求人原稿の作成・改善
- スカウトの送信(候補者を探して直接声をかける運用)
- 応募者への連絡・面接日程の調整
- 選考状況の管理・レポート
面接そのものは院長やスタッフが行い、採用の可否はクリニックが決めます。近年は、候補者探しやスカウト文の作成にAIを使い、少ない工数で母集団を作る「AIスカウト」に対応する事業者も増えています。詳しくはAI RPO(AI採用代行)とは?をご覧ください。
クリニックが採用代行を選ぶときのポイント
クリニックが採用代行を選ぶときは、次の3点を確認すると失敗しにくくなります。
① 医療・複数職種に対応できるか
まず確認したいのは、医療職の採用と、クリニックが使う求人媒体に対応できるかです。 医療事務・看護師・(歯科なら)歯科衛生士などは、ハローワーク、自社サイト、一般の転職サイトに掲載するだけして「応募を待っている採用」だけでは集まりにくく、医療・介護に強い専門のスカウト媒体(ジョブメドレーなど)が効果的です。汎用の採用代行は一般の転職サイトが中心で、医療専門媒体を扱わない場合があります。「対応媒体」に、自院が使いたい医療系媒体があるかを確認してください。看護師採用に絞った選び方は看護師の採用代行(RPO)比較|病棟・クリニック・訪問看護別の選び方でも扱っています。
② 有料職業紹介の許可があるか
有料職業紹介は広く人材紹介事業を行うために必要な許可であるとイメージされていますが、実は依頼する業務によっては、採用代行業務であっても、有料職業紹介事業の許可が関係します。求人原稿の掲載や面接日程の調整といった定型的で指示通りに行えば良いルーティング業務だけであれば許可は不要ですが、候補者に合わせたスカウト文面の作成や、スカウトの送信業務、応募者のスクリーニング(絞り込み)など、コンサルティング要素が入る業務には、有料職業紹介事業の許可(職業安定法30条)が必要になります。クリニックの採用代行はスカウトまで任せることが多いため、この許可が関係します。各社が許可番号を公開しているかを確認するとよいでしょう。法的要件の詳細は、RPO(採用代行)とは?費用相場・メリット・選び方の「有料職業紹介事業許可」の章で解説しています。
③ 費用の形式と、どこまで代行するか
採用代行の費用は「月額固定型」と「成果報酬型」に分かれます。採用が少数、あるいは決まるか読めない場合は、決まるまで費用のかからない成果報酬型が安全です。継続的に採用する場合は、月額固定型のほうが1人あたりのコストを抑えられることがあります。あわせて、どこまでの業務を代行するか(媒体運用だけか、スカウトまでか、一次面接までか)と、最低契約期間を含めた総額を確認してください。
まとめ
クリニックの採用は、専任の担当者がいないまま、応募が集まりにくい医療職を限られた費用で採るという難しさがあります。求人を出して待つだけでは動きにくく、候補者に働きかける運用が要になります。その実務を代行するのが採用代行(RPO)です。
選ぶときは、①医療・複数職種に対応できるか、②有料職業紹介の許可があるか、③費用の型と代行範囲、の3点で見てください。具体的な会社を比べたい場合は医療・介護・福祉の採用代行(RPO)比較|職種別の選び方を、看護師採用に絞る場合は看護師の採用代行(RPO)比較|病棟・クリニック・訪問看護別の選び方をご覧ください。
医療・介護・福祉の採用代行会社を横断して比べたい場合は、医療・介護・福祉の採用代行(RPO)比較11社|職種別の選び方【2026年版】もあわせてご覧ください。
著者について
宮前 貴史(株式会社プロリク )
大学卒業後、個人事業主として約5年半にわたり、BtoC・BtoB領域で営業から企画・運営までを一気通貫で経験。その後、ベンチャー企業にて採用担当として制度設計に従事し、さらにRPOサービスの立ち上げ責任者として、スカウト業務の仕組み化から実践までを牽引。プロリク参画後は、その豊富な実務経験を活かし、ITエンジニアのスカウト業務を中心に複数クライアントの採用成功を支援している
よくある質問(FAQ)
Q: クリニックの採用代行の費用相場は?
月額固定型と成果報酬型があります。月額固定型は月数万円〜、成果報酬型は1名あたり数万円〜が目安です。人材紹介の手数料(看護師で平均76万円)と比べると、1人あたりの費用を抑えやすいのが特徴です。ただし月額固定型は最低契約期間があるため、総額で比べてください。
Q: 医療事務や受付の採用も頼めますか?
多くの採用代行で対応しています。医療事務・受付は応募が集まりやすい一方で定着が課題になりやすく、求人原稿での訴求や応募者対応のスピードが効きます。看護師など専門職と一緒にまとめて依頼できるかも確認するとよいでしょう。
Q: 小規模なクリニックでも導入できますか?
導入できます。専任の採用担当者がいない小規模施設ほど、応募者対応の遅れが課題になりやすく、採用代行の効果が出やすい傾向があります。月額の低いプランや、成果報酬型から小さく始める方法もあります。
Q: 採用代行と人材紹介は、どちらが安いですか?
人材紹介の手数料は理論年収の20〜35%(看護師で平均76万円)です。採用代行は月額数万円〜数十万円に抑えられ、複数名を採用できれば1人あたりはさらに下がります。一方で最低契約期間や媒体費もかかるため、合計費用で比較してください。
Q: 採用代行に有料職業紹介の許可は必要ですか?
求人原稿の掲載や面接日程の調整だけなら不要ですが、スカウト文面の作成や応募者のスクリーニングなど、コンサルティング要素を含む業務には、有料職業紹介事業の許可(職業安定法30条)が必要です。依頼したい業務の範囲とあわせて、各社に許可の有無を確認してください。
Q: 面接まで代行してもらえますか?
多くは「応募者対応・面接日程の調整まで」で、面接そのものは院長やスタッフが行います。一次面接まで代行するサービスもあります。依頼前に対応範囲を確認してください。
Q: ジョブメドレーなどの医療系媒体の運用も任せられますか?
医療・介護に強い採用代行であれば対応することが多いです。汎用の採用代行は一般の転職サイトが中心で、医療系媒体を扱わない場合があります。使いたい媒体名を挙げて、運用できるかを確認してください。
Q: どの職種の採用に効きますか?
看護師・医療事務・受付など、応募が集まりにくい、または対応スピードが求められる職種で効果が出やすいです。歯科医院では歯科衛生士・歯科助手の採用にも使われます。
Q: 候補者の個人情報は安全ですか?
候補者の資格・経歴といった機微な情報を外部に預けるため、秘密保持契約の締結と情報管理体制の確認は必須です。ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム、ISO27001)認証やプライバシーマークを取得している事業者は、情報管理の体制が整っている目安になります。