正規雇用看護職員の離職率は11.0%(2024年度)、定着率でいえば約89%です。1割前後の看護師が毎年入れ替わっている計算になります。その理由として繰り返し挙がるのが、夜勤を含む労働時間の負担です。
採用してもすぐ辞められれば、同じ費用と手間で採り直すことになります。看護師がなぜ、どの年代で職場を変えるのかは看護師はなぜ転職するのか|年代別の理由と離職の実態に迫る【2026年版】で扱っています。本記事では、看護師の離職率・定着率の最新データをもとに、離職がどこで起きているのか、そして定着率を上げるために何から手を打てばよいのかを、病院・クリニックの雇用側の視点で整理します。
💡この記事の要点(TL;DR)
- 看護師の定着率とは: 採用した看護職員がどれだけ辞めずに在籍し続けるかの割合。裏返しが離職率で、正規雇用看護職員の離職率は11.0%(2024年度)。定着率でいえば約89%。
- 辞めやすいのは中途と小規模病院: 既卒(中途)採用者の離職率16.1%は新卒8.4%の約2倍。さらに99床以下の病院では既卒採用者の離職率が21.8%(2023年度)に達し、500床以上(11.8%)のほぼ2倍。
- 離職の主因は採用ではなく運用: 賃金・休暇の取りやすさ・人間関係・夜勤・ハラスメントといった、勤務設計と現場の環境。定着率を上げる打ち手は、優先順位をつけて運用から変えるのが近道。
看護師の離職率・定着率は今どのくらいか
正規雇用看護職員の離職率は11.0%(2024年度)で、定着率でいえば約89%です。 全体の数字は近年やや改善していますが、新卒で採るか中途で採るかと、病院の規模で見ると、離職の起きやすさが大きく変わります。
日本看護協会の「2025年 病院看護実態調査」(2024年度のデータ)によると、看護職員の離職率は次のとおりです。
区分 | 離職率(2024年度) | 前年度比 |
正規雇用看護職員(全体) | 11.0% | 0.3ポイント減 |
新卒採用者 | 8.4% | 0.4ポイント減 |
既卒採用者(中途) | 16.1% | 変化なし |
注目すべきは、既卒採用者(中途入職)の離職率16.1%が、新卒採用者8.4%の約2倍という点です。中途で採用した看護師のほうが、早期に辞めやすい傾向がはっきり出ています。離職率は3年で見ると、正規雇用が11.8%(2022年度)→11.3%(2023年度)→11.0%(2024年度)と改善しています。ただし既卒採用者は16%台で高止まりしており、中途採用の定着は依然として弱いままです。
病床規模が小さいほど、離職率は高い
看護師の離職率は、病院の規模で明確に変わります。小規模病院ほど高く、大規模病院ほど低い傾向です。 日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」(2023年度のデータ)の病床規模別離職率は次のとおりです。
病床規模 | 正規雇用看護職員 | 新卒採用者 | 既卒採用者 |
全体 | 11.3% | 8.8% | 16.1% |
99床以下 | 12.6% | 12.1% | 21.8% |
100〜199床 | 12.6% | 12.1% | 17.6% |
200〜299床 | 12.2% | 9.4% | 15.6% |
300〜399床 | 11.5% | 8.8% | 14.5% |
400〜499床 | 10.4% | 8.2% | 11.5% |
500床以上 | 10.4% | 8.0% | 11.8% |
とくに既卒採用者は、99床以下の病院で21.8%と、500床以上(11.8%)のほぼ2倍に達します。夜勤の代替要員や教育にあてる余力が少ない小規模病院ほど、採用した中途の看護師が辞めやすい状況にあります。地域差もあり、東京都の離職率は正規雇用で14.2%(2023年度)と全国平均を上回ります。全国平均だけで施策を考えると、自院の実態に合わない一律の対策になりやすいため、規模や地域に合わせて対策を選びます。
なぜ看護師は離職するのか
看護師が辞める主な理由は、採用の巧拙ではなく、勤務設計と職場環境にあります。 日本看護協会「2025年看護職員実態調査」で、働き続けるうえで重視する項目の上位は、業務や責任に見合った賃金(53.6%)・休みの取りやすさ(49.6%)・職場の人間関係の良さ(48.5%)でした。
- 賃金・待遇:業務や責任に見合った賃金が、継続就業で重視する項目の上位。
- 休暇・勤務:休みの取りやすさ、残業の少なさ。正規雇用看護職員の月平均超過勤務は5.1時間ですが、部署による差が大きい数字です。看護は24時間体制のため、夜勤の回数や間隔が働き続けやすさを大きく左右します(夜勤は月平均で二交代制4.8回、三交代制7.4回)。夜勤を担いやすくする条件としては、納得感のある夜勤手当(41.4%)、夜勤明け翌日を必ず休日にすること(39.7%)、夜勤中の十分な休憩・仮眠(35.6%)が上位に挙がります。
- 人間関係・ハラスメント:職場の人間関係の良さも重視される一方、この1年間に暴力・暴言・ハラスメントを受けた看護職は49.3%にのぼります(2025年看護職員実態調査)。加害者は患者・利用者が最も多く、次いで上司、医師の順です。相談しても対応に満足できなかった人が59.1%にのぼり、「相談しても改善しない」という経験が組織への不信を生み、離職につながります。
- ライフイベントとの両立:結婚・出産・育児・介護。短時間勤務や復職しやすい制度の有無が、離職か継続かを分けます。
- メンタルヘルス:業務負担の蓄積によるバーンアウト(燃え尽き)。これは離職の問題であると同時に、医療の安全と質にも関わります。
自院で起きているのがどの理由なのかを切り分けることが先決です。退職者への面談や、在籍者への匿名アンケートで、辞めたくなる要因を先に把握することが肝要です。
看護師の定着率を上げる方法
定着率を上げるには、採用を強化する前に、離職を生んでいる運用を止めることが近道です。 やることには短期・中期・長期があり、短期の運用変更から着手すると効果が早く出ます。
短期(最初の6〜12か月で着手する)
- 夜勤・残業・休日のルール化:夜勤明け翌日を原則休日にする、強制的な時間外労働を減らす、休憩・仮眠を確実に取れるようにする。夜勤の負担は、賃金への不満より先に離職を招きやすいためです。
- 管理職の関わり方を変える:看護師長・主任層の研修、定期的な1対1の面談、部署ごとの離職状況の把握。同じ制度でも、管理職の関わり方で定着の効果が変わります。
- ハラスメントへの即応体制:相談窓口の一本化と、相談後の対応・再発防止まで。窓口を置くだけでは足りません。
- 新人・中途の初期定着支援:入職から90日・180日・360日での面談。中途は「経験があるから大丈夫」と任せきりにせず、自院のやり方に慣れるまで支援を続けます。中途こそフォローが薄くなりがちで、それが既卒の高い離職率につながっています。
中期(1〜3年)
- 柔軟な正規雇用制度:短時間勤務正職員(導入している病院は31.9%)や、夜勤の回数上限・免除など。非正規雇用に切り替えて対応するのではなく、正規のまま働き方を選べるようにすると、育児・介護・治療を抱える中堅層の離職を防げます。短時間勤務正職員を導入した病院では、生活事情による退職者が減った(37.5%)、ワーク・ライフ・バランスを確保しやすくなった(55.6%)という効果が報告されています。
- 昇進・評価の基準を示す:評価基準を明文化し、面談で今後の道筋を共有する。
長期(3年以降)
- 配置と業務の再設計:患者の重症度に応じた配置、看護補助者の活用、記録業務の簡素化、ICT・AIの活用。単年度の離職率改善を持続させるには、仕組みそのものの見直しが要ります。
夜勤者を確保する策としては夜勤専従の導入が最も広く行われており(41.1%)、確保策を実施した病院の29.5%が夜勤者の確保状況が改善したと回答しています。うまくいっている病院は、単発の施策ではなく、制度・運用・管理職の関わりを組み合わせています。逆に、つらい職場に個人の対処力で適応させようとする研修偏重の対応や、規模差を無視した一律施策は、効果が出にくいやり方です。
病院の規模別に、進め方を変える
病床規模で離職率が一貫して違う以上、対策の順番も規模に合わせて変えます。
- 小規模病院(99床以下):既卒採用者の離職率が21.8%と最も高い。夜勤・希望休・短時間正職員といった働き方の柔軟化と、中途採用者の定着支援を優先します。
- 中規模病院(100〜299床):中途採用の定着と、管理職の関わり方の改善を優先します。
- 大規模病院(300床以上):離職率は相対的に低いものの、バーンアウトや希望しない異動、キャリアの停滞が課題になりやすく、そこへの対策を優先します。
中途採用の定着と、採用のしかた
定着率を上げる取り組みは、入職後の施策だけでは足りません。誰を、どう採用するかも、その後の定着を左右します。 既卒採用者の離職率が新卒の約2倍という事実は、入職後の問題であると同時に、採用時点で「聞いていた職場と違った」というミスマッチが起きていることの表れでもあるからです。日本看護協会「2025年病院看護実態調査」では、就業1年未満の看護師の48.8%が前の職場からの転職者で、看護師の採用市場で動いているのは経験者です(看護師はなぜ転職するのか|年代別の理由と離職の実態に迫る【2026年版】)。
募集・選考の段階でできることは2つあります。
- 実態を正確に伝える:募集や面接の段階で、診療科・夜勤回数・オンコールの有無・教育体制・残業の実態を具体的に伝え、入職前に認識をそろえる。求人を良く見せることより、実態を正確に伝えることが、結果的に定着につながります。
- 母集団の質を上げる:求人を出して待つだけでなく、条件の合う候補者を探して直接声をかける(スカウト)と、自院に合う人に出会いやすくなります。
こうした採用実務を自院だけで回すのが難しい場合、採用業務を外部に委託する採用代行(RPO)という方法があります。RPOの全体像は【2026年版】RPO(採用代行)とは?費用相場・メリット・選び方を、医療・看護の採用代行を比較したい場合は【許可番号つき】医療・介護の採用代行(RPO)11社比較|職種別の選び方【2026年版】をご覧ください。
まとめ
看護師の定着率は、募集の段階から入職後の運用までを一貫して見直すことで上がります。正規雇用看護職員の離職率11.0%(2024年度)という全体の数字の裏で、既卒採用者は16.1%と新卒の約2倍、さらに99床以下の病院では既卒21.8%(2023年度)が離職しています。
定着率を上げる近道は、採用を強化する前に、離職を生んでいる運用を止めることです。短期では夜勤・残業・休日のルール化、管理職の関わり方の改善、ハラスメントへの即応、初期定着支援から着手し、規模に応じて優先順位を変えてください。あわせて、誰をどう採用するかという募集・選考のしかたも、中途の定着を左右します。採用と定着を切り離さず、ひと続きの取り組みとして設計することが、看護師の定着率を上げる基本です。募集やスカウトの運用を外部に委託する場合は、【許可番号つき】看護師の採用代行(RPO)8社比較|病棟・クリニック・訪問看護別の選び方【2026年版】で会社ごとの対応範囲と許可番号を確認できます。
著者について
宮前 貴史(株式会社プロリク )
大学卒業後、個人事業主として約5年半にわたり、BtoC・BtoB領域で営業から企画・運営までを一気通貫で経験。その後、ベンチャー企業にて採用担当として制度設計に従事し、さらにRPOサービスの立ち上げ責任者として、スカウト業務の仕組み化から実践までを牽引。プロリク参画後は、その豊富な実務経験を活かし、ITエンジニアのスカウト業務を中心に複数クライアントの採用成功を支援している
よくある質問(FAQ)
Q: 看護師の定着率(離職率)の平均はどのくらいですか?
正規雇用看護職員の離職率は11.0%(2024年度、日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」)で、定着率でいえば約89%です。新卒採用者は8.4%、既卒採用者は16.1%と、新卒で採るか中途で採るかによって差があります。
Q: 新卒と中途では、どちらが辞めやすいですか?
既卒(中途)採用者のほうが辞めやすい傾向があります。既卒採用者の離職率16.1%は、新卒採用者8.4%の約2倍です。採用時のミスマッチが中途で起きやすいことが背景にあると考えられます。
Q: 小さな病院ほど看護師が辞めやすいのですか?
病床規模別に見ると、小規模病院ほど離職率が高くなります。99床以下の病院では既卒採用者の離職率が21.8%(2023年度)と、500床以上(11.8%)のほぼ2倍です。夜勤の代替要員や教育の余力が少ないことが一因と考えられます。
Q: 看護師の離職を防ぐには、何から始めればよいですか?
まず自院の離職理由を把握することからです。退職者面談や在籍者への匿名アンケートで、辞めたくなる要因を洗い出します。そのうえで、夜勤・残業・休日のルール化、管理職の関わり方の改善、ハラスメントへの即応、初期定着支援といった、短期で着手できる運用の見直しから始めるのが効果的です。
Q: 給与を上げれば、看護師の定着率は上がりますか?
賃金は継続就業で重視される項目の上位ですが、賃上げだけでは十分ではありません。夜勤明けに休めない、希望しない異動が続く、ハラスメント相談が機能しない、といった職場では、給与を上げても定着しにくい傾向があります。勤務設計や現場の環境の改善とあわせて考えてください。
Q: 中途採用の看護師が早期に辞めてしまいます。どうすればよいですか?
「経験があるから大丈夫」と任せきりにせず、自院のやり方に慣れるまでの受け入れ体制を用意してください。中途はフォローが薄くなりがちで、それが既卒の高い離職率につながります。あわせて、採用時に夜勤回数や教育体制の実態を伝え、入職前に認識をそろえることが有効です。
Q: 採用のやり方は、定着率に影響しますか?
影響します。既卒採用者の離職率が高いのは、採用時に業務内容や勤務条件の認識がそろっていないことが一因です。募集や面接の段階で実態を正確に伝え、条件の合う候補者に直接声をかけることが、入職後の定着につながります。
Q: 定着率を上げると、採用コストの削減につながりますか?
つながります。早期離職が減れば、採り直しにかかる募集費・人材紹介手数料・教育コストを抑えられます。看護師採用は費用が大きいため、定着率の改善は採用予算の効率化に直結します。