候補者は、応募する前に施設の公式サイトや口コミを開き、「どんな人と、どんな雰囲気で働くのか」まで確かめてから応募先を決めます。ところが、その最も知りたいことは求人票には書かれていません。求人媒体に出しているのに応募が来ない、応募はあっても他の施設に決められてしまう——その差を生んでいるのが、自院の採用サイトです。
この記事では、応募が増える採用サイトに何を、どう書くかを、候補者の調査データと採用の実務にもとづいて説明します。
💡この記事の要点(TL;DR)
- 求人を出しても応募が来ないのは、候補者が最も知りたいこと(働く人や職場の雰囲気)が求人票に載っていないためです。それを伝えるのが採用サイトです。
- 採用サイトに書く項目は、候補者が転職先を選ぶときに重視することから決めます。上位は、給与の考え方・労働環境・人間関係です。設備の新しさや施設の規模を大きく書いても、応募にはほとんど効きません。
- 書く内容さえ決まれば、採用サイトは以前より短い時間・低い費用で作れるようになりました(AIの活用は後半で説明します)。
- この記事が役立つ方:求人を出しても応募が来ない、病院・クリニック・介護施設・歯科医院。
なぜ採用サイトがあると応募が増えるのか
候補者は応募する前に、求人票だけでなく施設そのものを調べていて、いちばん知りたいことが求人票には書かれていないためです。
看護師・准看護師の有効求人倍率は2.20倍(2022年度、厚生労働省 職業安定業務統計)で、全職種平均の1.19倍を上回ります。求職者1人に対して複数の求人がある状況では、候補者が施設を選びます。
候補者は、求人票以外も見ています。看護師599人への調査(ドクターズ・ファイル ジョブズ、2024年)では、転職の情報収集で使ったものは、求人検索サイト(約40%)に加えて、施設の公式ホームページが3割以上、友人・知人の口コミも3割以上でした。新卒の看護学生では、病院情報を集める手段のうち病院ホームページが最も多く89.8%です(マイナビ「2027年卒 看護学生就職活動意識調査」)。
そして、いちばん知りたいことが求人票に載っていません。同じ看護師599人の調査で、給与や休日といった条件以外で最も知りたい情報は「スタッフ同士の人間関係」で75.7%でした。実際、入職後にギャップを感じた看護師は約80%にのぼり、その内容で最も多いのが「スタッフ同士の人間関係」45.1%です。給与や休日は求人票に載りますが、「どんな人が、どんな雰囲気で働いているか」は求人票の短い文章では伝わりません。
働く人や職場の雰囲気を伝える採用サイトがあるかどうかで、応募の数と、入職後に働き続けるかどうかが変わります。
採用サイトに何を書くか(施設・職種で、特に重視される項目は変わる)
採用サイトに書く項目は、候補者が転職先を選ぶときに重視することから決めます。上位は、給与の考え方・労働環境(休みや残業)・人間関係の3つで、設備の新しさや施設の規模は、大きく書いても応募にはあまり効きません。
医療事務・医療サポート職2,492人への弊社独自調査(2024年)では、転職先を選ぶ基準の上位は、基本給・ボーナス(10.6%)、福利厚生(9.7%)、残業が少ない(9.5%)、手当の充実(9.3%)、休みの取りやすさ(8.9%)、通勤のしやすさ(8.8%)、同僚・上司との関係(8.5%)でした。給与・待遇、労働環境、人間関係に集まっています。
反対に、下位だったのは、設備・システムが最新か(4.1%)、施設の規模・診療内容(4.0%)、IT・技術への力の入れ方(3.3%)、管理職への昇進(3.1%)です。設備の新しさや規模を大きく書いても、候補者が選ぶ理由にはほとんどなりません。
この傾向は、職種が違っても同じです。薬剤師でも職場選びで重視する条件は給与(69.9%)・休日休暇(45.4%)・勤務時間(38.3%)が上位で(薬剤師655人への調査、2024年)、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士でも、長く働き続けるために必要なものは、待遇の充実(80.4%)・良い人間関係(72.6%)・休暇の取りやすさ(54.0%)でした(マイナビ「PT・OT・ST白書2024」)。
施設・職種で、特に重視される項目は変わる
共通して重視されるのは給与・労働環境・人間関係の3つですが、そのうちどれを特に厚く書くかは、施設や職種で変わります。
- 病院の看護師:最後に入職を決める段階では、人間関係(49.5%)と職場の雰囲気(42.9%)が決め手になります(マイナビ)。部署ごとの働き方の違い、教育の体制、キャリアの進み方を、職場の雰囲気とあわせて書きます。
- クリニック:少人数の職場の雰囲気、院長との距離の近さ、日勤中心の働きやすさを書きます。
- 介護施設:今の職場で働き始めた理由は、通勤(50.3%)に続いて、やりがい(32.6%)、人間関係(31.4%)です(介護労働安定センター、令和5年度)。利用者との関わり方、資格取得の支援、チームで支える体制を書きます。
- 医師:転職を考えるきっかけは、給与(29.0%)に次いで人間関係(25.0%)、労働条件(22.7%)です(リクルートドクターズキャリア)。給与の考え方、当直・オンコールの体制、任される範囲を書きます。
- 歯科医院:歯科衛生士・歯科助手それぞれの役割と、任される範囲を書きます。
求人媒体に出す求人の見出し(キャッチコピー)も、この重視される項目に合わせます。「看護師募集」だけでなく、候補者の不安や希望に触れる一文(例:「ブランクからの復帰を、先輩がとなりで支えます」)にします。職種ごとの採用の進め方は看護師の採用代行(RPO)比較|病棟・クリニック・訪問看護別の選び方でも扱っています。
応募が増える書き方の5つの原則
何を訴求として書くべきかの大枠をあらかた理解したところで、次はもう少し具体的に、どう書いていくか、という表現の議論にうつります。以下5つの論点が推奨される論点となります。
原則1:求人票に載っていないことを書く
給与の範囲、年間休日、夜勤の有無は、候補者が求人票で既に見ています。単なる事実を、そのまま採用サイトで同じことを書いても全く価値がありません。書くべきであることは、求人票に載っていない「事実以外」のことです。具体的には次のものです。
- 代表や院長の考え(なぜこの仕事をしているか、働く人に何を約束するか)
- 育て方と、実際の人間関係(入ってからやっていけるか)
- 先輩スタッフの本音(前の職場、入職の理由、1日の流れ、やりがい)
- 休み方や働き方を、なぜそうしているか(夜勤をなくした理由など)
- 給与の考え方(昇給がどう決まるか、各手当を設けた理由、賞与の決め方)
事実や数字をただ繰り返すのではなく、上記のような各要素において、その施設が何を考えてその制度にしているのか、どういう考えや信念があってそうしているのか、という裏側の部分を色濃く書いていきます。そうすることで、人間関係や働きやすさに対する解像度が上がり、説得力が高まるのです。
原則2:あいまいな言葉ではなく、具体的な場面で書く
「アットホームな職場」「働きやすい」「風通しが良い」といった言葉は、候補者に伝わりません。根拠のない「業界トップ」「手厚い」や、「近くの施設より休みが多い」といった他施設との比較は、かえって信用を下げます。目安は、その一文に、確かめられる事実(数字、具体的な場面、本人の言葉)が入っているかどうかです。
あいまいな言葉は、具体的な行動に置き換えます。「一人で抱え込ませない」なら、「困ったときの相談先を3つ用意しています。その場で隣のスタッフに声をかける、終礼で共有する、月1回の会議で全員で話し合う」と書きます。新人の育て方も、最初の1か月を「1週目は記録を読む、2週目は先輩と一緒に、3週目は自分でやって先輩が見守る」と順を追って書くと、候補者が働く様子を思い描けます。
原則3:給与は「金額」ではなく「考え方」を書く
金額の一覧は求人票にあります。採用サイトに書くのは、昇給がどう決まるか(例えば「年数で自動的に上げるのではなく、仕事の質や後輩への関わりを半年ごとに見て決める。その基準は全員に前もって伝えている」)、各手当をなぜ設けたのか、できれば施設内の給与の分布です。「資格手当1万円」ではなく、「学び続けるスタッフを支えるために設けている」と理由を添えます。
数字を出すときも、それだけでは書きません。「年間休日122日」ではなく、「年間休日122日。金曜の終礼が終われば、月曜の朝まで仕事から離れられます」のように、その数字が候補者の生活にとって何を意味するかを、一言添えます。
原則4:スタッフの声は、具体的な出来事を1つ入れる
「やりがいがあります」「一人ひとりと向き合える職場です」では、どの施設でも同じで伝わりません。年数、具体的な場面、実際に言われた言葉が入ると、候補者の気持ちが動きます。「3年たった今、入職したころは目も合わせてくれなかった利用者さんが、自分から『あなたがいる日は安心』と言ってくれた」——このような出来事を、先輩一人につき1つ入れます。集めるときは「やりがいはありますか」と聞かず、「印象に残っている出来事」「この施設を選んだ理由」を聞くと、こうした話が出てきます。
原則5:よくある質問には、本音の不安に答える
本音の不安を知る手がかりは、候補者が前の職場を辞めた理由にあります。介護職の退職理由は「職場の人間関係」34.3%、「施設の理念や運営への不満」26.3%が上位で(介護労働安定センター、令和5年度)、看護師では「労働時間への不満」33.7%、「給与への不満」30.3%が並びます(ドクターズ・ファイル ジョブズ、599人)。候補者は、次の職場で同じことが起きないかを心配しています。
難しいのは、人間関係は本音では退職理由の1位(看護師で34.2%)なのに、職場に伝える退職理由では「転居や家庭の事情」が最も多くなることです(レバウェル看護、2025年)。本音は、面接でも退職の面談でも口に出されません。だから、施設の側から先に、実際の人間関係を見せる必要があります。「未経験でも応募できますか」のような当たり障りのない質問ではなく、「前の職場は人間関係で辞めたが、ここはどうか」「残業や休みの実際はどうか」という本音の不安に、施設の言葉で正直に答えます。
採用サイトは求人媒体と組み合わせて使う
採用サイトだけでは応募は増えません。求人媒体や求人広告で候補者に見つけてもらい、そこから採用サイトに来てもらって、はじめて応募につながります。
Indeedやジョブメドレー、看護師・介護の専門媒体で候補者に見つけてもらい、興味を持った候補者に採用サイトを見てもらう。この流れをつくると、媒体からの応募が増えます。媒体の運用やスカウトを外部に任せるときの選び方は【許可番号つき】医療・介護の採用代行(RPO)11社比較|職種別の選び方【2026年版】を、AIを使ったスカウトについてはAI RPO(AI採用代行)とは?で説明しています。
AIの発展により、以前より短い時間・低い費用で、採用HPを作れるようになった
採用サイトはこれまで、制作会社に頼むと一定の費用と期間がかかることは当たり前でした。しかし、いまはAI(特に、Claude Codeと呼ばれるAIサービス)を使って、自院の公式サイトの見た目や文章の雰囲気を引き継いだ採用ページを、短い時間で作れるようになりました。
これまで採用サイトを持つには、費用が数十万円かかる、公開まで時間がかかる、作ったあとに更新が止まりスタッフの声や募集状況が古いままになる、制作会社のひな型に流し込むためどの施設も似たページになる、という問題がありました。
AIを使うと、公式サイトの色・文字・写真・文章の雰囲気を読み取って、同じ雰囲気の採用ページを作れます。働く環境や価値観、スタッフの声を集めたものを、そのままAIに渡すと、採用ページの文章として適切な形にまとめ、掲載をしてくれます。「1日の流れをもっと具体的に」「給与の考え方を足して」といった指示で、その場で直せるため、制作会社とのやり取りを何度も繰り返す必要がありません。
こうした使い方は特別なものではありません。エンジニアでない担当者が、AI(Claude Code)で採用の実務ツールを自分で作る例は、すでに増えています(例:採用管理システム(ATS)をClaude Codeで自作してみた)。採用サイトも、その一つです。
ただし、速く安く作れても、応募が増えるかどうかは、ここまで説明した中身で決まります。AIは作る時間と費用を減らしますが、何を書くかは人が決めます。まずは何を書くべきかを人間が理解することが重要です。
まとめ
採用サイトは、求人媒体を見た候補者が、応募する前に施設を確かめる場所です。応募を左右するのは、求人票に載らないこと——施設の考え、働く環境、スタッフの本音、給与の考え方——を、あいまいな言葉ではなく具体的な場面で書けているかどうかです。候補者が重視するのは、給与・労働環境・人間関係の3つで、設備や規模を大きく書いても効きません。
そして採用サイトは、求人媒体や求人広告からの流れとあわせて使うと効果が出ます。媒体の運用やスカウトの外部委託は【許可番号つき】医療・介護の採用代行(RPO)11社比較|職種別の選び方【2026年版】を、職種ごとの採用は看護師の採用代行(RPO)比較もあわせてご覧ください。
著者について
宮前 貴史(株式会社プロリク )
大学卒業後、個人事業主として約5年半にわたり、BtoC・BtoB領域で営業から企画・運営までを一気通貫で経験。その後、ベンチャー企業にて採用担当として制度設計に従事し、さらにRPOサービスの立ち上げ責任者として、スカウト業務の仕組み化から実践までを牽引。プロリク参画後は、その豊富な実務経験を活かし、ITエンジニアのスカウト業務を中心に複数クライアントの採用成功を支援している
よくある質問(FAQ)
Q: 採用サイトには何を書けばいいですか?
給与や休日の再掲ではなく、求人票に載らないことを書きます。施設の考え、1日の流れ、スタッフの本音、給与の考え方を、あいまいな言葉ではなく具体的な場面で書きます。候補者が重視するのは、給与・労働環境・人間関係の3つです。
Q: 求人票と同じことを書いてはいけないのですか?
給与や休日、夜勤の有無は候補者が求人票で既に見ているため、同じことを書いても意味がありません。その条件が生活にどう関わるか、なぜその制度があるか、という考え方を書くと違いが出ます。
Q: 設備の新しさや施設の規模は書かなくていいのですか?
大きく書く必要はありません。医療事務・医療サポート職2,492人への独自調査でも、設備が最新か(4.1%)や施設の規模(4.0%)は、転職先を選ぶ基準として下位でした。候補者が見ているのは、給与・労働環境・人間関係です。
Q: 小さなクリニックでも採用サイトは作れますか?
作れます。少人数だからこそ、院長との距離の近さや日勤中心の働きやすさなど、大きな病院にはない点を書けます。ページ数は多くなくてよく、伝えるべきことが具体的に書かれているかが大切です。
Q: 採用サイトを作れば応募は増えますか?
採用サイトだけでは増えません。求人媒体や求人広告で候補者に見つけてもらい、そこから採用サイトに来てもらう流れをつくって、はじめて効果が出ます。
Q: スタッフの声はどう集めればいいですか?
「やりがいはありますか」と聞くと、あいまいな答えしか返りません。「印象に残っている出来事」「この施設を選んだ理由」を聞くと、候補者に伝わる具体的な話が集まります。
Q: 採用サイトはAIで作れるのですか?
作れます。公式サイトの見た目や文章の雰囲気を引き継いだ採用ページを、聞き取りの内容から短い時間で作り、その場で直せます。これまで数十万円・数週間かかっていた作業が、大きく短くなります。ただし応募が増えるかどうかは中身で決まります。
Q: 自分で作るのと、制作会社に頼むのはどちらがいいですか?
AIを使えば自分で作る手間は大きく減りました。院内に更新できる人がいれば自作でも進められます。制作会社に頼む場合は、ひな型に流し込むだけでなく、施設への聞き取りから働く環境や価値観を言葉にしてくれるかを確認してください。費用の考え方はRPO(採用代行)とは?費用相場・メリット・選び方も参考になります。