病院を辞めた薬剤師の63.7%は、20代と30代です。一方、薬局を辞めた薬剤師で20代は11.4%にとどまり、最も多いのが30代の30.3%、次いで40代の23.4%でした(厚生労働省委託「薬剤師確保のための調査・検討事業」2022年調査、2018年4月〜2021年3月の3年間の退職者、病院1,170施設・薬局449施設)。同じ薬剤師でも、辞めていく人の年齢が病院と薬局で違います。どういった層の薬剤師に定着してほしいかによって、その効く施策も違ってくるということになります。
薬剤師の採用は、採用して終わりではありません。採用そのものを外部に委託する選択肢は【許可番号つき】医療・介護の採用代行(RPO)11社比較|職種別の選び方【2026年版】で扱っています。せっかく採用しても早期に離職すれば、また同じ費用と手間で採り直すことになります。本記事では、厚生労働省の一次資料をもとに、薬剤師の離職がどの場面で起きるのか、そして定着率を上げるために何から手を打てばよいのかを、病院・薬局の雇用側の視点で整理します。
💡この記事の要点(TL;DR)
- 病院薬剤師の離職率は、低い: 厚生労働科学研究の調査(回答1,394施設)では、離職率が5%未満の病院が46%、10%未満が66%を占めます。看護師(正規雇用11.0%)と比べても低い水準です。定着率でいえば、9割以上を保っている病院が3分の2あることになります。
- 辞めていく人の年齢は、病院と薬局でまるで違う: 病院を辞めた薬剤師は20代32.9%・30代30.8%で、合わせて63.7%が30代以下です。薬局では20代が11.4%にとどまり、30代30.3%・40代23.4%が中心になります。
- 退職理由の最多は「一身上の都合」で、給与ではない: 施設が把握している退職理由で「給与水準の不一致」は病院3.4%・薬局4.9%にすぎません。最も多いのは病院35.5%・薬局27.8%の「一身上の都合」で、つまり施設側が本当の理由を掴めていないということです。定着率を上げる出発点は、この空白を埋めることにあります。
薬剤師の離職率は、どこまで分かっているか
薬剤師には、看護師のような「毎年更新される全国平均の離職率」はありません。ただし、病院薬剤師の離職率は施設ごとの分布として調査されており、水準は分かります。 厚生労働科学研究「病院における薬剤師の働き方の実態を踏まえた生産性の向上と薬剤師業務のあり方に関する研究」(研究代表者:武田泰生・鹿児島大学附属病院、令和元年度総括研究報告書)が、薬剤部長・薬局長に離職率を尋ね、1,394施設から回答を得ています。
離職率 | 該当する病院の割合 |
5%未満 | 46% |
10%未満(5%未満を含む) | 66% |
30%以上 | 約10% |
この調査の離職率は、計算式まで定義されています。2017年1月1日から2019年12月31日までの3年間の常勤薬剤師の離職者数を3で割り、2020年1月1日時点の常勤薬剤師の在籍者数で割った値です。つまり1年あたりの離職率にそろえてあります。
比較の材料として、日本看護協会の調査では正規雇用看護職員の離職率が11.0%(2024年度)です。調査の主体も年も対象も違うため厳密な優劣は言えませんが、病院薬剤師の3分の2が10%未満に収まっているという事実は、「病院薬剤師はどんどん辞めていく」という印象とは違う姿を示しています。
一方で、次の2点は現在も分かりません。数字を作らずに、分からないものは分からないと書きます。
- 薬局薬剤師の離職率。上記調査は病院を対象としたもので、薬局を横断した離職率の調査は確認できていません。
- 薬剤師全体を代表する単一の全国値。看護協会が毎年出しているような、業態をまたぐ1つの数字はありません。
そのため本記事では、離職率の水準は上記の分布で押さえたうえで、離職が「どこで・なぜ」起きるのかを軸に整理します。
数字がない代わりに、確かなことが2つあります。1つは、新しく資格を取る人が減っていること。厚生労働省の薬剤師国家試験の受験者数は、第108回(2023年)の1万3,915人から第111回(2026年)の1万2,774人へと減っています。もう1つは、病院薬剤師の不足が政策上の課題として明確に認定されていることです。第8次医療計画に向けた検討で、病院薬剤師の不足は「喫緊の課題」とされ、離職は①業務が回らなくなる、②患者サービスの質が下がる、③医療安全が低下する、という形で施設に影響すると整理されています。
薬剤師の離職が起きやすい3つのタイミング
薬剤師の離職は、勤続のどの時点でも均等に起きるわけではありません。厚生労働省の委託調査は、退職を検討しやすい時期を3つの節目に整理しています。
- 入職3年目前後の若手:一通りの業務を覚えたころに、「昇給が思ったより遅い」「業務内容が入職前のイメージと違う」と感じて動きます。就職前に得ていた情報が少なかった薬剤師ほど、この時期の離職が起きやすくなります。
- 30〜40代の中堅:業務の中心を担う一方で、キャリアの頭打ちや、管理職・専門領域への道筋が見えないことに不安を感じます。年収カーブが寝てくる時期とも重なります。
- 結婚・出産・子育てなどライフスタイルが変わる時期:勤務時間・通勤・夜勤や当直との両立が難しくなり、勤務条件の合う就業先へ移ります。薬剤師は女性が62.0%を占めるため、この節目の影響が大きく出ます。
この3つのうち、どれが効いているかは病院と薬局で違います。 同じ調査(2018年4月〜2021年3月の3年間の退職者)で、退職した薬剤師の年代を見ると次のようになります。
年代 | 病院(1,170施設) | 薬局(449施設) |
20代 | 32.9% | 11.4% |
30代 | 30.8% | 30.3% |
40代 | 10.5% | 23.4% |
50代 | 8.4% | 15.4% |
60代 | 14.0% | 13.8% |
70代以上 | 1.3% | 4.9% |
無回答 | 2.1% | 0.9% |
病院は20代と30代で63.7%を占めます。上の1番目と3番目の節目が重なる年代です。報告書自身も、大学卒業後にまず病院に就職し、その後薬局などへ移るキャリアを志向する薬剤師が一定数いるのではないか、と分析しています。
一方で、薬局は分布が違います。20代は11.4%と少なく、30代と40代で53.7%になります。2番目の節目、つまり中堅の頭打ち感が中心にあり、加えて後述する雇用形態の事情が関係してきます。
新卒で採用した人と、中途で採用した人でも話がやや違います。病院で退職した薬剤師を採用区分で分けると、新卒採用(646人)では「個人的理由(結婚)」が21.4%と2番目に多いのに対し、新卒採用以外(515人)では4.9%にとどまり、代わりに「契約期間の満了」が11.7%で2番目に来ます。
つまり、若手の定着に手を打つべきなのは主に病院、中堅の頭打ちに手を打つべきなのは主に薬局、ということになります。3つの節目に一律の施策を並べるより、自院・自店で実際に抜けている年代に絞るほうが効きます。
なぜ薬剤師は離職するのか
施設が把握している退職理由で最も多いのは「一身上の都合」です。給与を理由に挙げた施設は、病院で3.4%、薬局で4.9%にとどまります。 給与が薬剤師の離職の主因だとよく言われますが、雇用側が掴んでいる実際の退職理由は、そうなっていません。
退職理由 | 病院(1,170施設) | 薬局(449施設) |
一身上の都合 | 35.5% | 27.8% |
個人的理由(結婚) | 13.9% | 4.7% |
契約期間の満了 | 9.1% | 21.2% |
病気等の体調不良 | 5.0% | 7.8% |
個人的理由(出産・育児) | 5.0% | 4.0% |
働く場所(勤務地)の不一致 | 4.7% | 7.1% |
職場の人間関係 | 4.4% | 8.0% |
働き方(勤務日数や勤務時間等)の不一致 | 3.8% | 7.1% |
給与水準の不一致 | 3.4% | 4.9% |
職場環境への不満 | 3.2% | 4.7% |
個人的理由(介護・看護) | 2.3% | 4.7% |
スキルアップに関する環境への不満 | 1.9% | 1.8% |
評価・キャリアパスに関する制度への不満 | 0.9% | 1.8% |
(厚生労働省委託「薬剤師確保のための調査・検討事業」2022年調査。2018年4月〜2021年3月の3年間の退職者について、施設が回答)
この表から読み取れることが3つあります。
1つ目。「一身上の都合」が最多だということは、施設が本当の理由を掴めていないということです。 病院で35.5%、薬局で27.8%。ここに「理由は不明」(病院4.1%・薬局3.6%)を足すと、病院で約4割、薬局で約3割の退職について、雇用側は理由を持っていません。給与が3.4%だから給与は問題ではない、とは言えません。給与への不満を持った人が「一身上の都合」と言って辞めている可能性は残ります。定着率を上げる取り組みが、まずここから始まる理由です。
2つ目。病院では結婚が13.9%と、一身上の都合に次いで多いことです。 薬局では4.7%です。男女別に見るとさらにはっきりします。病院を退職した女性(718人)では「個人的理由(結婚)」が20.1%で、「一身上の都合」34.8%に次ぐ2番目。20代(385人)に限れば27.8%です。報告書は、結婚や結婚後の出産・育児をしても働き続けられる職場にすることが、病院の薬剤師の定着・確保につながる、と結論づけています。
3つ目。薬局では「契約期間の満了」が21.2%を占めることです。 病院の9.1%と大きく違います。薬局は病院より任期付きの勤務形態が多く、それが退職の数字に出ています。これは職場への不満による離職とは性質が違うため、薬局が自店の離職を数えるときは、契約満了と自発的な退職を分けて見る必要があります。
なお、記事や資料でよく引かれる「給与水準が最多」という数字は、薬学生が卒業後すぐに病院へ就職することを希望しない理由の順位です(給与水準が最多、次いで業務内容・やりがい、夜勤の有無やその条件)。就職先を選ぶときの判断基準と、実際に辞めるときの理由は、別のものとして扱ってください。
在職中の薬剤師がどれくらい動く気でいるかも、同じ調査で分かっています。転職を希望・検討している人は、病院薬剤師で33.9%(1年以内5.6%+数年以内28.3%、n=2,320)、薬局薬剤師で23.1%(1年以内5.3%+数年以内17.8%、n=1,569)でした。病院のほうが10.8ポイント高くなっています。さらに、1年以内の転職を希望する病院薬剤師のうち、病院・診療所への転職を希望する人は41.5%にとどまります。つまり半数以上が病院以外へ出ようとしています。薬局では75.9%が薬局への転職を希望しており、業界内にとどまります。病院を辞める薬剤師は、業界から出ていくのではなく、薬局へ移っていきます。 薬剤師が病院・薬局・ドラッグストアのあいだでどう動いているのかは、薬剤師はなぜ転職するのか|病院・薬局の違いと年代別の理由【2026年版】で扱っています。
もう1つ、入職前の情報が離職に影響します。厚生労働省の薬剤師本人調査(n=11,699)では、就職前に「昇給ペース」「業務内容」を知らなかった薬剤師ほど、就職後に転職を考える割合が高い傾向が示されています。離職防止が入職後の施策だけの問題ではなく、入職前の情報提供の問題でもあることを意味します。
自院・自店で起きているのがどれなのかを切り分けることが先決です。退職者への面談や、在籍者への匿名アンケートなどに取り組む企業も存在します。辞めたくなる要因を把握できればより対策をしやすくなるため、定着が喫緊の課題である場合はそういったアンケートは有用なものだと考えられます。
病院薬剤師は、離職率は低いが採用しにくい
病院薬剤師は、前述のとおり離職率が10%未満の病院は66%です。それでも病院薬剤師の不足は第8次医療計画で「喫緊の課題」とされています。定着の議論を採用の議論と切り離せない理由が、ここにあります。
薬剤師全体は薬局に約6割が偏り、病院で働くのは5万7,595人にとどまります(厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計」2024年)。働いている薬剤師そのものが薬局に偏っているうえ、病院を志望する薬剤師は高度急性期・急性期の基幹病院を選びやすく(内定者の約8割)、中小規模の病院ほど採用しにくくなります。
離職率は、病院の機能によっても違います。同じ厚生労働科学研究では、離職率が高い順に、特定機能病院(高度な医療を提供する病院として厚生労働大臣が承認した病院。大学病院本院など)、DPC対象病院(入院医療費を診断群分類ごとの定額で計算する病院。主に急性期)、DPC非対象の一般病院、DPC非対象のケアミックス型病院、療養型病院、精神科病院、と並びます。地域別では、東京・大阪など都市圏で高く、岩手・富山・鳥取など地方で低い傾向が示されています。
ただし、離職率が低いことは、その職場が働きやすいことを意味するとは限りません。 同報告書は、療養型病院や精神科病院は病床数あたりの薬剤師数も少なく、後任の補充がなされないと辞めにくい、という可能性を指摘しています。人が少ないから辞められない、という状態でも離職率は下がります。逆に、離職率が高い特定機能病院やDPC対象病院のほうが、院内保育所や時短勤務・時間外勤務免除といった支援策は整っていました。それでも離職率が高いのは、病棟業務の拡大や外来でのチーム医療への参画など、業務量の増大と業務内容の高度化に支援が追いついていないためだ、と報告書は分析しています。自院の離職率が低いとき、それが定着の成果なのか、辞められない状態なのかは、分けて考える必要があります。
地域差も無視できません。厚生労働省の「病院薬剤師偏在指標」では、大阪府1.06・兵庫県1.10に対し、奈良県0.90・和歌山県0.85・島根県0.86・愛媛県0.86など、指標が1を下回る(相対的に不足している)県が複数あります。全国総数では将来的に余剰方向が見込まれる一方で、病院・地方では不足が続くという、総数だけでは説明できない食い違いがあります。
このため、病院薬剤師の定着では、辞めた1人を採り直すコストと難易度が薬局より高くなります。1人辞めると業務が回らなくなり、残った薬剤師の負担が増えて、さらに離職が起きます。離職率そのものは低くても、1件の離職が持つ重さが違います。
薬剤師の定着率を上げる方法(優先順位つき)
定着率を上げるには、採用を強化する前に、離職を生んでいる運用と情報の出し方を見直すことが近道です。 やることには短期・中期・長期があり、短期の運用変更と入職前の情報提供から着手すると効果が早く出ます。
短期(最初の6〜12か月で着手する)
- 退職理由を自分たちで把握する:前述のとおり、施設が把握している退職理由の最多は「一身上の都合」で、病院35.5%・薬局27.8%を占めます。退職者面談を仕組みとして置き、在籍者にも匿名でアンケートを取ってください。ここが埋まらないまま施策を並べても、効いているかどうかが分かりません。
- 入職前の情報提供をそろえる:昇給ペース、業務内容、夜勤・当直の頻度、勤務地の決まり方を、求人・面接の段階で具体的に伝える。就職前に実態を知らなかった薬剤師ほど早期に辞めやすいという調査結果があり、募集・面接の段階での情報提供は、最も費用対効果の高い離職防止策です。
- 勤務条件のルール化:当直明けの扱い、休憩・休日の確保、一人体制の時間拘束の見直し。負担の偏りは、給与への不満より先に離職を招きやすいためです。
- 若手・中途の初期定着支援:入職から3か月・6か月・1年での面談。病院では退職者の32.9%が20代で、新卒採用者の退職理由の21.4%が結婚です。入職3年目前後の節目の手前で面談を入れると効果があります。中途は「経験があるから大丈夫」と任せきりにせず、自店・自院のやり方に慣れるまで支援します。
中期(1〜3年)
- 結婚・出産後も働き続けられる条件を用意する:病院を退職した女性の20.1%、20代に限れば27.8%が結婚を理由に挙げています。報告書も、結婚後も働き続けられる職場にすることが病院の定着・確保につながると結論づけています。産休・育休に対する代替職員の制度は、全体では35%の病院にしかありません。制度の有無そのものが差になります。
- 資格取得・研修の支援:認定薬剤師・専門薬剤師などの資格取得支援や、学会・研修への参加機会。厚生労働省の委託報告書でも、育成機会と資格取得支援が定着施策として挙げられています。「ここで働けば専門性が伸びる」という見通しが、中堅の離職を防ぎます。
- キャリアパスの明示と配置転換:管理薬剤師・在宅・病棟・専門領域といった進む先を明文化し、面談で共有する。薬局では退職者の53.7%が30〜40代で、頭打ち感を持ちやすい年代です。配置転換で新しい役割を用意することが有効です。
長期(3年以降)
- 業務の再設計:対物業務(調剤・監査)の効率化と、対人業務(服薬指導・在宅・チーム医療)への配分見直し。ICT(情報通信技術)・AIの活用で定型業務の負担を下げ、やりがいのある業務に時間を割けるようにする。支援制度が整っている急性期病院で離職率がむしろ高いという調査結果は、制度を足すだけでは業務量の増大を埋めきれないことを示しています。仕組みそのものの見直しが要ります。
うまくいっている職場は、単発の施策ではなく、入職前の情報提供・勤務条件・資格支援・キャリアパスを組み合わせています。逆に、つらい勤務条件を個人の頑張りで埋めさせようとする対応や、就業先(病院・薬局・ドラッグストア)の違いを無視した一律の施策は、効果が出にくい例です。
採用のしかたと定着は、つながっている
定着率を上げる取り組みは、入職後の施策だけでは足りません。誰を、どう採用するかも、その後の定着を左右します。 就職前に業務内容や昇給ペースを知らなかった薬剤師ほど早期に転職を考えるという調査結果は、入職後の問題であると同時に、採用時点で「聞いていた職場と違った」というミスマッチが起きていることの表れでもあるからです。
採用の段階でできることは2つあります。
- 実態を正確に伝える:募集や面接の段階で、昇給モデル・業務内容・当直や夜勤の頻度・勤務地の決まり方を具体的に伝え、入職前に認識をそろえる。求人を良く見せることより、実態を正確に伝えることが、結果的に定着につながります。薬学生の採用では、6年生の求人シーズンを待たず、5年生の段階で情報を届けることが重要です。
- 母集団の質を上げる:求人を出して待つだけでなく、条件の合う候補者を探して直接声をかける(スカウト)と、自院・自店に合う人に出会いやすくなります。病院薬剤師の33.9%が転職を検討しており、そのうち1年以内の希望者の半数以上は病院以外を見ています。動く意思のある人はいます。届け方の問題です。
こうした採用実務を自院・自店だけで回すのが難しい場合、採用業務を外部に委託する採用代行(RPO)という方法があります。RPOの全体像は【2026年版】RPO(採用代行)とは?費用相場・メリット・選び方をご参考ください。
また、薬剤師の採用が得意な会社の比較をしたい場合は、薬剤師の採用代行(RPO)7社比較|病院・調剤薬局・ドラッグストア別の選び方をご覧ください。
また、最近では生成AIを使って、劇的に効率を高めた採用代行サービスも出てきています。詳しくは、AI RPO(AI採用代行)とはで解説しています。
まとめ
薬剤師の定着率は、募集の段階から入職後の運用までを一貫して見直すことで上がります。病院薬剤師の離職率は10%未満の施設が66%を占め、水準としては低いほうです。それでも病院薬剤師は不足しています。辞める人が多いからではなく、抜けた枠を埋められないからです。1件の離職が持つ重さが、他の職種より大きいということです。
手を打つ場所は、数字がはっきり示しています。病院は20代・30代で退職者の63.7%、薬局は30代・40代で53.7%。病院では結婚が退職理由の13.9%(女性では20.1%、20代では27.8%)を占め、薬局では契約期間の満了が21.2%を占めます。そして最も多い退職理由は、病院35.5%・薬局27.8%の「一身上の都合」です。この空白を埋めることが、定着率を上げる最初の一歩になります。
定着率を上げる近道は、採用を強化する前に、離職を生んでいる運用と情報の出し方を見直すことです。短期では退職理由の把握、入職前の情報提供と勤務条件のルール化、初期フォローから。中期では結婚・出産後も働き続けられる条件、資格取得支援、キャリアパスの明示へと進めてください。採用と定着を切り離さず、ひと続きの取り組みとして考えることが、薬剤師の定着率を上げる基本です。入職前の情報提供を募集ページでどう作るかは医療・クリニックの採用サイトの作り方|応募が増える書き方と載せる項目【2026年版】を参考にしてください。
薬剤師の採用支援をご要望の方へ
プロリクは、医療・介護職採用のスカウト運用・求人改善・応募者対応を、AIで効率化しながら代行しています。ご関心があれば採用代行サービスをご覧ください。
著者について
宮前 貴史(株式会社プロリク )
大学卒業後、個人事業主として約5年半にわたり、BtoC・BtoB領域で営業から企画・運営までを一気通貫で経験。その後、ベンチャー企業にて就労移行支援事業所の支援員として、利用者の一般就労に向けた支援に携わる一方、採用担当として採用制度の設計にも従事。さらに、RPOサービスの立ち上げ責任者として、スカウト業務の仕組み化から実運用までを牽引した。
株式会社プロリク参画後は、福祉現場での支援経験と、営業・採用・RPO領域で培った実務経験を活かし、採用ターゲットの設計、スカウト文面の作成、候補者選定、運用改善など、複数法人の採用活動を支援している。
よくある質問(FAQ)
Q: 薬剤師の定着率(離職率)の平均はどのくらいですか?
病院薬剤師については、厚生労働科学研究の調査(回答1,394施設、2017年〜2019年の3年間の年平均)で、離職率5%未満の病院が46%、10%未満が66%でした。定着率でいえば9割以上を保っている病院が3分の2あることになります。ただし薬局薬剤師の離職率や、業態をまたぐ薬剤師全体の全国平均は、看護師のような形では調査されていません。
Q: 薬剤師が離職しやすいのは、いつですか?
病院と薬局で違います。病院を退職した薬剤師は20代32.9%・30代30.8%で、63.7%が30代以下です。薬局では20代が11.4%にとどまり、30代30.3%・40代23.4%が中心になります(2018年4月〜2021年3月の3年間、病院1,170施設・薬局449施設)。病院は若手、薬局は中堅に手を打つのが先です。
Q: 薬剤師が離職する主な理由は何ですか?
施設が把握している退職理由の最多は「一身上の都合」で、病院35.5%・薬局27.8%です。次いで病院では「個人的理由(結婚)」13.9%、薬局では「契約期間の満了」21.2%が多くなります。「給与水準の不一致」は病院3.4%・薬局4.9%にとどまります。よく引かれる「給与が最多」は、薬学生が病院就職を希望しない理由の順位であり、実際の退職理由とは別のものです。
Q: 薬剤師の離職を防ぐには、何から始めればよいですか?
まず自院・自店の離職理由を把握することからです。退職理由の最多が「一身上の都合」だということは、雇用側が本当の理由を掴めていないということです。退職者面談や在籍者への匿名アンケートで要因を洗い出します。そのうえで、入職前の情報提供(昇給・業務・当直の実態)をそろえること、勤務条件をルール化すること、入職初期のフォローから着手するのが効果的です。
Q: 病院薬剤師は離職率が低いのに、なぜ不足しているのですか?
辞める人が多いからではなく、抜けた枠を埋められないからです。薬剤師全体が薬局に約6割偏り、病院で働くのは5万7,595人にとどまるうえ、病院薬剤師の偏在指標が1を下回る県が複数あります。病院を志望する薬剤師は基幹病院を選びやすく、中小規模の病院ほど採用が難しくなります。加えて、1年以内の転職を希望する病院薬剤師の半数以上は病院以外への移動を考えており、抜けた人が業界内の別の病院に戻ってくるとは限りません。
Q: 自院の離職率が低ければ、定着はうまくいっていると考えてよいですか?
そうとは限りません。厚生労働科学研究の報告書は、療養型病院や精神科病院について、病床数あたりの薬剤師数が少なく、後任の補充がなされないと辞めにくい可能性を指摘しています。人が少ないために辞められない状態でも、離職率は下がります。離職率とあわせて、1人あたりの業務量や有給休暇の取得状況を見てください。
Q: 給与を上げれば、薬剤師の定着率は上がりますか?
退職理由として「給与水準の不一致」を挙げた施設は病院3.4%・薬局4.9%で、賃上げだけで解決する問題ではありません。ただし最多の「一身上の都合」の中身が分からないため、給与が影響していないとも言い切れません。昇給ペースが見えない、キャリアの先が描けない、勤務条件が合わないといった要素とあわせて、まず自院・自店の実際の理由を確かめてください。
Q: 中途採用の薬剤師が早期に辞めてしまいます。どうすればよいですか?
「経験があるから大丈夫」と任せきりにせず、自店・自院のやり方に慣れるまで教える手順を用意してください。病院で新卒採用以外の退職者を見ると、「契約期間の満了」が11.7%と2番目に多く、契約更新の設計そのものを見直す余地もあります。あわせて、採用時に昇給モデル・業務内容・当直の頻度といった実態を伝え、入職前に認識をそろえることが有効です。